女性ボーカルの「リン」と男性ボーカルの「レン」が収録されている男女ツインボーカル構成のVOCALOID2「鏡音リン・レン」。概要基本的な操作方法を見てきたが、今回はボーカルの切り替え方法などをチェックしてみよう。

ボーカルの切り替えは非常に簡単

「鏡音リン・レン」をインストールすると、女性ボーカルの「レン」と男性ボーカル「リン」、2種類の歌声ライブラリがVOCALOID EDITORから切り替え可能となる。男性と女性の声とはいえ、サンプリング元となった声優は女性で、一人二役をこなしているのだ。

シーケンストラックに入力した歌詞を歌う、歌手の切り替えは非常に簡単だ。コントロールトラックの下側に「SINGER」と表示された歌手エリアがある。スライダーを左側にドラッグすると、曲の頭の部分に歌手アイコンが表示されているので、そこをダブルクリックするとインストールされている歌声ライブラリが表示され切り替え可能。つまり歌い手を変更することができる。

左端へ移動すると「SINGER」に歌手アイコンが表示されており、ダブルクリックすることでインストールされている歌手ライブラリを切り替えることができる。「初音ミク」と「鏡音リン・レン」をインストールしていれば、このように表示される

これは曲の最初から歌手を設定する方法だが、曲中の任意の場所で歌手エリアをダブルクリックすると、そこから歌手を変更することもできる。もっとも前回紹介したように、VOCALOID2 EDITORはマルチトラックでのシーケンスが可能となっているので、曲中で歌手チェンジする場合も1トラックはリン、2トラックはレン、と歌手によってトラックを分けたほうがいろいろと便利かもしれない。マルチトラックで歌手を変更すれば、メインボーカルはミク、サイドボーカルはレン、コーラスはリン、といった構成も簡単だ。

曲の途中でも「鉛筆」ツールで歌手エリアをダブルクリックすれば、任意の歌手アイコンを挿入して歌手のチェンジが可能

歌声の印象は、「初音ミク」がかわいらしい声だとすれば、対する「鏡音リン」は同じ女性ボーカルでもキリッとした印象。男性ボーカルの「鏡音レン」は声変わりを迎えた後の少年らしい声、といったところだろうか。

ただ、音符と歌詞を特に工夫もせず入力した、いわゆるベタ打ちの状態で歌わせてみると、「初音ミク」に比べて「鏡音リン・レン」は両方とも、少し声に不自然さを感じた。VOCALOID EDITORでは、コントロールトラックを使うと「VEL(ベロシティ)」を調整して声のアタック感を変えたり「DYN(ダイナミクス)」で声の大きさや柔らかさを調整できる。リン・レンをうまく歌わせるには、このあたりの調整もカギになるだろう。

コントロールトラックでは「鉛筆」や「ライン」といったツールを使い、ベロシティやダイナミクスを調整できる

使い方に合わせて二種類のVSTiを用意

完成した歌声、つまりシーケンスデータは、VOCALOID EDITOR専用のシーケンスファイルであるVSQファイルとして保存するほか、WAVEファイルとして書き出すこともできる。VOCALOID EDITORはあくまでも歌声を作り出すファイルで、伴奏を付けることはできないため、曲として完成させるにはこのWAVEファイルをDAWソフトに読み込むのが一番手軽な方法だ。

「書き出し」メニューからはWAVEファイル、そしてVSTiで使うVOCALOID MIDIファイルを出力できる

ここまではスタンドアロンで動作するVOCALOID EDITORを前提に紹介してきたが、VOCALOID2はVSTiやReWireにも対応しており、対応しているDAWソフトからコントロールすることも可能だ。

VSTiは二通りの使い方がある。まずは「VOCALOID2 VST instrument」、これはVOCALOID EDITORで完成したシーケンスファイルをVOCALOID2専用のMIDIファイルとして書き出し、そのMIDIファイルをDAWソフトのMIDIトラックに読み込んで演奏するもの。ただしDAWソフト側のMIDIエディタで打ち込みを行って歌わせたり、またVOCALOID EDITORで吐き出したMIDIファイルをDAWソフト側で編集する、といったことはできない。

VSTi対応のDAWソフトならVOCALOID2を読み込むことができる、ここではヤマハの一部製品にバンドルされる「Cubase AI4」を使っている

VOCALOID Editorで出力したVOCALOID MIDIファイルをDAWソフトのMIDIトラックに読み込み、MIDI出力先としてVOCALOID2 VST instrumentを指定すればDAWソフトから歌わせることも可能

「Real-time VOCALOID2 VST instrument」はDAWソフト側で歌詞を入力して音声合成を行い、MIDIキーボードを押すごとにその音程で一文字ずつ歌う、というもの。MIDIトラックのMIDIデータで歌わせることも可能だ。鍵盤で歌わせるのはなかなか面白いが、伴奏に合わせて滑らかに歌わせるのはかなり難しい。

Real-time VOCALOID2 VST instrumentの設定ウィンドウ、「LYRICS EDIT」をクリックすると歌詞入力ウィンドウが開く。なお2種のVSTiでは歌手のカスタマイズも可能

この歌詞入力ウィンドウで歌詞をテキスト入力し「aA」ボタンをクリックすると音声合成され、MIDIキーボードの鍵盤をひとつ弾くごとに、一文字ずつ歌声として出力される

この2種類のVSTiはともに動作が比較的重いため、きちんとしたボーカル入りの曲を作ることが目的であれば、素直にVOCALOID EDITORでWAVEファイルとして書き出したほうが使いやすそうだ。

「鏡音リン・レン」はちょっとクセを感じるところもあるが、1つのパッケージで男女二種類のボーカルを使えるところはやはり魅力的。自分だけでは出せない音(歌声)をパソコンで作り出せる、そんなDTMの魅力を再確認できるソフトともいえそうだ。