生成AIが大きな話題になっている。とりあえず、誰もが簡単に使えるものとしては、Microsoftが始めた新しいBingがある。PCでの検索では、ブラウザがEdgeに限られるが、スマホでは、iOSやAndroid用にBingアプリが提供されている。
流ちょうに返事をしてくれる生成AI
生成AIは、チャットで知りたいことを尋ねると、それに対して、人間が書いたかのような流ちょうな文章でその回答をくれる。あまりにも流ちょうなので、その回答の真偽を疑うのがはばかられるくらいだ。深追いする必要もないような錯覚もある。そのくらいの心地よさがある。
ただ、これまで慣れ親しんできたGoogleなどでの検索と同様、検索のときに、その尋ね方で得られる結果は大きく違ってくる。
ぶっきらぼうに、今までと同じように単語を並べるだけの問いかけよりも、具体的に、自分が知りたいことを的確に表す文章で問い合わせた方が、よりよい結果が得られる可能性が高い。それは、何かを知りたいときに「××」とだけキーワードを入れるよりも、「××とは」と、ちょっと手当を加えた方がいい結果が得られることが経験的にわかっていると思う。
自分が何を知りたくて、なぜ知りたいのか?
自分が何を知りたくて、なぜ知りたいのか、その結果を知ってどうしたいのかまでを、きちんと正確に伝えるには、それなりのトレーニングが必要だ。
本当は適当に問い合わせても、こちらの意図を推測してくれればいいのだが、相手にこちらの様子は見えていないので、シャーロック・ホームズのように観察して推理するわけにはいかない。だから、問い合わせの中に、できる限り詳細に自分の状況を織り交ぜておく必要がある。
単純な例では、「カレーライス」と単語を入れるだけでは「カレーライス」という料理の解説が無難なかたちで返ってくるだけだが、「カレーライスを食べたい」、「カレーライスを作りたい」とすれば回答はガラリと変わる。
また、食べたい場合も「東京の大手町周辺でカレーライスの美味しい店を教えてほしい」「今話題のスパイスカレーを東京で食べてみたい」「自宅で本格的なカレーライスを作りたい」などとすれば、やはりそれなりの回答が戻ってくる。
「本当に知りたいこと」を生成AIが導く未来
もはや、われわれの暮らし、そしてビジネスにおいて、検索は避けては通れない。検索の専門職としてのサーチャーがいるかと思えば、ウェブサイトを検索エンジンに上位表示させるための技術に長けたSEOコンサルタントのような職業もある。後者は検索エンジンの欺し屋ともいえるテクニックを持つ。
生成AIは、こうした人たちの仕事を奪う可能性もあるだろう。とはいえ、世の中のすべての人が、自分自身で知りたいことを明確に文章にして生成AIに問い合わせる能力があるわけではない。この先は、生成AI側で、推測するための質問をしてくれるようなUXの展開も求められるようになるだろう。Bingのチャットでは質問の候補も表示されるようになっている。
つまり、検索エンジンの生成AIは、検索結果をまとめて提供するのみならず、よりよい検索結果を得るために、問い合わせている人間に質問をして、追加の情報を収集し、相手の人間が本当に知りたいことは何なのかを導き出す能力を持つ必要がある。
そうでなければ、従来型の検索エンジンにいくつかのキーワードを列挙した結果に毛が生えた程度の情報しか得られないだろう。いかにもそれなりの答えが流ちょうな文章で返ってくるので、スクロールしていけば、いろんなサイトが見つかる従来型の検索結果よりもたちが悪い。それでよしとしてしまうしきい値がグッと下がってしまう。
だから、饒舌な回答は、箇条書きで説明しろと指示してみることだ。そして、特定のポイントについて深掘りするための質問を考える。その会話のキャッチボールを、うまくできるだけのセンスが問い合わせる側にも求められるし、生成AIは、問い合わせる側の意図を推測する力を強化することが今後も求められる。
まだ始まったばかりの生成AIの世界だが、少なくとも、SEO対策で世界中のウェブサイトが、なんとなく同じようなものばかりになっていくことに、ちょっとした歯止めをかけることができるんじゃないかなと期待している。