CDC6600のハードウェアテクノロジ

CDC6600は1964年の完成であり、これはIBMのStretchより3年後であるので、シリコンのプレナートランジスタを使うことができた。シリコントランジスタは、それまでのゲルマニウムトランジスタよりも仕事関数が大きく、次の図1.21に示す「DCTL(Direct Coupled Transistor Logic)」という回路形式を使うことができた。DCTLは抵抗をたくさん使うので集積回路に向かない点とノイズマージンが小さいことから、バイポーラトランジスタを使う論理回路としては「TTL(Transistor Transistor Logic)」が主流となってしまったが、DCTLはStretchが使用したCMLよりも少ないトランジスタ数で、約5nsで動作する高速の論理回路を作ることができた。

  • CDC6600に使用されたDCTLのOR回路(2入力)

    図1.21 CDC6600に使用されたDCTLのOR回路(2入力)

そして、図1.22に示すように、プリント基板にトランジスタ(中央の写真の丸い金属のカン)と抵抗などを搭載し、2枚のプリント基板を対抗させて前面版(図では下側)とコネクタ(図では上側)を取り付けたモジュール(中央)としている。左の写真はモジュールの前面板で、テストポイントが引き出されている。

CDC 6600は、約400,000トランジスタを使用していた。なお、現代のコンピュータでは大部分のトランジスタはキャッシュなどのメモリを構成するトランジスタであるが、CDC 6600のメモリは磁気コアで作られているので、このトランジスタ数はほとんど論理回路のトランジスタ数である。

シャシーのモジュール列の段の間にフレオンを通す銅の管があり、前面板の上下のねじ止め部分から銅のコールドパイプに繋がっているアルミのプレートに伝導で放熱する構造になっている。コールドパイプの温度は15.6℃に保たれ、この温度でも結露しないように、コンピュータルームの湿度をコントロールしていた。

  •  CDC6600のロジックモジュール

    図1.22 CDC6600のロジックモジュール。右がプリント基板、中央は2枚の対抗する基板で構成されるモジュールを上から見たところ、左は前面板である (出典:Gordon Bellの講義資、https://gordonbell.azurewebsites.net/craytalk/)

(次回は3月23日に掲載します)