シグマが、世界最小のフルサイズミラーレスカメラ「SIGMA FP2」を発表した。初代「SIGMA fp」から7年。ボディのサイズ、デザインはほぼそのままに、さらに性能や装備を向上させた。
尖った荒削りなインディーズバンドが、そのスピリットを持ったまま、テクニックも大局観も向上させて進化した――。同社の山木和人社長は、SIGMA FP2をそんな「インディーズロックのバンド」と例えて紹介した。
静止画、動画のいずれも大幅な性能向上によって、初心者にも使いやすい、幅広いユーザーをターゲットにできる製品だと山木社長はアピールする。
発売は11月11日。価格は、同社直販サイトで346,500円となっている。
進化したインディーズロックバンドのSIGMA FP2
SIGMA FP2は、フラットな長方形のシンプルなボディにフルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラ。Lマウントを採用し、初代fpは世界最小・最軽量として登場した。初代fpの発売日は2019年10月。続いて、より高画素化するなどしたバリエーションモデル「SIGMA fp L」が登場して、独特の世界観のカメラとして一定の支持を得ていた。
その後、カメラとしての新しいデザインとUI/UXを追求した「SIGMA BF」が2025年4月に登場。SIGMA fpシリーズは、一部の部材の入手ができなくなったことから生産完了になったが、もともと山木社長は「パッとやって終わりではないので、続けたいと考えていた」とのことで、どうしても後継機を作りたいと考えていたという。
SIGMA fp発売以降、ユーザーの使い方を見ていた山木社長は、いろいろなスタイルでカメラを楽しむユーザーに大きな勇気を得たという。「SIGMA fpは誰に向けたカメラか」と問われて答えられなかったという山木社長は、自分たちでカスタマイズして使っているユーザーたちを見て、「ブリコラージュ」というフランス語を思い浮かべたという。
これは、フランスの文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースによる思想で、日曜大工、器用仕事といった意味の言葉から、「あり合わせのもので技術などを作り出す」ことをブリコラージュと表現し、それを作る人が「ブリコルール」というのだそうだ。
「完成しないからこその楽しみ。主体がメーカーではなくユーザー側にあるのがSIGMA fpで、そこに新しさがある」と山木社長は考えるようになったのだという。
「SIGMA fpを続けていくなかで、これまでのキーコンセプトのままで行くのか、それとも発展させるのかというときに、キーコンセプトをさらに切り込んでいこう。そう思えたのは、やはりお客さまの使い方があったから」。山木社長はそう話す。
そのキーコンセプトは、世界最小でポケッタブル、シームレス、スケーラブルというもの。この「コンセプトが鈍る」ことについて、山木社長は車や音楽の「初代と2代目」の例で説明する。特に80年代にインディーズバンドを追っていたという山木社長は、「奇跡的に1枚目のアルバムは歴史的な名盤だが、2枚目は駄作になる例が多かった」と振り返り、その中で最初のスピリットを保ったまま、大局観を持ってスキルもアップして、よりいいアルバムを作って進化するバンドもあった。「SIGMA FP2は、そういったインディーズロックのバンド」と山木社長はアピールする。
そんなSIGMA FP2は「大変使いやすくなっている」と山木社長。センサーには2,450万画素部分積層型CMOSセンサーを採用。スペックだけで見れば、Nikon Z6IIIに搭載されたものと同じセンサーだと思われる。位相差AFとコントラストAFを組み合わせたハイブリッドAFで、測距点はfpのコントラストのみ49点に比べて位相差で1,215点、コントラストで345点と向上。
さらに、AF速度は明るい場所で約35%、暗所では約80%の高速化を達成。実際に触ってみても、AFは十分に高速。SIGMA fp/fp Lで不満のあったAFは大きく改善している。
AFの被写体検出も、人だけでなく犬・猫・鳥をサポート。高速AFとあわせて、動物写真の撮影もできるとアピールする。さらに、センサーは読み出しスピードが高速化したことでローリングシャッター歪みを低減したほか、フリッカー低減機能も強化されており、物理シャッターはないものの、弱点だった部分をいくつも改善してきた。
さらに、背面モニターはチルト式を採用。2軸で上下方向の動きも一定の制限があるが、それでもさまざまなアングルでの撮影をカバーできるようになり、これもユーザーのニーズの高かった改善となる。
山木社長は「最初はチルト式モニターの搭載は反対だった」と明かす。それは、モニターが可動することで本体との一体感がなくなってしまう点、そしてボディサイズが大型化してしまう点が課題で、エンジニアには「大きくしないこと、モニターを収めたときにソリッド感があって一体としての精緻感や質感が損なわれないならいい」という指示を出していたそうだ。結果的に、同社のエンジニアがそれに応えてクリアしてきたことから採用された。
