アップルによるクラシック専門の音楽ストリーミングサービス「Apple Music Classical」が、2024年1月24日に日本上陸を果たしてから1周年を迎えました。Apple Music Classicalの統括責任者である米Apple本社のJonathan Gruber(ジョナサン・グルーバー)氏が、日本の熱心なクラシック音楽愛好家の情熱をどのように受けとめているのか、インタビューしました。
クラシック音楽の検索・再生が日本語で快適に楽しめる
Apple Musicは、月額1,080円から楽しめるアップルによる音楽配信サービスです。2025年2月時点で1億曲以上を“聴き放題”で提供しています。
Apple Music Classicalは、Apple Musicのカタログに揃う500万以上のクラシック音楽のタイトルをピックアップしたストリーミングサービスです。iPhoneとiPad、Android OS向けにはApple Musicとは別のアプリで提供されていますが、Apple Musicのサブスクリプションに登録すると追加費用の負担なく利用できます。
その特徴は、クラシック音楽の楽曲が充実しているだけでなく、楽曲の「タイトル」が複雑だったり、「指揮者」や「演奏者」、作品が「録音された時代」など付随する膨大なメタデータを持つクラシックの楽曲を素速く、的確に見つけて再生できるところにもあります。
アップルは、2023年に欧米でApple Music Classicalを先行リリースしたのちに、日本のクラシック音楽のファンがサービスを快適に楽しめるように、データを翻訳するだけでなく、日本語で快適な利用を実現するため入念な最適化を図りました。
その結果、日本のApple Music Classicalのユーザーから「とても良い反響を得ている」と、グルーバー氏はサービスのローンチから1年間の軌跡を振り返ります。
「Apple Music Classicalには『ストーリー・オブ・クラシカル』というオリジナルの音声ガイドコンテンツがあります。秋には、指揮者の佐渡裕氏に尽力をいただいて、ストーリー・オブ・クラシカルの日本語版コンテンツを始めることができました。音楽コンテンツの詳しい解説をテキストで読めるデジタルブックレットもかなりの数が出揃っています。Apple Music Classicalはデジタルの音楽配信サービスですが、フィジカルコンテンツのような感覚で楽しめると好評です」
グルーバー氏はさらに「Apple Music Classical TOP 100」の週間チャートが公開されたことも、「世界中のアーティストと作品が国境を越えてクラシック音楽ファンに伝わる良い機会」になった大事なできごとであると強調しています。
空間オーディオによるリスニングとも好相性
Appleのドルビーアトモスによる空間オーディオが誕生してから、間もなく4年を迎えます。Apple Musicを利用していると、最近は特にクラシック系の空間オーディオに対応する新作のリリースが相次いでいるように見えます。2025年2月時点では、何千ものアルバムが空間オーディオで聴けます。
グルーバー氏も、クラシックが特に空間オーディオと相性の良い音楽ジャンルのひとつであることを認めています。
「大編成のオーケストラによる交響曲を空間オーディオで聴くと、指揮者や演奏者がまるで目の前で演奏しているような臨場感だったり、自分が大きなコンサートホールの観客席で聴いているような豊かな音場が味わえるからです。楽器の音色、繊細な声の表情のひとつひとつを確かめて愛しむような空間オーディオによる音楽リスニング体験は、特にクラシックのようにアコースティックな音楽との相性が良いと思います」
日本が誇る世界的なピアニスト、辻井伸行氏による『ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調』も、Apple Music Classicalでは空間オーディオに対応するアルバムとしてリリースされています。また、Apple Music Classicalには空間オーディオに対応する新しい楽曲が毎週追加されています。
Apple Music Classicalが「クラシック音楽の検索性」にも優れるサービスであり、意中の楽曲をすぐに見つけられることが、ユーザーである音楽ファンと演奏家の双方にとても好評であり、クラシック音楽のリスニングシーンに大きな変化をもたらしているようです。
「言うまでもなく、Apple Music Classicalが誕生する以前から音楽は存在していました。クラシック音楽には長い歴史があり、今も常に新しい作品がリリースされています。ただ、それらを見つけることができなければ意味がありません。そして、自分がどんな音楽を聴いているのかが分からないと、興味を深めることも困難です。Apple Music Classicalは『クラシック音楽の可視性』を高めることを通して、音楽体験の品質向上を図ることに重きを置いています。ここにはクラシック音楽の歴史の中で、録音されてきた多くの作品が揃っています。ユーザーが探している音楽をすぐに見つけて、いつでも聴きたい時に楽しめる体験がとても革新的である、という反響をいただいています」
ファンの強いこだわりに応える音楽サービスでありたい
2025年2月現在、Apple Music Classicalは英語、日本語のほか、イタリア語/オランダ語/スペイン語/ドイツ語/フランス語/ポルトガル語/簡体字中国語/繁体字中国語/韓国語に対応しており、今後も世界の各国と地域にサービスを拡大しようとしています。
グルーバー氏はApple Music Classicalの提供を開始してから、特に日本のユーザーの「クオリティ」に対するこだわりの強さが3つの点で強く感じられると話しています。
「クラシック音楽への愛が強いこと、リスニング体験を高める機能への期待が高いことはすでに触れた通りですが、3点目である『音質へのこだわり』については、特に日本のユーザーがとても高いレベルにあると感じています。みなさんから寄せられる声と期待に応えることに、私たちはとても力を入れています」
Apple Music Classicalのカタログに並ぶ作品については、毎週新たにリリースされる世界的なアーティストからローカルに活躍するアーティストの作品まで、すべてをAppleのキュレーターが聴いて作品を厳選しています。グルーバー氏は「ユーザーのみなさんのこだわりに応えられる質の高い作品を届けるためには、エキスパートが手間をかけて厳選することが欠かせない」と強調しています。
空間オーディオだけでなく、ステレオ再生も最高の音質で楽しみたいというファンのために最大192kHz/24bitのハイレゾロスレス、44.1kHz/16bitで提供するロスレスの対応楽曲もApple Music Classicalのカタログに続々と追加されています。
「クラシック音楽の魅力を世界のユーザーひとり一人に届けるため、Apple Music Classicalを最高のプラットフォームにしたいと、いつも考えています。私たちは終わりのない旅路を歩み始めたばかりです」
グルーバー氏は、今後もApple Musicのカタログにクラシック音楽の作品だけでなく、「ストーリー・オブ・クラシカル」の音声ガイドコンテンツやデジタルブックレットの読み物も拡充すると話しています。クラシック音楽に特化したユニークな音楽配信サービスの今後がますます楽しみです。