前回の「ドローン、200g未満は『Tello』が人気 重量級はDJI勢がズラリ」に引き続き、今回はビックカメラ有楽町店の4階おもちゃ売り場にて、STEMトイの売れ筋を取材しました。
STEMとは「Science」(科学)「Technology」(技術)「Engineering」(工学)「Mathematics」(数学)の頭文字を並べた造語で、それらを総合的に学べるトイをSTEMトイと呼びます。2020年度から全国の小学校でプログラミング教育が始まることを背景に、近年ファミリー層の注目度がじわじわ高まっているジャンルです。
トイズコーナーを担当する石戸圭介氏は「やはり、子どもたちよりも親御さんの関心が先行している印象を受けますね。良い買い物をするには、いかに子どもが熱中できるかということが鍵になると思います」といいます。
熱中するなら、夏休み中のいまは絶好のタイミングといえそうです。それを踏まえて、STEMトイ購入の3つのアドバイスを挙げてもらいました。
- プログラムは、自分の発想でどんどん発展させていくのが醍醐味。対象年齢で背伸びする必要はない。
- 助長は控えたほうがいいけれど、つまづいたときに親御さんが相談に乗れる姿勢はとても大切。
- STEMトイや教育系玩具における導入予算の目安は、1万円前後~2万円前後くらい。
まだ新興のジャンルということもあり、今回の売れ筋ランキングはトップ3まで挙げてもらうことにしました。加えて、夏休みにお勧めの教育系トイも3つ挙げてもらっています。順に紹介していきましょう。
※原稿と写真で掲載している価格は、2019年7月24日14:00時点のもの。日々変動しているので、参考程度に見てください。
第1位:STEMトイのスタンダード的な存在「mBot」
一番人気となっていたのは、Makeblock Japanの「mBot V1.1」です。電子基板や赤外線送受信機、センサーやモーター、ボディーや車輪などを自分で組み立てたあと、Bluetoothで接続したスマホやタブレットでプログラミングして動かせます。税込み価格は1万4482円。
「STEM教育のすべてが詰まったモデルですね。見た目のかわいらしさや別売りオプションの充実度も手伝って、スタンダードな存在となっています。ただ、プログラムには日本語を使うので、小さな子だとそこがネックになる可能性はあります。実際、小学校に上がった子どもにプレゼントする方が多いように感じます」
第2位:遊ぶ当人からの人気が高い「Sphero SPRK+」
続く2位は、Sphero(スフィロ)のボール型トイ「Sphero SPRK+」です。組み上がった状態で出荷されていて、スマホやタブレットを使ってプログラミングして操縦するトイとなります。税込み価格は1万8144円。
「STEM系トイでは、子どもからの問い合わせがもっとも多いモデルになります。mBotよりもおもちゃの色合いが強く、遊びに重点を置きつつプログラミングを学ぶのに向いていると思います」
なお、Sphero SPRK+の小型版といえる「Sphero Mini」も同様にヒットしていますが、「よりSTEM色が薄らいで、おもちゃとして買っていく人が多い傾向があるので、今回はランキングから除外しました」とのことです。こちらの税込み価格は5454円でした。
第3位:未就学から始められる「Codey Rocky」
3位には、mBotと同じMakeblock Japanから売り出されている「Codey Rocky」がランクインしています。文字が読めなくてもプログラミングが楽しめるモデルで、人の表情や年齢を読み取るセンサーを搭載したコントローラーと、車輪がついた可動部を組み合わせて遊べます。税込み価格は1万4893円。
「より低年齢の子ども向けのSTEM系トイですね。小学校に入る前からプログラミングに親しんでもらいたいということで購入する親御さんが多いです」
夏休みのお勧めその1:「テレビにうつって! リズムでえいご♪ ワンダフルチャンネル」
STEMから教育全般に広げ、夏休みシーズンに売れ行き好調でかつお勧めのアイテムを挙げてもらったところ、石戸氏が最初にピックアップしたのはセガトイズの「テレビにうつって! リズムでえいご♪ ワンダフルチャンネル」でした。
テレビの上部にセンサーを取り付けると、テレビの前にいる人を変身させたり、ダンズゲームや英語ゲームを始めたりといった遊びが可能になります。税込み価格は1万4018円。
「夏休みは子どもが家にいる時間も多くなるので、その時間に楽しく英語耳を鍛えたいということで買っていかれる方が多いですね」
夏休みのお勧めその2:学習パッド
ジャンル全体で盛り上がっているのは「学習パッド」だといいます。国語算数英語、プログラミングなどの学習コンテンツを収録した電子パッドで、さまざまな人気キャラクターとコラボレーションした製品が並んでいます。なかでも売れているのが、タカラトミーの「ポケモンパッド ピカッとアカデミー」で、税込み価格は1万1980円でした。
喜ばれやすいポイントとして、対象年齢の幅が狭めのモデルを選ぶのも有効な手といいます。「対象年齢が広すぎると、子どもにとって簡単すぎて退屈な問題が多くなったり、難しすぎて全問クリアが望めなかったりして、モチベーションが下がってしまうこともあります。兄弟姉妹で一緒に遊ぶのならありですが、一人用ならちょっと背伸びするくらいの難易度がベターかもしれません」
夏休みのお勧めその3:「レゴ BOOST クリエイティブ・ボックス」
3つめは、レゴジャパンの「BOOST クリエイティブ・ボックス」です。レゴブロックを使ったSTEM系トイで、記号を組み合わせてプログラミングできる機能を備えています。税込み価格は2万3738円。
「おもちゃに近い位置ながら、STEM教育も存分にできるモデルです。既存のレゴブロックと組み合わせて遊べますし、日本語をマスターしていなくても矢印などの記号を並べるだけでプログラミングできるので、かなりとっつきやすいです。対象年齢は7~12歳となっていますが、親御さんが組み立てを手伝って一緒に遊ぶなら、もっと小さいうちから楽しめると思います」
著者プロフィール
古田雄介
フリーランスライター。『アキバPick UP!』(ITmedia PC USER/2004年~)や『売り場直送! トレンド便』(日経トレンディネット/2007~2019年)などのレポート記事を手がける。デジタルと生老病死のつながりにも詳しい。著書に『死とインターネット』(Kindle版)、『ここが知りたい! デジタル遺品』(技術評論社)、『故人サイト』(社会評論社)など。