ITライター兼カメラマンのマルオマサトです。α7Cをメイン機として活用するうち、レンズを選びのポイントが変わってきました。今回はα7C導入後に購入したレンズについて書きたいと思います。

  • 連載「α Go Round」

    α7Cはメインカメラとして活躍中。組み合わせるレンズとして、今はFE 24mm F2.8 G(SEL24F28G)がメインになっている

常用レンズは純正40mm→24mmへ

α7Cを購入するときに、常用レンズとして真っ先に意識したのが、2021年3月に登場したコンパクトな単焦点3兄弟です。24mm、40mm、50mmの焦点距離で、サイズやフィルター径も統一されており、全部そろえれば、場面に応じて3本のレンズをスマートに使い分けるシステマティックな運用が可能です。

この中から、α7Cと同時に買ったのが「FE 40mm F2.5 G」(SEL40F25G)なのですが、あまり使わなくなりました。代わりに使っているのが、後から買い足した「FE 24mm F2.8 G」(SEL24F28G)です。理由は単純に画角、焦点距離の問題です。

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    SEL24F28G(左)とSEL40F25G(右)。1つだけですませる予定だったが、結局どちらも買ってしまった。後者は持て余し気味

α7シリーズでこの手のレンズを使う目的は街中スナップや飲食店での料理、ポートレートが中心なので、40mmのほうが使いやすいかなと思っていました。ですが最短撮影距離の関係で、席に座ったまま食べ物を撮るには窮屈ですし、スナップやポートレートにしても、40mmの画角は素直すぎて面白くないといいますか……広角でパースを付けたバリエーションも撮りたくなってしまいます。

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    24mmは引けば広さを伝えることができ、寄ればパースを生かした表現もできる(α7C / SEL24F28G / 24mm / F16 / 1/100秒 / ISO100)

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    こちらも24mmで撮った写真。構図を作る楽しさは40mmより上と感じている(α7C / SEL24F28G / 24mm / F3.2 / 1/2,000秒 / ISO100)

そういう場合に都合が良いのは、24mmに加えて、APS-Cクロップすれば35mm判換算36mm相当で使えるSEL24F28Gです。料理の全体を映すには24mmが使いやすく、寄りたいならばAPS-Cクロップがハマります。スナップやポートレートでは、構図で攻めたい場合は24mm、被写体をストレートに撮りたい場合はパースが付きすぎない36mm相当という使い分けをすることが多くなっています。

なお、SEL40F25GでAPS-Cクロップすると60mm相当となります。被写体にフォーカスしたい場合には有効ですが、40mmと絵作りに大きな変化をつけられるかというと……コンパクトな1本で勝負する場合に都合が良いのは、通常24mm、APS-Cクロップ時36mmの2種類のバリエーションで撮れるSEL24F28Gなのでした。

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    40mmはとにかく普通。見たままのイメージで映したいなら都合が良いが、APS-Cクロップ(60mm)と合わせてもインパクトのある構図は作りにくい(α7C / SEL40F25G / 40mm / F2.5 / 1/40秒 / ISO200)

APS-Cクロップを積極活用

せっかくフルサイズセンサーのカメラを使っているのにAPS-Cクロップに抵抗がある方もいるかと思います。筆者もかつてはそうでしたが、ズーム代わりに日常的に使っています。むしろSEL24F28Gに関しては、APS-Cクロップのほうが多いかもしれません。

「レンズ交換すればいいじゃないか」と思うかもしれませんが、それは幻想です(主観です)。仕事はもちろん、プライベートであってもそんなにひんぱんにレンズを交換できるものではありません。着脱時に接触や落下をさせてしまう、キャップを紛失する、フィルターを付け忘れる、絞りリングが動いて設定が変わっているのに気付かない……など、ミスや事故の原因を増やす要素でもあります。

