プロシージャルでアートをする~コンピュータに実装した人工知性でアート作品を作る(2)
静的なアート作品と、動的なキャラクター生成の中間的な位置にありそうなプロシージャル作品として注目されたのはWilliam Latham氏の作品群だろう。
William Latham氏はゲーム業界での経験も豊富で、現在もロンドン大学ゴールドスミス・カレッジで教鞭を執る傍ら、ゲーム関連コンサルティング会社GamesAuditのCEOを務めている人物。そんな彼が、考案したのは遺伝的アルゴリズム(GA)ベースで3D形状モデルを生成する仕組みだ。
複数の基本形状の遺伝子を組み合わせたり、掛け合わせたり、あるいは突然変異をさせたりして、基本形状モデルを増殖成長させるようにして形状を形成していく。前出の反応拡散系と貝のプロシージャル生成をより複雑に実装したようなイメージだろうか。
ライティングが独特なせいもあるが、とても有機的で面持ちで、臓器というかH.R.ギーガーがデザインしたようなエイリアンチックでエロチックなデザインとなるのが興味深い。
Latham氏のWebサイトには多数、この手法で生成したモデルの映像が公開されているので興味を持った人は見てみよう。以下にLatham氏の作例のムービーを示しておく。
プロシージャルアートにAI的な要素を付け加えた事例もある。
それが、画家Harold Cohen氏の作風を、コンピュータ上のプログラムとして実装した「コンピュータ画家アーロン(AARON)」だ。
Cohen氏自身は画家でありながらもコンピュータのプログラミング能力がある人物で、AARONの設計には自らが携わっている。Cohen氏特有の構図や色遣いなどをモデル化して実装しており、実行するたびに異なる絵画ができあがる仕組みとなっている。
AARONは開発元のKurzweil Cyber Art Technologies社のサイトに無償で公開されている(2010年1月下旬現在は公開が休止中)。
単なる幾何模様画ではなく、花や人物などのキャラクターや、机や壁などの小道具/セットまでが登場するため、完成画はそれなりに説得力のあるものとなっているのが凄い。
こちらはプロシージャル技術と人工知能(AI)技術とが融合した技術として、今後、コンピュータサイエンスの研究テーマとして発展する可能性を秘めている。(続く)
(トライゼット西川善司)