ファーウェイが東京都内で発表会を開催、3月のMWCのタイミングで同社が発表したMateBook X Proを日本国内で発売することを正式に表明した。

6月15日から日本語キーボードを実装したモデルの発売を開始するという。価格はCore i5モデルが149,800円、Core i7モデルが209,800円(どちらも税別)で、ビックカメラ、ヨドバシカメラ、Amazonですでに予約を受付けている。画面占有率91%の狭額縁13.9型、アスペクト比3:2のタッチスクリーン搭載で1.33kgのクラムシェルノートだ。

  • MateBook X Proの発表会にて

発表会で登壇したヤン・ヨン氏は、この製品が日本のAndroidタブレット市場におけるナンバーワンのシェアを持つファーウェイのオールコネクテッド戦略に合致することを強くアピール、スマートフォンで培った技術でノートPCを開発し、ファッションデザイン、高性能、究極の音質、インテリジェント体験を提供する製品に仕上げたという。

不満もありつつ、使って気持ちのいいPC

実は、発表会に先立ち、英語版キーボード実装の評価機を10日間ほど使わせてもらった。公開されたばかりのWindows 10 April 2018 Updateも適用してみたが問題は感じなかった。使っていてすこぶる気持ちのいいPCだと感じた。

  • 展示されていたMateBook X Pro。前面サイズに対するディスプレイ占有率は91%で、開放感がすごい

本体右側面にはUSB Type-Aのポートがひとつ、左側面にはイヤフォンジャックと2つのType-Cポートがあり、ひとつはThunderbolt 3ポートとしても機能する。もちろんUSB Power Deliveryに対応し、さらに、5V1.5A程度でもとりあえず充電ができたりするのは心強い。

付属のPDアダプタでは、30分で6時間分の充電ができることを喧伝するが、実際、普通に使っていても1時間に10%弱を消費するだけなので、カタログスペックの12時間駆動は決しておおげさではない。この値は同社独自基準での測定で、ローカル保存された連続動画再生時間だそうだが、JEITAバッテリ動作時間測定法よりも実時間に近い印象を受ける。ただ、各社の製品を横並びで評価するためにも標準的な方法での駆動時間も明記すべきだろう。

個人的な印象としては、キーボードにちょっとした不満を感じた。評価したのは英語キーボードなので日本語キーボードとまったく同じではないとは思うが、ストロークが浅い割には、しっかりと底づかないと文字が入力できない。半端な力でなでるように入力しようとしても言うことを聞いてくれない。慣れるほどの時間がなかったので、使い続けるうちに不満が解消しそうな気もするが留意はしておくべきだろう。

このあたり、メンブレンキーボードのタイプフィーリングについて、究極のチューニングを施すPCベンダー各社に1日の長がある。もし購入を検討するなら、できるだけヨドバシカメラのファーウェイショップインショップなどでの展示機をさわってみることをおすすめする。

だが、13.9型アスペクト比3:2のタッチスクリーンは開いたときにかなりの開放感を感じる。とにかく広い。液晶を閉じているときの本体のフットプリントが小さいので余計にそう感じるのだろう。比べるとしたらMicrosoftのSurface Laptopだ。個人的には2017年もっとも気に入ったPCフォームファクタのひとつだが、こちらが13.5型でアスペクト比は同じだがMateBook X Proの13.3kgは50gほど重い。やはり手にしたときにはズシリとくる。筐体がコンパクトなだけに余計にそう感じるのだろう。日本のベンダーはもちろん、各社のノートPCがどんどん1kg前後に収束している中で、ここをどう評価するかだ。

13.9型の画面サイズで日本市場を攻める

今、世界の主流は13型前後のスクリーンサイズになっているという。ファーウェイの日本・韓国リージョンプレジデント呉波氏は、今回の製品について、日本独特の「60%現象」を指摘する。

  • MateBook X Proを手にするファーウェイ 日本・韓国リージョンプレジデント呉波氏

日本のパソコンについて調査をした結果として、ひとつは全体のPC販売台数のうちの6割がB2Bであること、そして、売れているPCの中の6割が15インチ以上のものであるという現象だ。ここに少しでも近づけるため、13型よりひとまわり大きな13.9型を提案し、ワールドワイドでの製品化を実現したという。この提案がなければファーウェイがワールドワイドで13.9型を採用することはなかった。

また、日本では日本語キーボードという要請も聞き入れられた。ファーウェイにとっては、それほど日本は重要な市場であり、日本でトレンドを作り、そのトレンドを日本発で世界に拡大していくというわけだ。そういう意味では13型薄型軽量ノートのトレンドも最初は日本が作ったものだといっていいだろう。今、世界は、そのトレンドに停滞しているが、Surfaceの動きなどを見ても、16:9のアスペクト比の否定や、画面の大型化は次のトレンドとして少しずつ浸透しようとしている。

2020年のWindows 7サポート終了に向けて、B2Bの市場はそれなりに賑やかだ。PCベンダー各社も、その波に乗り損ねまいと、魅力的なビジネスパソコンを用意することに余念がない。

ファーウェイはB2Bをはなからあきらめているわけではないが、コンシューマーに熱いまなざしを向ける気配を感じる貴重なメーカーだ。このあたりスマートフォンメーカーの雄という側面も大きく影響している。

これから働き方改革などが進む中で、人々の暮らしの中でPCがどのような役割を担うことになるのかを考えながら、この製品の存在意義を確かめたいものだ。

そういえば、先代のMateBook Xはタッチ非対応だったが、インタビューで強く要請したら今回タッチに対応した。ここはひとつ、次の世代の製品では5Gモデムの搭載を望みたいところだ。せっかくだから1.2kgを切る重量もリクエストしておきたい。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)