約2,420万画素のα7Cなら、APS-Cクロップしても約1,000万画素が使えます。実際撮った写真を見ると、3,936×2,624ピクセルでした。A4サイズの用紙に300ppiでプリントするのに必要なピクセル数は3,508×2,480、画素数にすると830万画素ということですので、少し角度調整などでトリミングしても十分足りる計算です。

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    最短撮影距離は、AF時が0.24m、MF時0.18mと寄れるので、料理などを撮影するときにも便利(α7C / SEL24F28G / 24mm / F2.8 / 1/40秒 / ISO200)

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    店の雰囲気も少し伝えたい場合は24mm、料理にフォーカスしたい場合はAPS-Cクロップで36mm相当の画角が合う。SEL40F25Gの40mmだとちょっと窮屈だった(α7C / SEL24F28G / 36mm / F2.8 / 1/40秒 / ISO200)

「APS-C機に近いコンパクトさでフルサイズセンサーの表現力を有し、さらにAPS-Cクロップしてもプリントに耐える画質をもつため、クロップを活用することでシステムをコンパクトにできる」

これはフルサイズセンサーのコンパクト機であるα7Cならではのメリットです。そして、APS-Cセンサーのコンパクト機に対する大きなアドバンテージであり、1,200万画素(APS-Cクロップで約500万画素)のα7S IIIを選択肢に入れていない理由でもあります。

ファームウェアのアップデートで可能ならマイクロフォーサーズ相当(焦点距離2倍)のクロップなど、もっと攻めたクロップ機能の追加も望みたいですね。

絞りリングはソニーからのメッセージ?

最近の純正のG-MasterレンズやGレンズには絞りリングが付いています。正直、α7Cを使う前は「ジャマだなぁ」と思っていました。すでに手放した「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」(SEL50F14Z)にも付いていたのですが、意識していないタイミングで絞りがズレてしまうことが多く、パーマセルテープをぐるぐる巻きにして使っていたくらいです。

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    最近のG以上の純正レンズにはほぼ搭載されている「絞りリング」

ですが、物理ダイヤルが少ないα7Cではこの絞りリングはとても頼りになります。プロにとっては、マニュアル撮影時の基本設定項目(絞り、シャッター速度、ISO)をダイレクトに操作できる物理機構はとてもありがたいものです。

前出のGレンズ三兄弟の仕様を見たときに、私はこれを「これから出すレンズには絞りリング付けてやるから、α7C買っちゃいなYO!」というメッセージのように見えました。

実際、やはりα7Cではとても重宝しており、絞りリングがあるのとないのとでは操作性が全然違います。現状、「FE 24-105mm F4 G OSS」(SEL24105G)と「FE 85mm F1.8」(SEL85F18)は絞りリングがないですが、仕方なく使っています。しかしこれから購入するレンズに対しては、必須に近い条件になっています。

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    絞りを変えるときにクリック感(抵抗感)を出すかどうかをスイッチで選択でき、当然「オン」で使っている。欲を言えば、もう少し固く(抵抗を強く)してくれたほうが良かった

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    F22とA(カメラ側で設定)の間は特別に固く、意識して力を入れないと回らないよう配慮されている。他の絞り変化時も同じくらいにしてくれるくらいでちょうどいいと思う

ボタンのせいで純正から離れられない?

同じ理由で、ソニーの純正レンズにはだいたい付いている「フォーカスホールドボタン」。α7Cと組み合わせる前提ならこれも欲しいですね。

理由は、筆者はこれに「押す間マイダイヤル」機能を割り当て、コントロールホイールでISOを設定できるようにしているからです(第5回の記事参照)。物理ダイヤルなどでのダイレクト操作には劣りますが、それでも確実にISOを操作できるのはありがたいです。

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    純正レンズでおなじみの「フォーカスホールドボタン」(中央)。α7Cを購入する以前は持て余していたが、α7Cを購入してからは重要度が増した

