11月18日、対戦格闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズ最新作『ストリートファイター6(スト6)』のeスポーツ大会「CAPCOM Pro Tour 2023 World Warrior JAPAN FINAL(WW FINAL)」が開催されました。優勝したのは、ふ~ど選手。ウィナーズサイドからのトーナメントで、1回も負けずに優勝を決めました。

  • 優勝したふ~ど選手。サタデーナイトのフィニッシュポーズをお願いしました

「WW」は、8月19日から10月28日までに行われる全5回のトーナメントで構成されるツアー大会。大会ごとに付与されるポイント上位8名のみが「WW FINAL」に進出できます。

「WW」全5大会のポイント総数は以下の通りです。

1位:ふ~ど選手(120pt)
2位:ときど選手(95pt)
3位:かべ選手(80pt)
4位:もけ選手(80pt)
5位:ヤマグチ選手(75pt)
6位:翔選手(75pt)
7位:かずのこ選手(70pt)
8位:フェンリっち選手(70pt)

「WW FINAL」で優勝すると、『スト6』年間王者を決める「CAPCOM CUP X」の出場権を得られます。現在、「CAPCOM CUP X」への出場権を持っている日本人選手は、シンガポールで行われた「OFFLINE PREMIER」優勝者のガチくん選手のみ。「WW FINAL」で2人目の出場者が決まります。

ちなみに、これ以降、日本人選手が「CAPCOM CUP X」に出場する権利を獲得できるのは、12月2、3日に開催される「ONLINE PREMIER 日本大会」と当日予選の「Last Chance Qualifier(LCQ)」だけ。「LCQ」は世界各国のプレイヤーが参加するので、「WW」は日本人枠が確定している数少ないチャンスでもあります。

「WW FINAL」は、ダブルエリミネーション方式のトーナメント。2敗した時点で敗退のルールですが、5~8位の選手はすでに1敗した状態の「ルーザーズサイド」からのスタートします。

グランドファイナルは、ウィナーズファイナル勝者とルーザーズファイナル勝者の対戦。ウィナーズサイドの選手が勝利するとそのまま優勝ですが、ルーザーズサイドの選手が勝利すると「リセット」の状態になり、再度対戦が行われ、ここで勝利した選手が優勝になります。

試合形式はBO5(3勝勝ち抜け)。セットを落とした選手のみキャラクター変更が可能です。トーナメントは1位と4位、2位と3位、5位と8位、6位と7位の対戦からスタートしました。

  • 「WW」5大会の総ポイント上位8名。左のトップ4がウィナーズサイド、右の5~8位がルーザーズサイドからのスタートです

  • 「WW FINAL」に進出した面々

今大会で特に優勝候補として名高いのが、ふ~ど選手です。国内プロリーグ「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2023」(SFリーグ)では、序盤に苦しい展開が続き、勝ち星に恵まれませんでしたが、「WW」でも2大会目までポイントなしの状態でした。しかし、第3回大会で20ポイントを獲得すると、第4回、5回大会で連続優勝し、一気にポイントトップに躍り出ます。尻上がりに調子を上げ、「WW FINAL」に向けて一番調子がいいプレイヤーと言えるでしょう。

2位のときど選手は、全大会でポイントを獲得している安定感があり、第3回大会では優勝。ふ~ど選手の対抗馬筆頭として挙げられます。かべ選手は、ふ~ど選手とは逆に序盤で稼いだポイントで上位入賞を果たしました。ただ、優勝が一度もなく、勝ちきれてないところを「WW FINAL」で払拭できるかどうか、注目が集まります。

もけ選手も優勝していないところが気になりますが、「SFリーグ」での安定感をみると優勝候補であることは間違いありません。もちろん、ルーザーズの選手も実力者ぞろいで、その日の調子によっては、優勝を狙えるでしょう。

  • 会場には、ふ~ど選手の奥様であるグラビアアイドルの倉持由香さんや「WW」第1回大会で優勝したオニキ選手も見学に訪れていました

ウィナーズの1回戦1戦目は、ふ~どディージェイ対もけ春麗。春麗の得意の間合いに付き合わず、間合い外から反撃が見事に刺さり、3-0のストレートでふ~ど選手が勝利します。

2戦目は、ときど選手対かべ選手のケンミラー。かべ選手は、後半でポイントが稼げていませんでしたが、大会前日に行われた「SFリーグ」で初勝利をあげ、機運が高まっています。いいところでアグレッシブに攻撃を仕掛けたかべ選手のドライブインパクトが決まり、3-1で勝利しました。

  • ふ~ど選手

  • もけ選手

  • ときど選手対かべ選手

ルーザーズの1回戦1戦目は、ヤマグチディージェイ対フェンリっちJP。「SFリーグ」でも1stステージで対戦している組み合わせです。そのときはヤマグチ選手が勝利しました。今回は、ヤマグチ選手が先行したあと、2-2まで追いすがるフェンリっち選手でしたが、最後はヤマグチ選手が勝ちきります。

2戦目は、翔JP対かずのこキャミィ。遠距離で戦いたいJPに対して、持ち前の機動力とキャノンストライクの強襲で近距離間合いを保つかずのこ選手が危なげなく2回戦へとコマを進めました。

