MIDIコントローラは置き場所も重要!?

DTMを始めて最初に手に入れるソフトウェアはDAWやソフトシンセ、ハードウェアはオーディオインタフェースというのが基本だろう。その次に欲しくなるものは、おそらくMIDIコントローラではないだろうか。MIDIコントローラは目的によってさまざまなタイプがあるが、現在一般的なものは鍵盤を備えたMIDIキーボードに、ミキシングにも使えるようスライダーやノブ、ボタンを装備したものであろう。またその上、ドラム演奏に使いやすい、ベロシティ対応のパッドを備えたものもある(図1参照)。

図1

37鍵のミニ鍵盤、ディスプレイ付きノブ/スライダー、そしてベロシティ対応パッドを備えるコルグの多機能MIDIコントローラ「microKONTROL」

このタイプのMIDIコントローラはどうしても鍵盤が目立つため、鍵盤楽器が苦手な人は不要と感じるかもしれない。しかしそれは早合点だ。単純なMIDIキーボードと考えても、ステップレコーディングに鍵盤を活用すれば、マウス操作で打ち込むよりも快適だ。さらにノブやスライダーを使えば、DAWのミキシングだけでなく、ソフトシンセやエフェクトのパラメータをリモートコントロールすることもできる。操作性がアップするだけでなく、いかにも"機材を操作している"感が味わえるので、モチベーション向上に繋がるだろう。

しかし、いざ購入しようと店頭に赴いてみても、ある理由から躊躇してしまう人もいるはず。さまざまな機能を備えたキーボードタイプのMIDIコントローラは、意外とサイズが大きいのだ。この手のMIDIコントローラは鍵盤数によってかなりサイズが違うものの、もっとも鍵盤数が少ない25鍵前後の製品でさえ、それなりの大きさがある。基本的に気持ちよく鍵盤が弾けることを前提として設計している機材なので仕方ないが、自宅環境によってはスペースの問題からパソコンの近くに設置しづらいかもしれない。

コンパクトでも意外と弾けるnanoKEY

演奏しやすいサイズの鍵盤が大前提となっていたMIDIコントローラだが、コルグが2008年末に発売した「nanoシリーズ」はちょっと発想を転換した、新しいコンセプトの製品だ。この製品は、鍵盤タイプの「nanoKEY」、パッドタイプの「nanoPAD」、フィジカルコントローラタイプの「nanoKONTROL」という3製品で構成されている(図2参照)。1台に機能をまとめるのではなく、使いたい機能によって3台を使い分けることができ、併用することも可能だ。特徴は3製品ともサイズがほぼ共通で、横320mm×縦82mmと、とてもコンパクトなため、狭いスペースであってもパソコンのキーボードの手前に無理なく置くことができることだ(図3~5参照)。これなら小さな机の上でノートパソコンを使っている人でもOKだろう。しかしこのサイズで使いやすさはどうなのだろうか?

図2 図3

上から「nanoKEY」、「nanoPAD」、「nanoKONTROL」。横幅はA4ノートパソコンとほぼ同じで、一般的なデスクトップパソコン用キーボードよりも小さい。なお3製品とも画像のホワイトのほか、ブラックも用意されている

手前は厚さ13.5mmの旧iPod classic 160GB。カタログ上ではnanoKONTROLのみ厚さ29.5mmとなっているが、それはノブが飛び出しているためであり、本体そのものは3製品とも15mm前後とかなり薄い

図4 図5

25鍵ながらも比較的小型かつ薄型の「EDIROL PCR-M1」と並べてみても、やはりnanoシリーズはかなりコンパクトだ

nanoシリーズは外箱もコンパクト。販売店でフックに引っ掛けて展示できるようになっているのもMIDIコントローラとしては珍しい

nanoKEYは25鍵のMIDIキーボード(図6参照)。鍵盤そのもののサイズは標準的なものに比べキーピッチ約80%、厚さ約17%に縮小されているという。横幅ももちろんだが、非常に本体が薄いことに驚くだろう。この薄型鍵盤はパソコン用キーボードと同様のキー構造と発表されており、タッチも鍵盤というよりはノートパソコンのキーボードに近い印象を受ける。

実際に弾いてみると、これが意外と悪くない。少なくとも本体の小ささを見て連想するイメージよりは普通に弾ける。鍵盤数そのものが25鍵なのでやはり本格的に演奏する用途には向かないが、入力用としては十分だ。またこの薄型鍵盤であっても、ベロシティにも対応している。CC MODEボタンを押せば各鍵盤からコントロールチェンジを送信でき、リモートコントロールにも使用可能だ(図7参照)。

図6 図7

25鍵のMIDIキーボード「nanoKEY」。非常にコンパクトだが意外と普通に弾ける。電源はUSBバスパワーで駆動となっており、これはnanoシリーズ3製品共通である

本体左側にはCC MODEのほかOCTAVE UP/DOWN、PITCH UP/DOWN、MOD(モジュレーション)ボタンを搭載。オクターブは4段階でシフト、インジケータが無点灯→緑→オレンジ→赤→赤点滅し一目でわかる

また使ってみて感じたことは、ソフトシンセやエフェクトのパラメータをいじりながら音を出す、試奏のシチュエーションに便利そうだということだ。この過程ではあまりきっちりと演奏することはないが、それなりにフレーズを入力したい。手元にnanoKEYを置き、無理なくマウスやパソコンのキーボードを操作できるのは便利である。

なおnanoKEYに限らずnanoシリーズ3製品はパソコンに繋げば標準ドライバで動作するため、パッケージ内にはCD-ROMなどは入っていない。nanoKEYには「M1 Le」というソフトシンセのライセンスが付属し、Webサイトからダウンロードして使うことができる(図8参照)。そのほかにも専用ツールをダウンロードできるのだが、そちらについては残り2製品と共に次回紹介しよう。

図8

nanoKEYにライセンスが付属するソフトシンセ「M1 Le」。スタンドアロンのほかVST/ARAS/AUといったプラグインにも対応