ソニー純正レンズのほとんどに付いているこのボタンですが、サードパーティで付いているレンズは少ないため、導入の障害になってしまいそうですね。あくまでもα7Cをメイン機として使い続けるのであれば……という前提ではありますが。

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    SEL24F28Gのフィルター径は49mmで、Gレンズ三兄弟で統一されている。こういう配慮はうれしい

色乗りがよく、開放時の玉ボケがきれいなSEL24F28G

さて、α7Cの付けっぱなしレンズとして活躍しているSEL24F28Gの評価ですが、「マイクロコントラスト高めで色乗りが良い」、「AFが速い」、「開放時の玉ボケがきれい」といったところです。

最近、もっとボケるレンズが欲しくなってSEL85F18を買い直したのですが、これが暗所や逆光でAFがなかなか決まらないのに対し、SEL24F28Gは同じような条件でもけっこうパシパシ合焦してテンポ良く撮れます。

玉ボケについては開放使用時が一番良い印象です。開放でも周辺の口径食(玉ボケがレモン型になる現象)もかなり抑えられています。

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    F2.8の玉ボケ。周辺は口径食で少しレモン型だが許容範囲だろう(α7C / SEL24F28G / 24mm / F2.8 / 1/40秒 / ISO100)

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    F4の玉ボケは角張っている。周辺では口径食も変わらず確認できる(α7C / SEL24F28G / 24mm / F4 / 1/40秒 / ISO125)

一方、絞ると絞り羽根の形状の影響か、角張りが目立ってきます。口径食もあまり改善されません。玉ボケを生かしたいときはほとんど開放で撮るので良いのですが、「玉ボケをきれいにするために少しだけ絞る」みたいなことをすると逆効果になります。

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    レンズフードなしで完全逆光で撮ってもフレアやゴーストなどはほとんど出ない。個人的には出てくれても良いのだが……(α7C / SEL24F28G / 24mm / F2.8 / 1/3,200秒 / ISO100)

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    絞り込んで光条を出してみた。きれいな形だ(α7C / SEL24F28G / 24mm / F13 / 1/160秒 / ISO100)

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    これも完全逆光で、噴水の上の像でAFでピントを合わせている。現像時に露出を上げつつ、ハイライトを下げて調整した(α7C / SEL24F28G / 24mm / F2.8 / 1/4,000秒 / ISO100)

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    上の写真を3,000×2,000ピクセル等倍で切り出した。厳しい条件の中でもしっかりと解像している(α7C / SEL24F28G / 24mm / F2.8 / 1/4,000秒 / ISO100)

α7Cと組み合わせるレンズ選びのポイント

今回のまとめとして、筆者がα7Cと組み合わせるレンズを購入するときに意識しているポイントをまとめると以下のようになります。

  • できるだけ小さく軽い
  • 焦点距離はAPS-Cクロップ時も合わせて考える
  • 絞りリングが付いている
  • フォーカスホールドボタンが付いている
  • 玉ボケがきれいだとうれしい

SEL24F28Gは大満足の良い買い物でした。開放F値が2.8なのでボケが物足りないのですが、開放時の画質の良さとコンパクトなサイズはそれを許容できる大きな利点です。スナップならこれ1本のみでさまざまなバリエーションが付けられますし、ポートレートならこれに加えて、ボケと中望遠域を補う意味でSEL85F18とセットで運用することが多くなっています。

SEL85F18は絞りリングが付いていませんが、他に良い選択肢がないので仕方がありません。絞りリングが付いた、開放F値が小さい、買いやすい価格(重要)の中望遠レンズの登場に期待したいところです。

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    SEL24F28G(右)にもう1本加えるなら、中望遠でボケを補えるSEL85F18(中央)を持ち出す。一番左は(サイズ比較用の)500ml缶飲料。α7Cのコンパクトさと軽さを最大限に生かせるシステムになった。APS-Cクロップに加えて、ストロボやフィルターなどで十分バリエーションを付けられる