先日、モバイルバッテリーの安全性についての取り組みについてここで書いた(該当記事)。旅客機の火災事故が発生したことで、飛行機へのモバイルバッテリーの持ち込み規制が強化されるのではないかという懸念についてふれた。
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旅行に欠かせないモバイルバッテリー。一般的な国際線においては160Wh以下のもの(100~160Whの場合は2個まで)で、短絡防止措置を講じれば持ち込める(国土交通省の指針PDF)
韓国発便でバッテリー持ち込みが厳格化
個人的に、先週、ANA便で東京とソウルを往復したのだが、ソウルを出発する前日に、ANA SKY WEBから「モバイルバッテリーおよび電子タバコの機内持ち込みに関するご案内(韓国出発便)」という件名のメールが届いた。
そこには各種の注意事項が記されていた。韓国国土交通部の指示によってモバイルバッテリー等の機内持ち込み手続きが強化された旨のお知らせだった(韓国国土交通部による通知はこちら)。メールには「韓国を出発するすべてのお客様は、モバイルバッテリーおよび電子タバコを機内に持ち込む際、以下の手順に従ってください」とある。
その手順は下記の4項目だ。 以下、原文のまま引用する。
1. すべてのモバイルバッテリーおよび電子タバコは、個別にジッパービニール袋に入れてください。 (例:モバイルバッテリー3個 = ジッパービニール袋3個) 2.持ち込み可能個数 100Wh以下:5個まで (5個を超える場合は、チェックインスタッフまでお知らせください。) 100Wh超~160Wh以下:2個まで (チェックインスタッフまでお知らせください。) 160Wh超:持ち込み不可 バッテリー容量計算方法:容量(Wh)=電圧(V) X 電流(Ah) *1Ah=1,000mAh 3.機内での使用および保管: 機内でのモバイルバッテリーの使用, モバイルバッテリーの充電は禁止されています。常に身につけるか、前の座席のポケットに入れて保管してください。 4.バッテリーに過熱やふくらみ等の異常が発生した場合は、すぐに客室乗務員までお知らせください。 |
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持ち込みルール、現場との“温度差”があった
けっこうめんどうくさいとは思うが仕方がないと思いつつ、ジッパービニール袋を調達し、翌日空港に向かった。
ところがチェックイン時にも搭乗後も、バッテリーの扱いについては何のアナウンスもない。空港での保安検査のときにも何も言われなかった。
不思議に思って搭乗後、CAの方にたずねたところ、
- 自分たちは何も通達を受けていない
- メールの内容を見せてほしい(実際にスマホのメールを見せると、それを読んで文面の写真を撮影)
- この指示は韓国当局のもので、日本の航空機の運行時運用については強制力を持たない。したがってアナウンス等は行わない
と説明された。
対応は航空会社しだいか、今後の取り扱いに注目
航空会社ごとの判断で運用が異なるというのはありなのかなしなのか。このような状態のままで、仮に、モバイルバッテリー関連の事故が起こったとしたら、その事故の程度に関わらず、今後はモバイルバッテリーの航空機内への持ち込みはいっさい禁止とか、モバイルバッテリーの宅配便等での輸送ができなくなるとか、ECでの販売が不可になるといった状況に発展しないとも限らない。とにかく不便になることだけは間違いない。
そのようなことが起こらないようにするためにも、明確な無理のないルールを全世界の航空会社で共有し、きちんと運用してほしいものだ。この件についてはANA広報にも問い合わせているが、この原稿の執筆時点で返事がまだない。何かわかったところで機会を見て報告したい。
2025年7月1日追記 |
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ANA広報部から問い合わせについての返信があった。
ソウルから日本への便で搭乗の前日に、ANA SKY WEBからのメールで、
「韓国国土交通部の指示により、モバイルバッテリーおよび電子タバコの機内持ち込み手続きが強化されました。韓国を出発するすべてのお客様は、モバイルバッテリーおよび電子タバコを機内に持ち込む際、以下の手順に従ってください。」
と記事内の手順が送られてきたにもかかわらず、搭乗日のチェックイン時や、搭乗してからのアナウンスなどで、いっさいそのことに言及されないことについて問い合わせた質問への回答だ。
- 今回通知された手順(個別包装や個数制限、機内使用禁止など)は、ANAの運航便においても全面的に適用されるものでしょうか。
→適用されません。
適用される場合、なぜ今回はチェックインカウンターや機内での周知・確認がなかったのでしょうか。あるいは、周知が不要な性質の指示だったのでしょうか。
CAの方がおっしゃったように、この指示はあくまで韓国当局のものであり、ANAの判断で運用が異なる(例:アナウンスはしない等)ということはあり得るのでしょうか。
→韓国当局が自国のエアラインに求めているものであり、ANAでは機内・空港カウンターでの対応は求められておりません。
とのことだ。この指示は、あくまでも韓国国土交通部が韓国の航空会社に向けて要請するものであり、日本の航空会社であるANA/全日本空輸株式会社への強制力はないということらしい。ソウル出発便の搭乗前日の案内メールは、今も送信されているそうだが、韓国国土交通部の対応は求められていないため、アナウンスや注意喚起は行わないそうだ。