実際、ボディサイズはSIGMA fpの約112.6(W)×69.9(H)×45.3(D)mm、約370gに対して、約112.8×69.9×41.8mm、約376gであり、幅は約0.2mm、重さは約6gの増となったが、厚みは3.5mm減と、ほぼ同等サイズを実現した。「普通の人が見たら見た目は同じに見えるが、中身はまったく違う」と山木社長は話す。
残る課題は、ボディ内手ブレ補正だろう。山木社長は、「正直に言えば搭載できれば一番いいが、どうしてもサイズに影響してしまう。将来の課題として考え続けたい」と話し、SIGMA fpのコンセプトは維持したまま解決策を模索していく考えを示している。
「言い訳っぽくなってしまう」と前置きしつつ、山木社長は「不完全なカメラの良さもあるという、多少自分の中でもそういう言い訳をして開発した部分もある」と話しており、「何を残して何をとるか」という取捨選択の結果だとした。
ほかにも、SIGMA FP2では連写速度が最高約20コマ/秒に進化。fpシリーズから続く同社のカラーモードも健在で、「Warm Gold」や「Powder Blue」、「Teal And Orange」、「FOV Classic Blue」、「Monochrome」などを素早く選んで撮影できる。
動画性能も変わらず、スイッチで切り替えると動画専用のUIになり、さまざまな機材を組み合わせる拡張性も健在。特に、ハイライト側のダイナミックレンジを重視したという。
バッテリー性能も強化し、新開発のバッテリーによってSIGMA fpと比較して最大30%長いバッテリー寿命を実現。静止画で約370枚、動画で約130分の撮影が可能。ほかにもタリーランプの追加、USB Type-C端子を2つ搭載、HDMI端子の追加など、使い勝手を向上させるハードウェアの変更も行われている。また、SIGMA BFに続いて70GBの内蔵ストレージも搭載している。
ハードウェア面での変更に伴い、ハンドグリップ以外の互換性がなくなった点は注意点。電子ビューファインダーEVF-21、LCDビューファインダーLVF-21、ホットシューユニットHU-21などのアクセサリが用意されるが、いずれもSIGMA FP2専用となっている。
半導体をはじめとした大幅な価格上昇もあって、SIGMA FP2は約35万円という価格となった。SIGMA fp Lでも当初は275,000円だったので、大幅に値上がりしている。
山木社長は、こうしたインフレが「非常に苦しい状況になっている」と認める。特にシグマはボリュームが少ないため、同じような部材でも大手メーカーに比べて不利になりがち。そうしたなかで「ある程度の経営判断をした」と山木社長。難しい価格設定だったことを示した。
聞き手を選ぶ尖ったインディーズバンドが進化して、キャッチーなメロディーラインも作れるようになってメジャーデビューを果たした。山木社長の話を聞いてそんなイメージを浮かべたが、そんなSIGMA FP2が、どのように受け入れられるかに注目したい。
あえて収差を残した50mm F1.4
もう1つの新製品としては、「Sigma 50mm F1.4 CL DG | Contemporary」が発表された。Iシリーズの新レンズだが、「CL」という新しいモデル名となっている。
レンズ構成としては伝統的なダブルガウスだが、非球面レンズと特殊低分散ガラスを採用しており、「変形ダブルガウスといった構成」だと山木社長は説明。レンズ構成自体はクラシックだが、最新のガラスも導入することで、「現代において最適な収差をあえて残した」という。
Artシリーズのように徹底的に収差を除去するのではなく、一般的にいやがられる収差は除去しながら、「どこか心地よい、フィルムにあったような柔らかさを残した」としている。コンパクトなボディを実現しながら、古いレンズにありがちなゴーストとフレアも抑えており、「いいとこ取りの描写をしている」レンズだという。
現代的なシャープで「カリカリ」な描写ではないが、ピント面から柔らかく繊細な描写をすると山木社長は説明する。
全群繰り出し式のボディで全長を短くしつつ、F1.4という大口径レンズを動かすためにパワフルなアクチュエータ「RDD(Rotary Direct Drive)」を新開発。これは、マグネットとコイルを鏡筒の形状に合わせて円周上に配置したAFアクチュエータで、最初に山木社長がエンジニアから見せられたときは、「なんじゃこりゃあ」と言ってしまったほどだったそうだ。結果として、「最速のAF」という速度を求めたものではないが、十分実用的で精度の高いAFを実現したという。
ほかに、14枚の絞り羽根を採用し、被写界深度目盛もレンズに設けた。フードは金属製のねじ込み式。発売は来春の予定だが、山木社長は「なるべく早い時期」としており、例年2月下旬に開催されるカメライベント「CP+」には「間に合ったらいい」という回答だった。
山木社長はこのCLシリーズについて、今後の反応次第としつつ、反響によってはシリーズ化も検討するとした。ただし、「一応名前(CL)をつけたので、少しぐらいは拡張したい」としており、定番化するまでは難しそうだ。
なお、シグマはいわゆる「FFF(フルフレームFOVEON)」として、Foveonセンサーをフルサイズ化しようと開発を継続している。現状も、協力会社とともに開発を進めているとのことだが、新たな報告を受ける直前ということで、詳細は明らかにされなかった。





























