新型コロナウイルスの影響は携帯電話業界にも少なからず影響を与えているが、一方でさまざまな形でユーザーへの支援策も打ち出しているようだ。各社の支援策を確認してみよう。

影響は小さくないがインフラ維持に努める

本記事の執筆時点(2020年4月12日)では、新型コロナウイルスの感染は国内でも大幅な拡大が続いており、政府が緊急事態宣言を発令するなど危機感が非常に高まっている状況だ。そうした影響は人々の生活だけでなくさまざまな業種・業界に影響を与えているが、携帯電話業界もその例外ではない。

実際携帯電話業界では、2020年2月にスペイン・バルセロナで世界最大の見本市イベント「MWC Barcelona 2020」が開催される予定であった。また国内であれば、3月には携帯大手3社が5G商用サービスを開始し、4月には楽天モバイルの携帯電話事業が本格的にサービスを開始するなど、非常に大きな出来事が相次いでいたのだ。

だがMWC Barcelonaは参加企業が多数参加を見合わせたことであえなく中止。5Gや楽天のサービスは開始になったものの、新型コロナウイルスの影響で発表イベントや関連するイベントなどはオンラインに限定、あるいは延期などの措置が取られ、非常に静かなスタートとなるなど、新型コロナウイルスに完全に出鼻をくじかれてしまったのである。

  • 新型コロナウイルスの影響で、5G商用サービス開始の発表会はオンラインで実施されることに

    大手3社は2020年3月に5Gの商用サービスを開始したが、その発表会は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため全てオンラインでの実施となった(写真はKDDI提供)

また最近では、携帯電話各社の社員やコールセンター、そして携帯電話ショップのスタッフからも新型コロナウイルスの感染が報告される事例が出ている。そうしたことから各社ともに感染対策に追われており、楽天モバイルは全国のショップを臨時休業。ドコモショップ、auショップ、ソフトバンクショップ、ワイモバイルショップも緊急事態宣言が発令された地域を中心として、時間短縮の措置が取られているようだ。

  • 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、携帯電話ショップも休業や時間短縮営業などの措置が取られている。楽天モバイルは全国の店舗を臨時休業中だ(写真は2020年1月23日に撮影)

だが一方で、携帯電話はコミュニケーション、そして情報を得る上で欠かすことのできないインフラでもある。そうしたことから各社とも、通信サービスの維持に向けた取り組みは引き続き強化するとしているが、それ以外にも新型コロナウイルスの影響をさまざまな形で受けている利用者に向け、さまざまな施策を打ち出しているようだ。

支払い期限延長に加えオンライン学習支援も

大きな取り組みの1つとなるのは、料金支払い期限の延期措置だ。新型コロナウイルスの影響で働けなくなるなどして手元にお金がなく、携帯電話料金の支払いが難しいという人もいるかと思われるが、そうした人達に対して支払いを期限を延長する措置が取られているのだ。

大手3社に関連した企業でいうと、NTTドコモ、ソフトバンク(ソフトバンク、ワイモバイル)とウィルコム沖縄(ワイモバイル)は2020年2月末以降、KDDIと沖縄セルラー(いずれもau)、楽天モバイルは2020年2月25日以降に請求した料金の支払い期限を、ユーザーからの申し出があった場合延長するとのこと。延長期間は各社ともに5月末までとしているが、影響が長期化する場合はさらなる延長をする可能性もあるという。

MVNOに関しても、NTTコミュニケーションズ(OCNモバイルONE)、ビッグローブ(BIGLOBEモバイル)、UQコミュニケーションズ(UQ mobile)、インターネットイニシアティブ(IIJmio)、オプテージ(mineo)、LINEモバイルなど大手のサービスを中心に、やはり申し出があった人に対して支払い期限の延長を実施するとしている。

そしてもう1つの取り組みは、25歳以下のユーザーに対する通信量の増量だ。これは新型コロナウイルスの感染防止のため学校の休校が相次いでいることを受け、オンライン学習の活用を支援するという政府からの要請に応えた措置である。

世界的に見れば固定ブロードバンドが広く普及している日本だが、それでも家庭に固定ブロードバンド回線を引いていない世帯は少なからず存在する。そうしたことから多くの人が持っているであろうスマートフォンの高速通信量を増量し、そちらを固定ブロードバンド回線の代替として使ってもらうことで、オンラインサービスの活用による学習継続を支援する狙いがあるようだ。

NTTドコモ、au、ソフトバンク/ワイモバイルはいずれも、25歳以上の利用者に対して無償で50GBの追加チャージを提供するとのこと。NTTドコモは5月末までの実施を予定、au、ソフトバンク、ワイモバイルは4月末までの実施を予定しているほか、パソコンなどでの通信にも活用できるよう、期間中はテザリングオプションも無償にするとしている。

MVNOも同様の措置を取っているが、無償で提供される容量に違いがある点に注意が必要だろう。ちなみにUQ mobileやIIJmioは30GB、BIGLOBEモバイルは20GB、OCNモバイルONE、mineo、LINEモバイルは10GBを無償提供するとしている。

なお楽天モバイルは、オンライン学習やテレワークの需要が増えていることを受け、2020年4月8日の本格サービス開始当日に料金プラン「Rakuten UN-LIMIT」をアップデート。KDDIとのローミングでカバーしている「パートナー回線」のエリアでの通信量上限を2GBから5GBへと増量するとともに、上限超過時の通信速度も128kbpsから、動画の視聴にも耐えられる1Mbpsへと向上させている。

  • 楽天モバイルは本格サービス開始当日に「Rakuten UN-LIMIT」の内容をアップデート。パートナー回線エリアでの通信量上限を5GBに、超過後の通信速度を1Mbpsにアップさせている

新型コロナウイルスの感染拡大がいつ収まるのか見通しが立たず、多くの人がさまざまな面で不安を募らせていることは確かだろう。だが携帯電話業界でもこうした支援策は出てきており、有効活用することで不安要素の1つが解消できる可能性もあるということは、ぜひ知っておいて欲しい。