ソニーから最新フラッグシップスマートフォン「Xperia 1 VII」が発表されました。大手3キャリアが取り扱うほか、SIMフリーモデルも6月上旬以降に発売予定で、市場想定価格は205,000円前後からとなっています。短期間ですがひと足早く試用する機会を得ましたので、前モデルからアップデートされた点を中心に、ファーストインプレッションをお届けします。

前モデル「Xperia 1 VI」で4Kディスプレイをやめてカメラアプリを1つに統合するなど、それまでの尖がった路線から、多くの人が使いやすいスマホへと方向転換した「Xperia 1」シリーズ。筆者のイメージでは、こだわりのプロクリエイター向けだったのが、誰もがクリエイティビティを発揮できるスマホへとシフトした感じなのですが、「Xperia 1 VII」も引き続き、ソニーならではの先進技術を数多く搭載しながら、初めて使う人にも使いやすいスマホになっています。

  • Xperia 1 VII 前面
  • Xperia 1 VII 背面

    ソニーの最新フラッグシップモデル「Xperia 1 VII」

まずは外観から。基本的なデザインの方向性は大きく変わっていませんが、前モデルまでとは前背面と側面をつなぐ角の処理や、カメラの出っ張りの形が異なっています。より直線的でフラットかつシンプルになった印象。一方で、滑り止め効果もある背面のきめ細やかな凹凸加工や、細いラインが刻まれた側面などのテクスチャは、そのまま踏襲されています。

  • カメラバンプの形状の比較

    前モデル(奥)と比べると新モデル(手前)ではカメラバンプの形状がソリッドになっている

  • サイドの形状の比較

    フレーム前後のデザインが変更になり、フレーム幅が広くなった(上が新モデル、下が前モデル)

  • カラーバリエーション

    カラーはスレートブラック(中央)、モスグリーン(右)、オーキッドパープル(左)の3色。モスグリーンはグレーに近い色合いで、「Xperia 1 IV」以来久々にパープル系が復活した代わりに、ホワイトシルバー系は用意されない

本体サイズはH162×W74×D8.2mm、重さ197g。前モデルと大きさは変わりませんが、少し重くなっています。SoCはQualcomm Snapdragon 8 Eliteで、キャリアモデルはメモリーが12GB/ストレージが256GBという構成。SIMフリーモデルではこれに加えて、メモリー16GB、ストレージ512GBも選択できます。通信はWi-Fi 7、5GはSub6とミリ波をサポートしています。

「BRAVIA」「α」「WALKMAN」も! ソニーの技術を詰め込む

ディスプレイは6.5インチ、FHD+対応の有機EL。アスペクト比は前モデル同様、縦長過ぎずに見やすい19.5:9で、1~120Hzの可変リフレッシュレートをサポートしています。ソニーのテレビ「BRAVIA」の技術を用いた、色鮮やかで明るいディスプレイは、ピーク輝度がさらに20%向上。前モデルから、周辺環境にあわせて輝度をブーストし、暗部の階調を持ち上げて見やすくする機能が搭載されていますが、「Xperia 1 VII」では前面だけでなく、新たに背面にも照度センサーを搭載。環境にあわせた明るさや色の調整が最適化されています。試用期間中は曇りの日が多かったのですが、日中の屋外でも画面が見づらいと感じることはありませんでした。

  • 底面

    底面にはUSB-type-CとSIMピンなしで取り外しできるnano SIMスロットを配置

  • 右側面

    右側面には音量キーと、指紋認証センサー一体型の電源ボタン、凹凸加工され押しやすいシャッターキーが並ぶ

  • 上面

    上面に3.5mmヘッドフォン端子を備えているのも「Xperia 1」シリーズの特徴だ

  • SIMスロット

    SIMスロットにはnano SIMカードに加えて、背面にmicroSDカードもセットできる。もちろん、eSIMにも対応

  • 専用ケース

    ソニーオリジナルの専用ケースも5000円前後で発売予定。適度な出っ張りで撮影時のグリップ感が増し、さらにスタンドも使用できる

他メーカーが狭額縁を追及する中、ディスプレイ上下にしっかり幅をとってまで大型スピーカー搭載するなど、サウンドにもこだわってきた「Xperia 1」シリーズ。ですが「Powered by WALKMAN」とはっきり明示されたのは、今回が初めてになります。

ソニーによれば、オーディオ集積回路やジャック、抵抗などに「WALKMAN」シリーズで実績のある高音質部品を採用したとのこと。確かに有線ヘッドフォンで聞く音はクリアで厚みと広がりがあり、サウンドにはあまりこだわりがない筆者でも、思わず聞き入ってしまうほど。スピーカーも低~中低音を最大10%向上したとのことで、音楽でも映画でも、立体的でバランスが良く、かつ迫力のある音が楽しめます。今回、Bluetoothの送信パワーも最大2倍になっているそうで、実際に試用中にBluetoothヘッドフォンが途切れることはなかったです。

  • 音楽再生画面

    「WALKMAN」で実績のある高音質部品を採用し、より良い音を追及

4,800万画素の超広角カメラにAIフレーミング機能を搭載

一眼レフカメラ「α」の技術を詰め込んだカメラも進化しています。背面には以下の3つのカメラ、フロントには約1,200万画素 24mm(F2.0)のカメラが搭載されています。

  • 超広角:約4,800万画素 16mm (F2.0)、1/1.56" Exmor RS for mobile sensor
  • 広角:約4,800万画素 24mm/48mm (F1.9)、 1/1.35" Exmor T for mobile sensor
  • 望遠:約1,200万画素 85 -170mm(F2.3~3.5)、1/3.5" Exmor RS for mobile sensor
  • カメラ部

