ここ5年間、購入した家庭電化製品を思い浮かべてみてほしい。洗濯機、電話、オーブンレンジ。家庭によって買った商品に違いはあるだろうが、そのほとんどは「買い換え」なのではないだろうか。エレクトロニクス製品のなかには、太陽光発電やIHクッキングヒーターのように、最近普及し始めた商品もあるが、ほとんどがすでに持っているものを買い換えるのである。今回紹介する商品も、多くの家庭で設置済みの商品だ。それは電気釜でも、冷蔵庫でも、そして、エアコンでもない。意外と買い換えしたい商品リストから漏れているものである。

ところで、この夏、買い換えがもっとも多かったものといえば、間違いなくエアコンだろう。去年は冷夏であまり売れ行きがよろしくなかったし、今年になっても、6月までは、さほど暑くなく、売上は期待できそうもなかった。近所に、ヤマダ電機があるのだが、今年の春先、入口の人通りが多いところにあったエアコン売り場は、上の階に移ってしまったのだ。いままでエアコンがあった場所は、美容関係の品、脱毛機やドライヤーなどが置かれていた。きっと、この夏の猛暑はメインの売り場から外されたエアコンの逆襲であろう。たくさんの気象の記録が塗り替えられ、そしてエアコンの売上は伸びた。ヤマダ電機は売り場をもとに戻すか、観察していたが、今のところ、戻る気配はない。

それはそうと、今回紹介するのは、エアコンではなく、便座である。買い換えと便座って、意外な組み合わせだと感じた方も多いのではないだろうか。そもそも、家電製品を買い替えるきっかけは、製品が壊れてしまい、修理するよりも買ったほうがいいような場合だ。その点、便器は、各メーカーの努力のおかげで、すぐに壊れない、一生モノである。一度買ったら、家を改築でもしない限り、そのまま使うものだという印象が根強くある。便座も便器と同様、両者一緒にずっと使っていくものだと思っている人は少なくないだろう。

パナソニックは主婦の心理をつかむのがうまい!

ところがだ。最近の便座はお尻を洗う洗浄機能やフタの自動開閉など、いろんな機能がついている。トイレは単なる陶器ではなく、エレクトロニクス商品、エアコンと同じように、買い換える商品なんである。そこで、今回、紹介するのは7月1日に発売となった、パナソニックの温水洗浄便座「ビューティ・トワレ」WDシリーズ。買い換えたい商品リストから程遠い便座であるが、ユーザーの買い換えへの意識が低かったら、買い換えたいという気持ちを起こさせる。そんなことができるのは、さすが、パナソニックである。新発売のビューティ・トワレを知ると、便座も買い替えなければという気持ちになる。

パナソニック温水洗浄便座「ビューティ・トワレ」WDシリーズ

とはいえ、ユーザーの目が肥えまくっている今の時代、魅力があっただけでは商品は売れない。説得力がなければならないのである。パナソニックが訴えている説得力ある要因とは何か。それは「省エネ」である。主婦にとって、毎月の電気代はできれば下げたい。でも、こまめに何かしなければならないというのは面倒である。たとえば、エアコンの温度設定で娘ともめたり、つけっぱなしになっている部屋の照明について、おこごとを言うのは、親としてもうんざりなんである。節約するなら、気持ちよくラクしたいのである(←これはぐうたら主婦だけではないはずだ)。そんなとき、「この製品を買えば、それだけで電気代が下がります」といわれると、ちょっとだけ気持ちが揺らぐのである。この主婦の心理に働きかけるのがパナソニックはうまいのである。

何もしないで、おトクが得られる

昇温スピードに優れる「マイクロチュービングヒーター」を新たに採用した

パナソニックの便座に買い換えると、どのくらいおトクなのか。家電製品のなかで、消費電力が多いものをあげてみると、冷蔵庫やエアコン、照明などが浮かぶ。とくに、熱に関するものは、消費電力が高くなる。とはいえ、便座のヒーターなんて、ちっぽけなものである。大して電気をくわないだろうと思うのではないだろうか。ところが、資源エネルギー庁の調べでは、便座の家庭用消費電力は全体の中でなんと第6位なんである。1位はエアコン、2位は冷蔵庫、この辺は予想通りだが、トイレなんて、一日のうち、何回も利用するものではないのに(調査によると一日わずか47分しか使用していないらしい)、それでもけっこう電気をくっていることに驚かされる。便座の消費電力を下げることができれば、それは有効な節電につながるわけである。

どのようにして節電を実現したのか。パナソニックが目をつけたのは、待機時の消費電力を下げることだ。通常、便座は、座った時に冷たさを感じないよう、使用しないときも暖めておく(夏場は切る人が多いが…)。ここでの電気がムダだ、とパナソニックは考えた。そこで、センサーを用いて、トイレに人が入ったら、急速に便座を暖める方式を採用した。センサーが人を検知してから、便座に座るまでの間は約6秒。この短い間に一気に29℃まで便座を暖めてしまい(29℃とは人が暖かさを感じる目安らしい)、その後、座っている間は暖かく快適と感じる40℃で便座温度を保ち、使用が終わると自動でオフにする瞬間式を装備したのだ。

ところが、冬になると、トイレ内の気温は5℃くらいにまで下がる。さすがにこれでは、6秒間で29℃にもっていくのはつらい。そこで、2009年に発売された前機種では、待機時に18℃に設定しておき、6秒で29℃を実現していた。

パナソニックでは、冷蔵庫、ジャー炊飯器、洗濯乾燥機、食器洗い乾燥機、エコキュートなどにも最適なエコを考える「エコナビ(ECONAVI)」を搭載する

新機種では、この待機時の温度を18℃から15℃に下げて、さらに節電を実現したのである。8年前に発売されたパナソニックの便座は年間の電気代が3,890円だったが、新機種では1,360円にまで下げ、2,530円もおトクにしている。15年くらい前に発売された便座の中には、年間の電気代が5,000円程度のものもある。もちろん、前機種の年間の電気代1,650円と比べても下がっている。古い機種ほど、買い換えのおトク度がアップする。そんなわけで、日頃電気代を下げたいと思っている人は便座を買い換えることがおすすめである。もちろん、魅力は節電だけではない。そのほかの魅力を次回、紹介する。

イラスト:YO-CO