2025年2月22日にTFTホールにて、『鉄拳8』のチームバトルトーナメント「MASTERCUP.13(MC13)」が開催されました。「MC」は、ゲームセンターでスタートしたイベント。2年前の2023年11月に行われた「MC12」では、PCのSTEAM版が使用されましたが、今回は初の「PS5」での開催です。
さらに、タイトルとしても初の『鉄拳8』。そんな記念すべき「MC13」の優勝チームは韓国勢の「Saudi Champion MalGu」でした。
「MC」は5対5の勝ち抜き戦で、試合はすべてBO1で行われます。『鉄拳』シリーズはほかの対戦格闘ゲームよりも試合数が多い傾向があるので、BO1で行われる今大会は、いつもよりも運や勢いなどに勝敗が左右されやすいと言えます。
今大会のエントリー数は196チーム。980名が参加しました。大会は1次予選、2次予選、ワイルドカード決定戦、トップ8の順番で行われます。1次予選は3~4チームがブロック分けされ、リーグ戦を行った結果、1位になったチームのみ2次予選に進出します。2位のチームはワイルドカードAへ。3位のチームは敗退です。
2次予選は、1次予選を勝ち抜いた65チームが7ブロックに分けられ、シングルエリミーネーションのトーナメントで対戦します。1位となったチームは決勝トーナメントに進出。負けたチームはワイルドカードBへ移ります。
ワイルドカードはいわゆる敗者復活戦。ワイルドカードへ進んだチームは代表者1名を決め、BO1の個人戦を行います。ワイルドカードAのトーナメントで優勝したチームはワイルドカードBに進出。ワイルドカードBで優勝したチームはトップ8の最後のひと枠に飛び込めます。
この枠は昨年の「Tekken World Tour」で世界チャンピオンになったRangchu選手が代表となった「TokyoFGC(Feat.VARREL)(FGC)」が獲得しました。
トップ8に進出したのは「グランメゾン★練馬(練馬)」「Saudi Champion MalGu(SCM)」「軍団メンディー(メンディー)」「Rox3Gaming feat.仲良し(ROX3)」「ZETA works(ZETA)」「お誕生日おめでとうPTJ(PTJ)」「kagemaru no party(knp)」「FGC」の8チームです。
「MC」は毎度、日本チームと韓国チームがせめぎ合って、優勝を奪い合っていますが、今年も「SCM」、「PTJ」の2チームが韓国勢としてトップ8に残っています。日本チームと海外チームの参加の割合から考えると、韓国勢は健闘していると言えるでしょう。
組み合わせは、ワイルドカードの「TokyoFGC」が8枠目に確定しており、それ以外のチームがK-1方式で、登場するチーム順にトーナメント表の空いている枠を指定します。韓国チームは、左の山に「SCM」が、右の山に「PTJ」が入り、決勝戦まで潰し合わない形になりました。
大会のスケジュールが押していたため、残念ながらすべての試合を配信台として視聴することはできませんでした。配信台となった「メンディー」対「Rox3」は、「Rox3」のUNO選手の活躍により準決勝へ進出。それ以外の試合は「SCM」、「PTJ」、「FGC」が勝ち上がりました。準決勝は「SCM」、「PTJ」の韓国勢が勝利し、韓国勢同士の決勝戦です。
決勝戦は、チーム名にもなっている誕生日を迎えたPTJ選手がJDCR選手を破る幸先のいいスタート。そこからはシーソーゲームが続きますが、「SCM」のMulGold選手が連勝し、「PTJ」の大将LowHigh選手を引きずりだします。そのLowHigh選手からもラウンド連取して「SCM」が優勝にリーチをかけますが、ここからLowHigh選手が覚醒しました。逆3タテでMulGold選手を倒します。
副将のJeondding選手戦では、フルラウンドでまたもや「SMC」が優勝に王手。しかし、体力リードを奪われたLowHigh選手が最後の最後で賭けの「レイジアーツ」を決めて、逆転で勝利しました。
勝負の行方は大将戦に委ねられます。「SCM」の大将は韓国屈指のロウ使いMangja選手。最初のラウンドと3つめのラウンドで勝利し、優勝まであと一歩です。
「SCM」としては中堅戦から3度目の優勝リーチ。ここからの逆転が続いていましたが、最後はManja選手がLowHigh選手を倒しきり、「SCM」が優勝を決めました。勢いはLowHigh選手にありましたが、さすがのLowHigh選手も強豪選手相手に3人抜きはなりませんでした。
「MC」はオープントーナメントで、誰でも参加できるので、プロライセンス保持者をはじめ、翌日に控えたライセンス認定大会でライセンス取得を目指すハイアマチュア選手、コミュニティの面々など、さまざまな人が参加していました。
