2018年2月14日~16日にかけて東京ビッグサイトにて開催されているナノテクノロジーの展示会「nano tech 2018 第17回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」において、産業技術総合研究所(産総研)のブースでは、水素を活用することで調光を可能としたフィルムの紹介を行っている。

調光ガラスはさまざまなものが研究開発、製品化されているが、電気を通すため、透明電極を設置したり、電極周りの絶縁を行う必要など、周辺回路の取り回しが必要なため、コストが高くなることが問題となっている。

日東電工と産総研が共同研究にとって開発した同調光フィルムは、いわゆるガスクロミック方式のスイッチングを行うことで、可視光透過率~8%(鏡状態)から~50%(透明状態)の間で切り替えを可能としたもの。フィルムをガラスに貼り付けるだけで、調光が可能で、スイッチングの材料としてはごく少量の水素を用いる。スイッチング時間はロール・ツー・ロールで製造された幅30cmの調光フィルムで秒単位となっているほか、その繰り返し耐性は1万5000回以上だという。

フィルムは蒸着法を用いて、イットリウム-マグネシウム系水素吸蔵合金を蒸着することで製造されており、従来の調光ガラスに比べ、10分の1程度のコストで製造できる点が特徴だという(別途、水素供給システムのコストは発生するそうだ)。

現在、研究チームでは、日東電工との共同研究のように調光ミラーシートの製品化・商品化のための技術や、メートルクラスの大型調光ミラーシートをスイッチングするための水素発生・導入システムを共に開発してくれる協力企業を募集しているとのことで、そうした企業と協力していくことで、実用化を目指していきたいとしている。

  • 30cm幅の調光ミラーシート

    右が30cm幅の調光ミラーシート。左がガラスに調光フィルムを貼り付けたデモ。下部から水素を供給すると、数秒程度で下から徐々に透明状態に変化していく