さて、2023年も残すところあとわずかとなりました。そこで1年間のeスポーツの出来事を振り返ってみたいと思います。また、2024年はどうなるでしょう。気になる点を挙げてみました。

大規模な世界大会がいくつも開催された2023年

2023年に印象的だったことは、やはり大型の世界大会がいくつか日本で開催されたこと。その最たるものが、6月に開催された『VALORANT』の「VALORANT Champions Tour 2023: Masters Tokyo(Masters Tokyo)」です。

VCT Pacific、VCT EMEA、VCT Americasそれぞれのリーグから上位3チーム(VCT EMEAのみLOCK//INの優勝ボーナスとして4チーム)に、中国からの2チームを加えた12チームで開催された世界大会。VCT Pacificに所属する日本チームは、「ZETA DIVISION」が4位、「DetonatioN FocusMe」が10位と参加権を得られず、日本開催ながら日本チーム不在という結果となってしまいました。

しかしながら、「Masters Tokyo」のロウワーファイナルとグランドファイナルが行われた幕張メッセでは総来場者数が1万7,000人を超え、大盛況となりました。

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    「TIPSTAR DOME CHIBA」と「幕張メッセ」で開催された「Masters Tokyo」。世界トップクラスのチームが集結し、熱戦を繰り広げました

さらに、「Masters Tokyo」以上の規模だったのが、2023年8月11日から13日まで開催された『ポケットモンスター』関連のeスポーツイベントである「Pokémon World Championships 2023(WCS)」。『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』『ポケモンGO』『ポケモンユナイト』そして「ポケモンカードゲーム」の4種目の世界大会です。

大会そのものの規模もさることながら、大会前後の8月会場「パシフィコ横浜」のある横浜みなとみらい地区全体が『ポケモン』一色となるイベントも開催。みなとみらいのいたるところがポケモンで埋め尽くされており、街がテーマパーク化しているレベルのお祭り騒ぎでした。

街全体を大会一色にしてしまうのは、これまでのeスポーツイベントで観たことがありませんし、それどころか先に行われた東京オリンピックでさえ、ここまでイベントで染め上げてはいなかったでしょう。

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    お盆近くで毎年開催していた「ピカチュウ大量発生チュウ」とWCSが融合し、みなとみらい地区全体がポケモン一色に

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    みなとみらいのあちこちにポケモンがいました

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    WCSでは『ポケモン』関連タイトル4種目の世界大会が同時に開催されました

ほかにも、5月には世界最大規模のLANパーティ「DreamHack Japan 2023」が開催されました。LANパーティは、パソコンやゲーム機を持ち込んで楽しむオフラインイベント。日本でも「C4 LAN」などを中心に盛り上がりを見せています。

しかし、音楽ライブやゲームイベントなどを融合した複合型エンタテインメントゲーミングフェスとして開催された「DreamHack Japan 2023」では、まだ日本での馴染みの薄さを実感しました。これをきっかけに少しずつ根付いていくことを期待します。

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    DreamHack Japanでは『ブロスタ』の世界大会も開催

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    また、DreamHack Japanの初日には『ストリートファイターIII 3rd IMPACT』の大会であるクーペレーションカップ、2日目には『バーチャファイター5 Final Showdown』の大会であるビートライブカップが開催されました

11月には『VALORANT』のインビテーショナルイベントの「Red Bull Home Ground」が開催されました。会場はなんと両国国技館。相撲の聖地ながら、実は過去にスーパーファミコン(SFC)の『ストリートファイターIIターボ』の大会「ストリートファイターIIターボ チャンピオンシップ’93 in 国技館」が開催されており、約8,000人が参加した伝説の大会の会場でもあります。

30年の時を経て、国技館にeスポーツが帰ってきただけでも感慨深いものがあります。大会としても、世界各国の強豪を招待し、さらに日本からはVCT Pacificの「ZETA DIVISION」、VCJを勝ち抜きアセンションに出場した「SCARZ」、日本予選を勝ち抜いた「FENNEL」の3チームが出場。「Masters Tokyo」よりも身近な日本チームが出場していることからも、応援しやすい大会だったと言えます。

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    両国国技館で行われた「Red Bull Home Ground」

