前回述べたように、LED電球は白熱電球に比べて直下の方向が明るく、それ以外の方向は暗くなる傾向がある。白熱電球と置き換える場合、同じ全光束のLED電球でも、その特性を考慮しないと実用性に問題が残るケースも出てくる。

ペンダントのように釣り下げて、主に直下方向を照らすような器具の場合、どのようなLED電球を使用しても、さほど問題が起こらないように思える(極端に配光角が狭いランプでは、補助の照明が必要なケースが出てくる可能性はある)。特に問題が出てくるのは、壁面に取り付けるタイプの器具や側面にソケットがあるダウンライトだ。これらは、ランプの横側に光が出ることを前提とした器具だ。こういった器具に通常のLED電球を使用すると、本来は照らさなければならない範囲が明るくならず、不要な部分のみを照らすことになる。

ランプの横方向に出る光を利用した器具では、LED電球の配光角の狭さが問題になるケースが多い

そういった問題に対処するのが、広配光タイプと呼ばれるLED電球だ。昨年あたりから市場に出回るようになってきたきた広配光タイプのLED電球は、電球に近い配光を実現する製品だ。現時点で最も配光角が広いのは、パナソニックが発売している「全方向タイプ」のLED電球。配光角が約300度となっており、白熱電球と同じような使い方が可能だ。

パナソニックの「全方向タイプ」LED電球。約300度の配光角を持ち、電球と同じ感覚で使用できる

広配光を実現するのには、いくつかの方法がある。まずは、カバー部分の大型化だ。カバーの内部で光が反射して別の方向に向かう特性を利用したもので、全周に対してカバーの占める比率が高くなるほど、広い配光を得ることができる。これを実現するには、LED電球の下の部分にあるケース部分の小型化、つまり電源部分の小型化と、放熱の効率化が求められる。また、光源付近に光を拡散させるための機構を設けるという手法もよく使用される手法だ。パナソニックの「全方向タイプ」では、LEDチップのそばに光拡散リングを設置。また、シャープの「DL-LA51N」「DL-LA44L」では、導光チューブが使用されている。アグレッド(旧丸善電機)の広配光タイプLED電球では、LEDチップの配置自体を立体的にするという手法も使用されている。実際には、これらのうち1つのみを使用しているというのではなく、いくつかの要素を組み合わせて使用しているというケースが多い。

パナソニックの「全方向タイプ」LED電球が採用する「光拡散リング」のイメージ

シャープのLED電球が採用する「導光チューブ」

別のアプローチも存在する。パナソニックの「小型電球タイプ(斜め取り付け専用タイプ)」は、特に広配光を目指したLED電球ではないが、LEDパッケージが約60度の角度で斜めに取り付けられており、口金が横にあるダウンライトに取り付けると光がちょうど下に向くようになっている。

サイドにソケットを持つダウンライトに特化した、パナソニックの「小型電球タイプ(斜め取り付け専用タイプ)」

LED電球は既存の器具に使用することを前提としたランプだ。そのため、特性が異なる光源を同じ器具で使用できるようにするためには、ランプ側での工夫が必要だ。ある意味無理が生じているといっても良いだろう。初めからLEDを使用することを前提とした器具ならば、こういった問題は発生しない。

LED照明として早くから商品化が行われていたダウンライトなどは、取り付けには工事が必要だ。賃貸物件などでは、居住者が勝手にとり換えるということはなかなか難しい。一方、シーリングライトやペンダントなどでは、ユーザーが既存の埋め込みローゼットや引っかけシーリングなどに簡単に取り付けるための器具が増えてきている。これらは、主に従来の蛍光灯を使用した器具からの置き換えを狙ったものだ。さて、前回LED電球の仕様を見た際に、白熱電球と比べて経済性などで大きな開きが有るのに対して、電球型蛍光灯とLED電球とでは、寿命こそ差はあるが経済性には極端な開きがなかった。

果たして、蛍光灯を使用している場合に、LEDに置き換える意味はあるのだろうか。次回は、その点について話を進めていきたい。