今年の1月に50周年を迎え、7月1日に社名を変更したアイオーデータ(旧アイ・オー・データ機器)。Windowsよりも前のPC-98時代からさまざまな周辺機器を世に送り出しており、アイオー製品にお世話になった人も多いはず。そこで、PC&デジタル業界で長年活躍してきたライターさんに、思い出に残っているアイオー製品を挙げてもらい、選んだ理由や気に入っていたポイントなど、当時のエピソードを振り返ってもらいました。さらに、そのアイオー製品を開発した“中の人”にも開発の裏話を聞いてみました。今回は、パソコン用周辺機器に詳しいライターの山口真弘さんです。
集めた動画データをCDやDVDに保存していた時代に重宝した
アイオー50周年とのこと、おめでとうございます。社名も新たに「アイオーデータ」に変わり、略称の「アイオー」に中黒「・」を入れるか入れないか悩まなくて済むようになったのは、記事を書く側にとっても喜ばしいことです。少なからずアイオーと縁あっていまの仕事をしている私としては、近頃は新製品のニュースよりも値上げのリリースが目立つ現状は少々寂しく思います。次の50年の発展にも大いに期待している次第です。
さて、50周年を記念して思い出深いアイオー製品をひとつ紹介してほしいという依頼が編集部から来ました。現在もディスプレイやUSBメモリーはアイオー製品を愛用していますし、過去製品ならLANDISKやガンダムUSBメモリーやMotionPixやら(後略)いろいろ思い浮かぶのですが、実際に所有していた製品から一つ選べと言われた時、筆頭に挙がるのは00年代半ばの製品であるメディアプレーヤー「AVeL Link Player」でしょうか。
この製品の位置づけを、当時を知らない今の読者の方に正確に説明するのは、少しばかり手間がかかります。動画ファイルをテレビで視聴するためのメディアプレーヤーはいまもカテゴリーとしては存在しますが、この製品はDVDドライブを搭載しており、CDやDVD-Rに書き込んだ動画ファイルをテレビで視聴できることが大きな特徴でした。
というのもこの当時は、ハードディスクに保存しきれない動画データはCDやDVDに焼いて保管するのが一般的だったからです。筆者自身、所有していた動画データはそうした形で保管していたため、DVDドライブ搭載の本製品は、買ってすぐ即戦力として大活躍してくれました。コーデックの相性でうまく再生できない動画もありましたが、それらを解決する過程で身についた動画まわりの基礎知識は、いまの仕事にもしっかり役立っていたりもしますので分からないものです。
もっともほどなくして、こうした動画データはNASに保存してネットワーク経由で再生するのが一般的になり、かくいう筆者もデータ保管にNASを導入したことで本製品を使う機会が激減し、手放すまでの数年間は置物状態と化していた記憶があります。筆者が所有していたのは、第2世代にあたる2004年発売の「AVLP2/DVDG-2」ですが、いまサイトを見ると2007年生産終了となっており、わずか3年しか現役でなかったことに驚かされます。
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さすがに筆者の手元に現物は残っていませんが、所有していたAVeL Link Player「AVLP2/DVDG-2」が大きくフィーチャーされている当時(2004年)のアイオーの製品カタログが手元にありました。11g/bの無線LANが「高速」とされているあたりに時代を感じます
そして、そこからさらに20年近くが経った現在、Netflixやプライムビデオなどストリーミングサービスの普及により、動画をファイルで手元に残す習慣そのものが消滅しつつあります。また、データをCDやDVDに焼くための光学ドライブ自体もPCに搭載されないのが当たり前になっており、当時を知らない人にこの製品を説明するには「DVDドライブとは何ぞや」というところから入って「なぜデータをわざわざ録画して保管していたのか」まで触れなくてはいけません。まさに隔世の感です。
そうした周辺事情も含め、この00年代半ばにしか存在し得なかった製品であり、そうしたニーズをうまく見極めて製品をリリースしたという意味で、この時代のアイオーを語る上で欠かせない製品であることは間違いなく、今回取り上げさせていただきました。名前も見た目もそっくりな競合製品を競合メーカーが慌てて投入してきたのも、今となっては反響の大きさを裏付けるエピソードと言えるかもしれません。
今では、テレビでインターネットやネットワークを介してさまざまなコンテンツを楽しむことが当たり前になりましたが、AVeL LinkPlayerを開発していた当時はまだまだ一般的ではなく、低速なインターネット環境を駆使して、コツコツとコンテンツをダウンロードしてパソコンに貯め、パソコンの小さな画面で鑑賞する…という楽しみ方が主流でした。そんな時、「パソコンの中にあるコンテンツを大きなテレビで楽しみたい」という発想が生まれ、3人のモノ好きによって商品開発が始まりました。
開発にはさまざまな苦労がありましたが、そのひとつが多様なファイル形式やハイビジョンコンテンツへの対応です。パソコンであれば、CPU性能さえ高ければ、再生ソフト側で比較的容易に処理できていた部分を、AVeL LinkPlayerではハードウェア単体で処理することが必要で、細やかなチューニングや最適化を幾度となく繰り返しました。
もうひとつ苦労したのが、CD/DVDローディング機構の開発です。AVeL LinkPlayerは、当時アイオーデータとして初めて家庭向けAV機器の開発に挑戦した商品でしたので、社内にノウハウがありませんでした。スムーズなイジェクト機構実現を目指し、試行錯誤の連続だったことを覚えています。
また、本商品は多様なファイル形式への対応がコンセプトであるゆえ、多くの第三者のパテント(特許)を採用する必要がありました。さらに、当社の商品である以上、コンプライアンス準拠は必須です。そこで、各パテントの使用許諾を得るため、海外の複数のパテント権利団体と厳しい折衝や交渉を行ったことも忘れられない苦労のひとつです。
本商品は、複数の国(アメリカ/中国/マレーシア/日本)にまたがるパートナー企業とインターナショナルなチームを結成し、日本の開発メンバーも現地に数週間滞在しながら商品開発や課題解決にあたりました。時差のある複数拠点で開発が同時進行していたため、24時間、常にどこかのチームが動いているような状況での商品開発でした。
そして生み出されたAVeL LinkPlayerシリーズは、あらゆるコンテンツを再生するエポックメイキングな商品であり、現在のアイオーデータのSTBビジネスにつながる礎であるともいえ、開発に携わった者として忘れることのできない商品です。
商品開発は苦しさや辛さの連続でしたが、今振り返えればとても面白く、楽しく、やりがいのある充実した時間だったと思います。商品プランナーや商品開発エンジニアを目指す若い人たちにも、ぜひこのような経験をしてほしいと願っています。






