「あのバトルフィールドが帰ってきた───。」発売を目前に控えたレビューではこの文言が目を引き、マイナビニュースがあちこちで参加した開発者インタビューでもよく耳にしたフレーズです。前作『バトルフィールド2042(以下、BF2042)』ではたしかにどこかに行ってしまいましたが、今作『バトルフィールド6(以下、BF6)』では復権をかなえることができるはず。

  • 『バトルフィールド6』発売直前レビュー。バトルフィールドはたしかに“帰ってくる”

    『バトルフィールド6』発売直前レビュー。バトルフィールドはたしかに“帰ってくる”

その一方で筆者は、今作がある種“守り”に入ったバージョンであるようにも思います。この記事では香港プレミアから先行体験サーバー、Battlefield Labsへの参加を通して筆者が感じたことについて触れようと思います。執筆にあたって、Electronic Artsからレビュー用に入手した製品コードを使用しました。

取材協力:Electronic Arts

もちろん兵科システム搭載。わかりやすくあるがままのバトルフィールド

バトルフィールドが本格的に導入したもののひとつに、各種の動作に専門化したキャラクターを選択できる兵科システムが存在しています。今でこそヒーローシューターの興隆でさらに細分化したものも受け入れられていますが、漠然とした操作キャラクターに明確な方向性を与えたことはプレイ体験に大きな影響を与えました。

今作にももちろん往年の兵科システムを搭載。突撃兵でアサルトライフルを撃ちながら走り回り、工兵で戦車を攻撃して吹き飛ばされ、援護兵でAEDを充電しつつ斥候兵でビーコンを設置していると、旧作を遊んでいるかのように手になじみます。各兵科にはそれぞれ得意武器が設定され、これによってやんわりと各兵科における武器種を制限しようという試みも行われています。

個人的には偵察兵がお気に入り。筆者が好きだったBF1やBFVの狙撃銃は時代柄、性能があまり高くなかったので、久々に強力な狙撃銃を運用できてとても楽しかったです。一方、専用ガジェットとして用意されるビーコンは設置するだけでかんたんに分隊に貢献できましたが、レーザー照射は味方としっかり連携できないと敵車両のフレアを損耗させることにしか役立てられませんでした。

  • 突撃兵、工兵、援護兵、斥候兵の4種類のみ。突撃兵から医療キットが取り上げられ、援護兵に移管されています

    突撃兵、工兵、援護兵、斥候兵の4種類のみ。突撃兵から医療キットが取り上げられ、援護兵に移管されています

  • 多くの武器・カスタマイズが解放されていたBattlefield Labsで体験したサーマルスコープ。本編でアンロックするには気が遠くなるほどがんばる必要があります

    多くの武器・カスタマイズが解放されていたBattlefield Labsで体験したサーマルスコープ。本編でアンロックするには気が遠くなるほどがんばる必要があります

装備武器の自由度については批判的な意見もあったようですが、個人的には兵科システムという枠組みの中で十分問題ないレベルに収まっているかなという印象。工兵で優先的に装備されるSMGやカービン類の取り回しが苦手でも、ガジェットに注力する強力な動機付けになっているとも捉えられます。スレッジハンマーとハシゴは、破壊表現とのシナジーをうまく作り出す妙案として戦場で異彩を放つことに成功していました。ただ、装備品における目新しさはあまりありません。

  • 爆発物を使わなくても建造物の破壊に役立てられて便利

    爆発物を使わなくても建造物の破壊に役立てられて便利

キャンペーンモードのプレイ体験には重大な課題がある

BF3・BF4の頃よりもキャンペーンモードの存在感が小さくなったBF1・BFV、さらにBF2042に比べると、BF6でのキャンペーンモードは再びより魅力的なものになりました。BF6の世界では既存の大勢力であるNATOの結束が揺るぎ、民間軍事会社のパックス・アルマータが台頭。プレイヤーは引継ぎ作業中に急襲された部隊を率いる分隊長に扮し、分隊員との密接なコミュニケーションを通じて戦場に身を投じていくことになります。