    照度センサーが追加された関係で、「ZEISS」の刻印は広角カメラのサークル内に記載されている

超広角、広角、望遠という構成やカバーする焦点距離などは変わっていませんが、超広角カメラが前モデルの1,200万画素から4,800万画素になりました。ゆがみの少ないレンズが採用されているほか、センサーサイズも前モデル比で2.1倍大きくなっています。おかげで広角カメラだけでなく、超広角カメラでも高精細できれいな夜景撮影が楽しめます。

  • 超広角カメラ 0.7倍(16mm)の撮影例

    超広角カメラ 0.7倍(16mm)の撮影例

  • 広角カメラ 等倍(24mm)の撮影例

    広角カメラ 等倍(24mm)の撮影例

  • 超広角カメラ 0.7倍(16mm)の夜景撮影例

    超広角カメラ 0.7倍(16mm)の夜景撮影例

  • 広角カメラ 等倍(24mm)の夜景撮影例

    広角カメラ 等倍(24mm)の夜景撮影例

  • 広角カメラ 2倍(48mm)の夜景撮影例

    広角カメラ 2倍(48mm)の夜景撮影例

望遠撮影は前モデル同様、3.5倍(85mm)や7.1倍(170mm)から、デジタルズームによる21.3倍(510mm)までをカバーしています。

  • 広角カメラ 等倍(24mm)の撮影例

    広角カメラ 等倍(24mm)の撮影例

  • 望遠カメラ 3.5倍(85mm)の撮影例

    望遠カメラ 3.5倍(85mm)の撮影例

  • 望遠カメラ 7.1倍(170mm)の撮影例

    望遠カメラ 7.1倍(170mm)の撮影例

  • 望遠カメラ×デジタルズーム 21.3倍(510mm)の撮影例

    望遠カメラ×デジタルズーム 21.3倍(510mm)の撮影例

前モデルで話題を集めたテレマクロ撮影のほか、被写体に近づくと自動で切り替わる、超広角カメラを使ったマクロ撮影もいい感じに撮れます。シャッターボタンでカメラを起動、半押しで高速オートフォーカス(人物やペットのリアルタイム瞳AFも!)という操作性はシンプル。それでいて、高速連写やこだわりの設定が楽しめるプロモードも充実しています。筆者のように簡単かつおまかせで撮影したい人から、とことんこだわりたい人まで、写真や動画の撮影がとにかく楽しいです。

  • テレマクロの撮影例

    テレマクロで撮影。ピントは自分で調整する

  • 超広角カメラ マクロの撮影例

    超広角カメラのマクロで撮影。初期設定では、被写体に近づくと自動で切り替わる

  • ぼけモードの撮影例

    ぼけモードで撮影。ぼけ味を簡単に調整できる

  • 花の撮影シーン

    テレマクロ/マクロ/様々な近接撮影が楽しめる

前モデルから採用されたAI姿勢推定技術のほかに、今回、AIを用いた新しい撮影モードが2つ追加されています。撮影に集中するあまり気づくと画面ばかり見ていて、せっかくのシーンをちゃんと自分の目で見ていなかったということがありますが、追加されたモードはいずれも、撮りながらちゃんと見るのをサポートするものです。

「AIカメラワーク」は、被写体を常に中央に捉えられるようにサポートする機能。少しくらい画面から目を離しても、AIトラッキングと手振れ補正でブレずに撮影ができ、被写体がフレームから大きく外れると、フレーミングをサポートする案内が表示されます。

  • 「AIカメラワーク」で撮影中の画面

    「AIカメラワーク」で撮影中の画面。カメラをどう動かせばいいかの案内が表示されるので、チラ見しながら撮影できる

「オートフレーミング」ではさらに、AIが被写体を自動的にフレーミングしてくれます。そして構えた画角どおりの引きの映像と、オートフレーミングによる寄りの映像を同時に撮影してくれるというもの。フレーミングを縦横どちらの画角で行うかや、サイズも調整できます。

  • 「オートフレーミング」で撮影中の画面

    「オートフレーミング」で撮影中の画面。自動で被写体をフレーミング&クローズアップした撮影ができる

撮る、見る、聞く。エンタメをフルに楽しみたい人向け

AIはカメラ機能だけでなく、ディスプレイの画質調整技術や、高音質化技術「DSEE Ultimate」などにも採用されています。ソニーでは今後、これら独自のAI機能の総称として「Xperia Intelligence」という言葉を使っていくようです。ほかにGeminiやかこって検索、消しゴムマジック、編集マジックといったAndroidのAI機能ももちろん利用できます。

カメラを長時間使用すると早く電池がなくなりがちですが、本機は5,000mAhのバッテリーを搭載。写真を撮りまくった翌日もさらにまる1日、充電せずにそのまま使用できました。また、撮影時に極端に熱くなるようなこともなかったです。撮影中にはにわか雨も降りましたが、IP68相当の防塵/防水性能を備えているので安心して続行できました。なお、電池は「いたわり充電」に対応し、4年使用後も80%以上の容量を維持するとのこと。このほか、4回のOSバージョンアップと6年のセキュリティアップデートもサポートされています。

今回「BRAVIA」「α」だけでなく「WALKMAN」がアピールされるようになったことで、さらにソニー総力のスマートフォンという感が増した「Xperia 1 VII」。もちろんゲーム機能も充実しているので、美しい映像、気持ちの良いサウンド、ストレスのない操作性でエンターテインメントを思う存分楽しみたい人にとっては、最良の選択肢のひとつでしょう。新たに追加された、見ながら撮れる撮影モードは、子供の成長を記憶にも記録にも残したい親には特に、歓迎される機能だと思います。個人的には超広角カメラが強化されたので、いっそ望遠カメラも高画素に……と思わなくもないのですが、それは次回に期待したいと思います。