レノボが高等学校までの普通教室向けICT端末として、Chrome OSを搭載したLenovo 300eと500eを発表した。どちらもクラウドと連携して利用することを前提とした11.6型のChromebookだ。NTTコミュニケーションズの教育クラウドプラットフォーム「まなびポケット」と連携し、ローコストでシンプルなシステム環境を実現するという。

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家はデジタル、学校だけがアナログのまま

同社は教育市場向け戦略を説明するなかで、いわゆるK12(幼稚園~高校生3年生まで)の現状と課題、そしてこれからについて分析し、国の目標指針そのものが低すぎるにもかかわらず、現状の教育現場はそれにさえ追いついていない。負のループに陥っているのでは子どもたちに未来はないとする。

「負のループにいるままでは子どもたちの未来はない。このままでよいはずはない。子どもたちは家ではゲーム端末でゲームをして、タブレットで検索して、YouTubeを楽しんでいる。なのに学校だけが何十年も昔のままで、黒板があって先生がチョークで書いた板書を紙のノートに書き写している。いろいろな要因があるがまさに負のループ。普通教室のICT化は必須とレノボは考える。だからこそコスト削減と容易なメンテナンスを実現することは重要なポイント。オンプレミスの呪縛から脱却し、過剰スペックを見直すことから始めたい」とレノボジャパンの渡辺守氏(教育市場担当)はいう。

きいてみると、レノボ自身が教育プラットフォームの構築に参入することは今のところ考えていないという。あくまでもハードウェアを提供するベンダーに徹することで、日本の教育市場に貢献したいと考えているそうだ。

本当に必要なのは「消耗品のデバイス」

Chromebookは、パブリックな端末を不特定多数の個人が入れ替わり立ち替わり使うときにも、パーソナルな環境がすぐに目の前に現れる。いわばインテリジェンスを持ったエッジとしてうまく機能してくれる。児童生徒がそれぞれ自分専用の端末を持って学校と自宅を往復してというのは、管理の点でも、軽くはない端末を毎日持ち運ぶ子どもの負担の点でも好ましくない。

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誤解を怖れずにいえば、今、本当に必要とされているのは消耗品としての端末なのではないか。後生大事に唯一無二の端末を使い続けるのではなく、壊れたり古くなったら何のためらいもなく別の可動端末に乗り換えることができる限界まで廉価なハードウェアと、それをうまく機能させるためのクラウド。レノボが狙っているのはそういう将来ではないだろうか。

世の中の多くの企業がデジタルトランスフォーメーションに向かっている中で、ハードウェアベンダーに徹すると言い切るレノボ。もしかしたらこの会社は、ものづくりを捨てて次のステップに進もうとするあらゆる企業の受け皿になろうとしているのかもしれない。

かつてIBMはハードウェアではなくサービスを提供する企業にトランスフォーメーションするためにThinkPadを売った。それを買ったレノボは何を目指したのかが、今、見えてきているように感じる。今回の施策でレノボが見ているのは教育市場のように見えるが、実のところは、もっと大きな何かを狙うレノボ自身の改革に向けた兆しのように思う。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)