  • サイバー攻撃のサーバーの安全を……

    サイバー攻撃のサーバーの安全を……

  • 難易度は極端に上げなくても十分楽しめました

    難易度は極端に上げなくても十分楽しめました

まず大前提として、BF6には英語音声でプレイするためのオプションが用意されていないことが最も不満に感じました。日本語音声の洋画っぽい吹き替えの没入感はお世辞にも高くなく、かといって軍人が使う砕けた英語を見聞きして理解しきるのは無理があります。直接競合するCall of Dutyシリーズにはリリース0日目からある基本的なオプションなので、キャンペーンモードだけでなく、グローバルに英語音声日本語字幕設定を搭載してほしいです。

  • どうしても英語音声でやりたい派。吹き替えはあしざまに言えばアニメみたいで、軍人のようには全然聞こえませんでした

    どうしても英語音声でやりたい派。吹き替えはあしざまに言えばアニメみたいで、軍人のようには全然聞こえませんでした

シナリオやストーリーテリングに関してネタバレを避けつつ感想を表明するとするなら、ややメッセージ性に欠けるかなという印象でした。ここまで凝っててよくできた世界観なのに、オチははっきり言ってちょっと弱いと思います。プレイ体験的にも自動で移動する兵器から攻撃だけに参加するものがなぜか多く、他紙のフレーズを借りるならテーマパークのゴンドラに乗っているみたい。BF2042での硫黄島しかりナラティブの出来はかなりいいのに、それを活かせていないように感じてもどかしかったです。

幅広いプレイヤーが楽しめる強力な最適化。AMD / NVIDIA / Intelを選ばない

今作の推奨動作環境は下記画像の通り。現実的な1080p / 60fpsでもGeForce RTX 3060 Ti、Radeon RX 6700 XT、Intel Arc B580で動作できるとしているほか、ゲーム内にリリース当初からNVIDIA DLSS 4、AMD FSR 3.1.4、Intel XeSS 2を搭載しており、より性能を引き上げてのゲームプレイにも役立てられます。

上の画像にも英語で小さく記載されていますが、Windowsの設定から「ハードウェアアクセラレーションによるGPUスケジューリング」を有効化すると良い模様。これはかんたんに説明するとGPUの複雑な動作をGPU自身で判断させることで、CPUの負荷を低減するという機能。普通は標準で有効になっているはずですが、Windowsの「設定→システム→ディスプレイ→高度なグラフィック設定」から再度有効化することもできます。

日本時間10月11日0時から遊べるように。アップデート1.0.1.0展開へ

バトロワやタクティカルシューターなど気軽に戦いにくいゲームがシーンを席巻していた昨今、バトルフィールドシリーズのプレゼンス低下で気軽に遊べるFPSゲームに飢えていました。BF6のリリースで広いマップを縦横無尽に移動し、激しい最前線での戦闘を楽しめるようになることを心から楽しみにしています。また、Operation Firestormはじめ復刻マップの投入も見逃せません。今後往年の名マップを再び現環境でプレイできるかもしれず、継続的なコンテンツ追加に期待が高まります。

  • まさかあの時遊んだマップにまた来ることになるとは

    まさかあの時遊んだマップにまた来ることになるとは

個人的には、コスメティックアイテムのリリースも積極的に行ってほしいと思っています。BF1やBFVには慎重な考証を基にした魅力的なスキンが多数存在しており、一定の支持を得ていたように思います。武器にジェットコースターが絡みついていたりする競合タイトルが引き合いに出され、硬派であることを強いるユーザーの意見がみられることもありますが、BF6にも思わず買いたくなるスキンの実装に向けて前向きな姿勢を維持してくれればと考えています。

ただ、ゲーム性においてはブレイクスルーの導入以来目新しさがあまりなく、BF6はとにかくBF3・BF4時代の復権をまず第一に志向したようにも思えました。もしバトルフィールドの栄光を“守り切る”ことができたなら、今作をバネにして次期タイトル、あるいはBF6のライブアップデートの中でさらなる“破壊表現”を見せて欲しいところ。

バトルフィールド6はPlayStation 5、Xboxシリーズ、Steamなどで配信予定。日本では10月11日午前0時から遊べるようになります。購入者はすでにプリロードが行えるはずですが、フィードバックをうけてアップデート1.0.1.0を展開。多くの不具合を修正し、性能などにも調整が入っています。