先日私の漫画がドラマ化した際、主演女優の方にお会いし、サイン色紙を書いてもらった。
今その色紙は我が家の玄関のレイヤー最前列に位置し、私のメディア芸術祭トロフィーよりも前に来ているのだが、惜しいことに我が家には客が一切来ないので、その宝を拝んだ者は誰もいない。
だがそれよりも長く我が家で誰の目にも触れない秘宝として、玄関の守護神として君臨していたのが「Perfume」のサインである。
その守護りぶりは本部以蔵もかくやであり、サインに書かれている2018年から現在まで、やはり我が家には誰も客が来ず「なんでPerfumeのサインがここに?」という問いに答えることは一度もなかった。
先日そんなPerfumeが「コールドスリープ」に入るとの報道があった。
近未来的なイメージを持つ彼女ららしい「活動休止宣言」だが、クソオタクは望郷太郎の1話か、火の鳥未来編を想起してしまうので、できれば人類滅亡までに起きてきてほしい。
休止はもちろんファンにとって残念だろうが、そもそも浮き沈みの激しい芸能界でこれだけ長く、休みなくやってきた方がすごいのかもしれない。
Perfumeとカレー沢薫を繋げた「都会野郎特有の雑感覚」
ここで改めて、私の玄関に何故Perfumeのサインがあるのか、よく見たらparhemeのものではないのか、という話をしたい。
あれはPerfumeのメジャーデビュー10周年とか、とにかく記念イヤーの時、私が漫画を連載していた雑誌が「突然のPerfume特集を行う」と言い出し、それにレポ漫画を描かないかと誘いがあったのだ。
私が漫画界のPerfumeファンとして有名だったからではない、むしろ「パヒュームとは?」と根源的質問が返ってきてもおかしくないぐらい芸能知識が北京原人であることで知られていた。
しかし、原人の知識にもPerfumeはあった、むしろ数は3までしか数えられないが、3人のグループと言えばPerfumeという刷り込みがあり、個人的にPerfumeのイラストを描いたりしたこともあった。 それで白刃羽の矢が立ったかというとそれも違う、頼むなら3以降も数えられてPerfumeを知っている作家がいいに決まっている。
そのレポ漫画の内容がPerfumeに会って話を聞くとかではなく、Perfumeが生まれた広島に行ってPerfumeゆかりの地を巡って関係者に話を聞く、という企画だったのだ。
そして私は山口県に住んでいた。
山口県と広島県は隣だから、呼べばすぐ来れるだろう、そんな都会野郎特有の雑感覚によって呼ばれたに決まっている。
言っておくが隣県とはいえ、広島はそんなにコンビニ感覚でいくところではなく、新幹線が必要だ。
Perfumeには会わず、広島に残ったPerfumeの残り香を嗅ぎに行くという、今思えばかなり変態じみた企画だったし、Perfumeがビラを配ったらしい場所や、屋外ライブを行ったかもしれないステージ、という取れ高ゼロな場所に連れていかれた時は、ステージを舐めて「Perfumeの靴底と間接キスの可能性」という話にするしかないのではとすら思った。
しかし、その後Perfumeいきつけのお好み焼き屋や、出身である広島アクターズスクールなど、縁の深いところで話を聞くことにより、無事レポ漫画は完成したので先んじてステージや道路を舐めなくて本当に良かった。
そして漫画が掲載されてしばらくして、レポ漫画を見たPerfumeからコンサートに招待があったので来るかと誘いがあったのだ。
本当に見たのかはわからないが、知らない人を突然招待しないと思うのでレポ漫画が縁だったのは間違いない。
もちろん担当と見に行ったし、関係者席という大変見やすい席で見させてもらった、しかもコンサートの後で、楽屋でPerfume本人に会わせてくれるという。
だが、ここで担当が帰った。
何やら明日どうしてもはずせない用があるらしく、帰らないと電車に間に合わないそうだ。 「ここで待ってたらスタッフの人が迎えに来るから、じっとしてなさいね?」と、愛人と逃げる母親のようなことを言う担当に会場に取り残され、私はまんじりとせず待ったがなかなかスタッフの人は現れないし、周囲は続々と帰宅している、ちなみに私もこう見えて電車に間に合わないと帰れない身である。
もしかして騙されたのではないか、むしろスタッフが「こいつでいいや」と別の人を連れて行ったのではないがか、全く事情は呑み込めなくても「今からPerfumeに会わせてやる」と言われたら、そのまま話を合わせて会いにいくだろう。
結論から言うと、スタッフの人は現れ本当にPerfumeには会わせてもらった。
何を話したかは正直覚えていない、むしろ初見でPerfumeと記憶に残るレベルの会話ができるやつなどそんなにいないだろう。
だが記念撮影もサインも快諾してくれ、私の数少ないキラキラした思い出として擦り倒されているし、それもPerfume本人が輝き続けてきたおかげである。
これからも、我がニューカマーを迎えた玄関のツートップとして活躍してほしい、彼女らのコールドスリープが溶けるのが先か、うちに客が来るのが先か勝負といったところだ。