なかでも、注目したいのは、「平均身長169.99cm『5P三島財閥』」です。『鉄拳』シリーズのプロデューサーである原田勝弘プロデューサー、池田幸平ディレクター、マイケル・ムレイプロデューサーの開発者3人に、ストリーマーのたぬかなさん、EVOの統括責任者のマークマンことMark Julioさんのチームです。開発者自らチームを組み、参加しているのはファンや選手にとって至上の喜びでしょう。
また、ノビ選手やタケ。選手、ユウ選手が所属するTeamYAMASAのオーナー会社である山佐からも選手が出場していました。スポンサーやチーム、関連会社の社員が出場してくれているのも、しっかりとeスポーツ文化を正面から捉え、支えてくれていると感じられるので、こちらも喜ばしいことです。
ほかにも、女性のみの「月華雷鳴」も参加していました。最近はeスポーツ界隈、または対戦格闘ゲーム界隈に女性が増えてきますが、それでも女性のみのチーム編成で参加するのは珍しいと言えます。しかも、みなさん、ハイレベルな対戦をしており、かなりの実力者ぞろいでした。
もちろん、プロ選手も多く参加しており、ファンとの写真撮影といった交流が見られました。選手も快く対応し、ファンも必要以上に近づかないようにしていたのは、コミュニティのオフライン大会ならではの光景でした。
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『鉄拳』シリーズの開発陣とたぬかなさん、マークマンのチーム「平均身長169.99cm『5P三島財閥』」
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たぬかなさんの名を冠するチームはほかにもあり、ファンの集いのような状態に。まさに「スナックたぬかな」のTFTホール出張所のような状態です
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マークマンは海外配信にも出演していました。コミュニティ大会で海外配信があるのも『鉄拳8』ならでは
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「メンディー」の一員として参加した『スト6』のプロ選手であるどぐら選手(写真左)と破壊王選手(写真右)
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チクリン選手は今回「FGC」の一員として参加していました
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チーム「全力ぶっぱーズ2025(^ω^)」の選手たち
『鉄拳』シリーズといえば、強豪国の韓国。今回も多くの韓国勢が参加していました。優勝、準優勝は韓国チームでしたし、日本国内のコミュニティ大会ながら、国際色豊かな大会となっているのは『鉄拳』ならではと言えるでしょう。
今後の大会では、もう1つの強豪国であるパキスタンからも参戦してくれることを期待したいところです。いろいろハードルは高そうですが、Ash選手やButt選手などが同じチームとして参戦したらどれだけの強さを見せてくれるのかが楽しみです。
また、少し触れましたが、「MC13」の翌日にはライセンス認定大会である「MASTERCUP TRY」が開催されました。参加者数によってライセンス認定数が変わるとのことでしたが、292名ものエントリーがあり、3名のライセンス認定者が決まることになりました。
『鉄拳』シリーズのライセンスは取得機会が少なく、まだ20名しかいません。同じ対戦格闘ゲームの『ストリートファイター』シリーズは80名以上いるので、その数の少なさが分かると思います。
それだけにプロライセンスの取得は悲願であり、渇望してやまないものであると言えます。結果は、はいしゃ選手、太平洋の暴れん坊選手、バッツ選手の3名がプロライセンス取得の権利を得ることになりました。
ただ、現状だと、プロライセンス保持者と非保持者には大きな違いはなく、トッププレイヤーであれば、ライセンスを所持していなくても競技シーンで活躍できます。
そろそろ『鉄拳』シリーズもプロライセンス保持者のみが招待されるリーグ戦やトーナメントを開催してほしい気持ちもあります。その場合は、人数が少なすぎるので、もっとライセンス取得者を増やしていくべきでしょう。
ともかく1,000人近い選手が集まって行われる大会は熱量も高く、ほかのeスポーツタイトルに匹敵するポテンシャルは十分に持っていると感じました。eスポーツ競技や観戦、エンタメとして『鉄拳8』はまだまだ下振れている状態だと思いますので、もっと注目されるような施策やイベントが開催され、より注目されることを願います。