これまでは、「炎上の定義」や「2016年の炎上の傾向」について述べさせていただいた。今回は、弊社が考える具体的なソーシャルリスク対策の手法についてご紹介したい。

炎上した後の対応ではもう遅い!?

実際にSNS上で企業絡みの「炎上」事象が発生した場合、ユーザーや世間は、企業側の対応のスピードや内容、さらに誠意に着目する。それらの対応によって、その後の炎上の広がり方、企業イメージや、経営のインパクトなどに影響を与えると言っても過言ではない。対応次第で、企業評価は大幅に左右されることになる。「炎上」発生から、その解決に至るまでの対応が重要になってくるのだ。

より的確な対応をするには、炎上が発生してからの事後対応では遅い。企業側は、「炎上」事象が発生することを前提とした企業対策を講じておかなければならない。

2つのソーシャルリスク対策とは?

「炎上」事象発生前に取れる対策はどのようなものがあるのか。ここからは、その手法について、具体的に述べていきたい。

弊社では、大きく2つのソーシャルリスク対策があると考える。1つは、「自社」を知ることである。これは、自社がSNSユーザーや、世間からどのようなイメージで捉えられているかを把握することだ。2つ目は、体制構築と準備である。「炎上」事象が発生した際に即対応できる社内体制を構築しておくことだ。

これらは、「炎上」事象の「事後対応」であってはならない。あくまでも「事前」に対応・実施できているかが重要だと考える。今回は、1つ目の「自社」を知ることについて、具体的な対策例をあげていきたい。

蓄積があるからこそ変化に気づく!?

まずは、口コミのパトロールである。口コミのパトロールは、炎上事象の早期発見という目的が主ではあるものの、それ以上に企業側がSNSユーザーや世間に「どのような評価を得られているか」を見出すことができる。

企業のイメージや評価を可視化させることは重要である。口コミを追うことで、企業イメージの評価水準を知ることができ、さらには変化も迅速に察知することができる。今現在、ユーザー様や世間から企業側がどのような評価を得られているのか、日々の変化を追うことは重要であると考える。

以前の連載で記載した通り、「炎上」事象には「ネガティブ」・「ポジティブ」の様々な意見が飛び交うバイラル型が多くなっている。さまざまなユーザーの意見が飛び交う中で、「ネガティブ」な口コミや意見だけを重視し対応することは、危険である。「ポジティブ」な意見を寄せてくれているユーザーを軽視した判断になりかねないからだ。

口コミの中に点在する「ネガティブ」「ポジティブ」を重要度順に配分することで、自社の評価水準を知ることができる。評価水準に変化が起きた際、今までとどのように違うのか、どんな口コミにより変化が起きたのかを比べなくてはならない。その変化にどう対応すればいいのか、次の対策の検証開始することができる。

例えば、口コミの中に自社のパワハラ体質と捉えられるような投稿があったとする。もし、このような投稿があれば企業側が、人事部門と連携し社内調査を開始すべきである。投稿が事実であれば、即座に社内の体制を整理する必要があるのだ。

「炎上」事象発生!即謝罪。それでいいのか?

「炎上」事象が発生した場合、ソーシャルリスク対策をおこなっている以上、企業側は「謝罪」「謝罪しない」の2者選択しかないという結論に至ることが多い。炎上コンサルの1つの手法ではあるものの、謝罪する、しないで解決に至るという安易な考えは捨てなければならない。

「ネガティブ」な口コミの件数が多いと言ってもそれは1つの要素でしかない。件数だけを見て「謝罪」「謝罪しない」の判断自体をすべきではないのである。企業の口コミが拡散された、されないに関わらず、1つの口コミがどのような影響を与えているのか見極める必要がある。その口コミが誰にどのような影響を与えているのかを冷静に捉え、その後の企業アクションの方法を検討していかなければならない。

口コミパトロールにはこんな役割も!

「ポジティブ」な口コミに対しても、パトロールは大きな役割を果たすこともある。例えば、自社製品に対する「価格」に対しては「ネガティブ」だけれども「機能性」に対しては「ポジティブ」など、口コミの「ネガティブ」「ポジティブ」の区別である。データが可視化されれば、そこからのクロス分析も可能になる。

口コミのパトロールは、「価格帯」「デザイン」「機能性」など口コミベースで自社製品の弱みや強みを可視化することができるというメリットがある。さらに、口コミのパトロールを継続させれば、テレビCMなど、顧客の意見を取り入れた有効な広告展開を期待できると言える。マーケティングの改善、リスクの回避にも効果的なのだ。

口コミのパトロールは、単純なリスク調査と思われがちである。しかし、さまざまな口コミを知ることは、企業側としてより多くの情報を集約でき、結果的に自社を守ることに繋がるのだ。

次回は、ソーシャルリスク対策2つ目の「体制構築と準備」について具体的に触れていきたい。

佐伯朋嗣

大手IT広告代理店にて100名規模のSEM部署、特にSEO領域の責任者やジョイントベンチャーによる子会社の営業統轄を歴任。その後クラウド業界を経て2011年イーガーディアン入社、2015年に取締役就任。 現在はイーガーディアングループ全体の営業責任者として、監視、SNS、広告BPOなど数多くの大型案件に関わる。 企業のSNS使用方法や炎上のメカニズム、その対策などのソーシャル対応や分析を得意とする。