前々からしつこく言っていた、私の漫画原作のドラマの放送がはじまった。
まだ第2回までが放送されただけだが、今のところ私の胃粘膜塗装が全剥げする結果にはなっておらずホッとしている。
そもそも2次元を3次元にしようという時点で無理がある、実写がダメだったからと言って原作者が責任を感じる必要はないのかもしれないが、主演をはじめ、演者脚本音楽に至るまで不自然に豪華なのである。
これでダメだったら、レベルEの名言「このメンバーで勝てなかったらもはや野球のルールの方がおかしい」に倣い「このメンツで燃えるなら原作がどうかしている」という状況だったため、放送開始2週間前から下痢が止まらず病院にも2回行ってしまった。
幸い、今のところ炎上などはしておらず、やっと私も落ち着いて映像を見られるようになってきた。
芸能人には会いたいが、会話はちょっと難しい
ドラマ放送前に、主演の女優さんには3回ほど会わせてもらった。
私は実家にインターネットという黒船が来訪して以来、テレビをほとんど見ることがなく、芸能人には極めて疎い。
去年から諸事情によりゴールデンタイムだけ少しテレビを見るようになったのだが、何せペリー来日から25年も経過している。
加齢により最近の芸能人はなかなか顔と名前が覚えられないばかりか、中年特有の「中高生の時聞いてた曲を鬼リピ現象」により「今日も一茂出てる」と、当時から知っているタレントしか視界に入らなくなっている。
だが、主演の人はそんな私でも知っている人であり、たとえ知らなくても「芸能人に会わせてあげる」と言われたら、それを一生自慢するつもりで臆面もなく会いにいってしまう。 実際すでに「あの人に会った」という話で原稿を何本書いたかわからない、そろそろ何らかの訴状が届きそうな気がする。
しかし、嬉々として会いには行ったが、そこからが全くの無策であり、何を話すかなどは全く考えていなかったのだ。
パッと見ただけでも全く共通点がなく、当然共通の話題などない。「実は私こう見えて呼吸してまして」と言えば「私もです」と言ってくれるかもしれないが、そこから広がる気がしない。
辛うじて私が山口県、先方が隣の広島県出身という近さはあるのだが「広島県は山口県のことを気にしていない」という事実があるため、これも全く盛り上がる気がしない。
よしんば、話題や聞きたいことがあったとしても、本人を前にしたら何も言えなくなるに決まっており、実際そうなった。
すると、何も言わず室外機みたいな音を出し続ける私を哀れに思ったのか、先方から「カレー沢先生は休みの日とか何してるんですか」と、話しかけてくれた。
国民的女優にマチアプではじめて会った人みたいなことを言わせてしまった、やはり売れている人というのは売れても周囲に気を遣うのだ。
続けて、ドラマとか映画とか見ますかと聞かれたのだが「ドラマは見ません、映画もほとんど見ません、YouTubeを見てます」と、主にドラマと映画で活躍している人との会話を完封する返答をしてしまった。
その後何を話したかは覚えていないが、それ以降何も話さなかったという可能性もある。
YouTube動画の「一番いいところ」にCMをいれるAI登場
しかし、確かに私はドラマも映画も見ないが、彼女の顔は毎日と言っていいほど見ていた。 何故ならYouTubeは、無料版だと動画の途中でCMが入り、自ずとCM出演が非常に多い彼女の顔も毎日見ることになる。
しかし「YouTubeの間に入って来るCMでよく見ています」というのは、そんなつもりはなくてもイマジナリー京都人が使いそうな実質超ド級の悪口になる恐れがある。
動画の途中に入り込んでくるCMというのは歓迎されるものではなく、今の乳幼児は言葉より先にYouTubeの「スキップ」を押すことを覚えるとさえ言われている。
結局それは言わず終いだったが、やはり言わなくてよかった。
そんなYouTubeのCMだが今後「一番盛り上がっているところでCMを挟んでくるAI」が活用されるらしい。
テレビで散々やっている手法だが、商品はもちろんCMに出ている人にまで怒りが湧いてきそうなのでやめてほしい。
AIと言えば、さすがに3回目は反省してAIに「これから国民的女優Aと話すんだけど何話したらいい?」と聞いてから挑んだ。
もしこれが人間だったら、まずは熱を測れと言われるだろうし、場合によっては尿検査を命じられるだろう。
しかしAIは、そんなことは言わずに真面目に、何を話すべきか提案してくれた。
人間の気持ちまでは解さないAIだが、世の中にはこういう感情を殺さないと答えられない質問もあるので、やはりAIは必要だ