これほどの世界大会が日本で開催されたことは、本当に稀なことです。それだけ日本のeスポーツ市場が大きくなり、将来性も含め、各タイトルのメーカーや大会運営が開催するに値する土地であると判断したのでしょう。

オフラインへの完全移行も印象的だった

もちろん、国内の大会も数多く行われました。2022年まではコロナ禍による自粛で、オフライン大会の開催中止やオンラインへ切り替えがありましたが、2023年はオフライン大会の復活が多く見られました。

高校生向け大会である「全国高校eスポーツ選手権」は2月にLFS池袋で、「STAGE:0」は8月に東京タワー フットタウン内の「RED° TOKYO TOWER」で開催されました。「全国高校eスポーツ選手権」は隣の映画館でパブリックビューイングを行い、「STAGE:0」は有観客で実施。また、「全国高校eスポーツ選手権」は今回の第5回をもって終了することを発表しましたが、NASEFが引き継ぎ、「NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」として大会を続けることになっています。

すでに「STAGE:0」や「全国高校eスポーツ選手権」は、高校生にとって目指す先として確立しており、小中学生から「高校生になったら参加したい」との声が聞こえているので、今後も継続していってほしいものです。

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    東京タワーにあるeスポーツ施設「RED° TOKYO TOWER」で開催された「STAGE:0」

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    「STAGE:0」で高校生がオフライン会場で対戦するのは、2019年に開催された第1回大会以来

プロシーンでもオフラインに切り替えた大会は多く、声出し禁止などの制限が取り払われたイベントも多かったのではないでしょうか。

完全にコロナがなくなったわけではありませんが、オフラインイベントはそこまで影響を及ぼさないと判断され、2024年以降はさらにオフラインイベント増加の傾向が見られるかもしれません。

日本のeスポーツ選手は2023年も世界で活躍

日本チームもしくは日本人選手が世界大会で活躍したことも印象的でした。北米ラスベガスで行われた対戦格闘ゲーム「EVO」の総合大会では『スト6』部門で翔選手が同率5位の成績を残し、一躍時の人になったと思いきや、その直後に行われたサウジアラビアのeスポーツイベント「Gamers8」の『スト6』部門で優勝し、優勝賞金約4200万円を獲得しました。

12月に行われた『クラッシュロワイヤル』の世界大会「クラロワリーグ世界一決定戦」では、むぎ選手が2年ぶり2回目の世界王者に輝いています。こちらも賞金約3700万円と高額賞金の獲得です。

チーム戦で言えば、『ブロスタ』の世界大会、「Brawl Stars World Finals 2023」において「ZETA DIVISION」が3年連続の優勝を果たしています。まあ、これはEMEAを舞台に活動しており、選手がすべて外国人なので「国内チーム」と言うとちょっと違和感がある人もいるでしょうが、拠点が日本のチームであることは間違いありません。

『クラロワ』や『ブロスタ』で日本人、日本チームが優勝したことはそれほど知られていないと思われますが、『ストリートファイター』シリーズや『鉄拳』シリーズなどの対戦格闘ゲーム以外でも日本人選手が活躍できるタイトルがあるわけです。

eスポーツ施設も着実に増加

eスポーツが身近になってきたと感じる理由の1つに、eスポーツ施設が続々とオープンしていることが挙げられます。高田馬場駅前にオープンした「ASH WINDER eSports Arena」は600平米という国内最大級の施設。アクセスの良さからすでにさまざまなイベントが開催されています。

さらに、2024年1月は池袋に「Café&Bar RAGE ST」が、2月は上野に「esports Style UENO」がオープン予定。どちらも、さまざまなeスポーツイベントに活用されることが予想できます。施設が増えれば、パブリックビューイングやオフライン大会もより開催しやすくなるでしょう。

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    高田馬場の駅前のビルの1フロアにオープンしたeスポーツ施設「ASH WIDER eSports Arena」

どうなる!? 「eスポーツ2024」

さて、2024年ですが先も言ったとおり、eスポーツ市場はより大きくなると予測されます。オフラインイベントは、コミュニティから商業ベースまでさまざまな大会が増えていくことでしょう。地方での大会やコミュニティも活性化していくとみられます。ますますeスポーツが身近な存在になっていくことでしょう。