  • ヤマグチ選手

  • フェンリっち選手

  • 翔選手対かずのこ選手

ルーザーズ2回戦1戦目は、ときどケン対ヤマグチディージェイ。この対戦は、ちょうど前日の「SFリーグ」で行われたばかりで、ときど選手が勝利を収めています。

しかし今回は一転、ヤマグチディージェイの相手の攻撃を避けつつ下段攻撃を出すファンキースライサーがことごとく決まり、そこからのコンボで大ダメージを与えます。画面端に追いやられてもODジャックナイフマキシマムの無敵技暴れで脱出するなど、多くの場面で読み勝ちが見られました。そして、ヤマグチ選手がときど選手相手に1セットも落とさず、ストレートで勝利します。

ルーザーズ2回戦2戦目は、もけ春麗対かずのこキャミィ。キャミィの主軸技であるキャノンストライクがいいところで当たっていたものの、立ち回りとコンボダメージの差が大きく、もけ選手が勝利しました。

  • ヤマグチ選手のCAをくらい、首をかしげるときど選手

  • もけ選手対かずのこ選手

ルーザーズ3回戦よりも先に、ふ~どディージェイ対かべケンのウィナーズファイナルが行われました。立ち回りがうまく、ほとんど画面端を背負わないふ~ど選手。たまに画面端を背負っても、即時に入れ替えて押し戻し、ケンの生命線である画面端での攻めができないよう徹底します。そのまま、ふ~ど選手の圧勝と言える結末となりました。

  • ウィナーズファイナルはふ~ど選手対かべ選手に

ルーザーズ3回戦は、もけ春麗対ヤマグチディージェイ。もけ選手が一気に2セット取って3セット目の1ラウンドもパーフェクトKOでマッチポイントを迎えます。しかし、ここからヤマグチの怒濤の反撃がスタート。2回マッチポイントを奪われながらも逆転から勝利し、最後は逆王手をかけると、そのまま勝ちきりました。

これでルーザーズファイナルはヤマグチディージェイ対かべケンのカードに決定。ヤマグチ選手が勝つとグランドファイナルはディージェイミラー対決と、かべ選手が勝つと対ディージェイの3連戦となります。

ウィナーズファイナルと同様にディージェイを苦手にしているような様相を見せるかべ選手。ラウンドを取るもののセットを取ることが難しく、3-0でヤマグチ選手がグランドファイナルへ進出しました。

試合後にかべ選手に話を聞いたところ、やはりディージェイ戦を詰められていなかったとのことでした。ただ、同じチームメイトの翔選手とともに2023年の『スト6』競技シーンを沸かせたニューカマーとして、大きな爪痕を残せたのではないでしょうか。

  • もけ選手対ヤマグチ選手

  • かべ選手対ヤマグチ選手

  • かべ選手はパッドプレイヤー。ベスト3に残った選手はふ~ど選手がアーケードコントローラー、ヤマグチ選手がレバーレスコントローラー、かべ選手がパッドと、3人とも違うコントローラーを使っていたのも印象的でした

グランドファイナルは、ふ~ど選手対ヤマグチ選手のディージェイミラー。ディージェイは強キャラと言われてはいますが、決して覇権キャラクターではない印象です。今回この結果になったのは、いい状態で攻略が回っているからでしょう。もちろん、ふ~ど選手とヤマグチ選手の力によるところも大きいと言えます。

ふ~ど選手は無敗でグランドファイナル進出したのに対し、ヤマグチ選手はルーザーズを泳ぎ切った真逆の状態。試合数の多いヤマグチ選手はかなり暖まっていそうですが、一度負けてもリセットされるだけのふ~ど選手には余裕がある状態です。

ヤマグチ選手は、これまでコンボのつながり状況が悪い不運な面があったり、コマンドミスが多少ありましたが、アグレッシブな攻めで帳消しにしてきました。しかし、ふ~ど選手戦ではそれが致命傷に。ふ~ど選手は少しのミスも逃しません。

それでもアグレッシブに攻め立てるヤマグチ選手ですが、ふ~ど選手のディージェイの練度が高く、苦戦を強いられます。結局、3-0のストレートでふ~ど選手が勝利し、「CAPCOM CUP X」行きのチケットをゲットしました。

  • グランドファイナルはディージェイの同キャラ対戦となりました

  • 勝利した瞬間のふ~ど選手

今回の「CAPCOM CUP X」は、『スト6』発売記念として優勝賞金100万ドル(約1億5000万円)、賞金総額200万ドル(約3億円)以上の高額賞金大会です。前回の「CAPCOM CUP IX」の優勝賞金が12万ドル(約1800万円)だったので、破格であることがわかります。

もちろん、「CAPCOM CUP」優勝の栄誉は絶大なので、賞金だけで語られるべきではありませんが、さすがにこの額となると賞金の行方にも注目が集まるでしょう。ふ~ど選手の優勝にも期待が持たれます。

あとは「CAPCOM CUP X」までにどこまでピークを持っていけるのか。現状、ディージェイの攻略がいい感じに回っていますが、今後は対策がなされていくのが常です。それを払拭し、さらなる高みへ登れるかが勝利への道となるでしょう。

「CAPCOM CUP IX」では、日本と海外の攻略の差、キャラクターのティアの違いが露呈し、実力差以上に苦しめられました。また、EndingWalker選手やZhen選手のような新進気鋭の登場もみられました。海外での主流の戦略や戦術、主要キャラクターや出場選手についての情報がどれだけ得られるかも優勝するために必要でしょう。

これから「SFリーグ」のPlayOffやGrandFinalも控えています。まだまだクリアしなくてはならない大きな壁があるなか、「CAPCOM CUP」への準備を進め、ファンの期待に応えてほしいところです。