2023年は『スト6』が盛り上がりを見せ、対戦格闘ゲームの復権が叫ばれましたが、2024年もそれが継続されるかが注目です。シリーズ最新作の『鉄拳8』や『League of Legends(LoL)』の世界観がベースの新作格闘ゲーム『Project L』などのリリースが控えていることもあって、2023年以上の盛り上がりを見せるかもしれません。

しかし、多くのストリーマーにまで波及した『スト6』を食うほどの勢いが出るかは未知数。ただ、『Project L』は基本プレイ無料と発表されているので、これまで以上にさまざまなプレイヤーが格闘ゲームに触れることになるでしょう。

懸念材料としては『VALORANT』と『LoL』のプロリーグの再編です。『VALORANT』は2023年にVCJから直接世界大会へ進出する枠がなくなりました。そのため、「Masters」に出場できなかったわけです。

『LoL』の日本リーグである「LJL」では、2023年まで「Spring Split」の優勝チームが国際大会「Mid-Season Invitational(MSI)」に、「Summer Split」の優勝チームが「Worlds」へ出場できました。2024年からは「LJL」の上位3チームが「Pacific Championship Series(PCS)」プレイオフに参加し、そこで上位6チームに入れば世界大会へ出場できるようになります。

一見、「LJL」から3チームも出場できるようになり、門戸が開かれたようなイメージですが、「PCS」はAPACに所属する各国の上位チームが参加するため、そこから上位6チームに入るのは難しく、「MSI」や「Worlds」への出場が遠のく可能性もあります。「LJL」自体も8チームから6チームに数が減り、そもそも入替戦がなく新規参入しにくい状況でしたので、LJL自体が収束していく可能性もなきにしもあらずと言ったところでしょう。

2023年の「Worlds」では、韓国開催で韓国チームが優勝するなど大いに盛り上がりました。しかも、レジェンドプレイヤーのFaker選手率いる「T1」が優勝したので、同時視聴者人数がeスポーツ最高となる640万人を記録。そのため、世界大会をさらに盛り上げるために、より強いチームが出場するシステムに変更したと思われますが、日本にとってみれば、世界大会への道筋が遠のいたと言えます。

日本側からみた場合は厳しさを感じますが、これまで枠を与えられてもずっと結果が出せなかったことも事実で、その面から考えると仕方ないとも言えます。いい面があるとすれば、「PCS」は日本以外の世界に触れられる貴重な機会なので、日本チームにとって良い経験になるでしょう。

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    eスポーツ史上、最高の同時視聴者人数を記録した「Worlds」。決勝戦は世界各国でパブリックビューイングが行われ、日本では先に紹介した「ASH WIDER eSports Arena」で行われました

そのほか、eスポーツ界隈で最大の期待となるのが、サウジアラビアで開催される「eスポーツ・ワールドカップ」の開催。賞金総額は4500万ドル(約67億5000万円)とこれまでにない規模です。

さらにサウジアラビアは、eスポーツ特区建設を発表しています。巨大アリーナやホテルの建設、ゲーム会社の誘致などを予定しており、一気に世界でのeスポーツ価値が高まる可能性があるでしょう。

世界レベルの大会としては、IOCがオリンピックeスポーツシリーズとして、eスポーツを取り込み始めていますが、扱われるタイトルがeスポーツ界隈とズレがあるので、こちらはあまり期待できない状態です。ですが、このワールドカップの登場により、大きな変革がみられるかもしれません。

先日、国内eスポーツ市場規模が推定125億円に達したことが「日本eスポーツ白書2023」の内容先行公開でJeSUから発表されました。コロナ禍などを経験しつつも2019年から市場規模は年々拡大しており、2024年もこのペースで広がっていくと思われます。

ただ、拡大すると変革を必要とする部分が出たり、課題が増えたりしていきます。まだ、安定期とは言い難いので、それらを1つずつクリアし、eスポーツの普及がより拡大していくことを望みたいところです。

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    サウジアラビアの「キディヤ」に建設されることが発表された「ゲーミング&eスポーツ地区」のイメージ