モトローラ・モビリティ・ジャパンは7月3日、新型スマートフォン「motorola edge 50 pro」「motorola edge 50s pro」を発表した。edge 50 proはオープンマーケット向けのSIMフリーモデル、edge 50s proはソフトバンク向けで、いずれも7月12日に発売される。

記者発表会には、2023年12月に同社の代表取締役社長に就任した仲田正一氏が登壇し、事業の近況や展望についても語られた。

  • 7月3日、モトローラの新型スマートフォンが発表された。写真はソフトバンク版の「motorola edge 50s pro」

    7月3日、モトローラの新型スマートフォンが発表された。写真はソフトバンク版の「motorola edge 50s pro」

国内での出荷台数は前年比+135%、SIMフリー市場で3位に躍進

直近のスマートフォンの販売状況としては、グローバル・日本国内ともに好調のようだ。

グローバルでは、アジア太平洋地域で出荷台数が前年比+100%と倍増、欧州・中東・アフリカでも前年比+45%と大きく伸びている。北米でもマーケットシェア3位のポジションを維持しつつ出荷台数を前年比12%上乗せした。中南米でも以前から高いシェアを獲得しており、2位となっている。

  • 世界での販売状況

    世界での販売状況

  • 日本国内での2023年度の状況

    日本国内での2023年度の状況

そして、日本市場での急成長ぶりには特に目を見張るところだ。2023年度の出荷台数は前年比+135%(35%増ではなく135%増)となり、SIMフリー市場(オープンマーケット)におけるシェアはある調査機関のデータでは3位にまで浮上した。「motorola」というキーワードでの検索ボリュームも前年比+55%となっており、注目度も高まっている様子がうかがえる。

昨年度の成長要因について、仲田社長は「スタンダードな機種から折りたたみのrazrまで、さまざまなレンジでお客様のニーズをカバーできる製品を提供できたのが大きいのではないか。ソフトバンクでも2ブランド(ソフトバンクとワイモバイル)でたくさん販売していただいた」とコメントした。

2023年モデルのラインナップを改めて見直してみると、オープンマーケット向けモデルは幅広い価格帯・スペックの製品をそろえた充実のラインナップで間口を広げている一方、キャリア向けは花形の折りたたみ(フリップ)やキャリアの販売戦略上きわめて重要な2万円クラスの廉価機という要所での採用を勝ち取っている。この両輪での取り組みが功を奏し、シェア上位に食い込めたのだろう。

  • モトローラ・モビリティ・ジャパン 代表取締役社長 仲田正一氏

    モトローラ・モビリティ・ジャパン 代表取締役社長 仲田正一氏

今回発表されたedge 50 proは基本性能からすればミッドハイだが、急速充電やAI機能など先進性を持たせた機種でもあり、エッジディスプレイによる薄型設計とヴィーガンレザー仕上げの組み合わせによるデザイン性の高さも含め、プレミアム路線の機種となる。

SIMフリー版の直販価格は79,800円だが、実際にはもっとお得感のある買い方ができる。直近のmoto gファミリーやrazrシリーズでの成功例を踏襲し、ソフトバンクとインターネットイニシアティブ(IIJ)の2社をパートナーとして拡販する。

  • ソフトバンクでは「新トクするサポート(バリュー)」による“実質12円”での販売を予定

    ソフトバンクでは「新トクするサポート(バリュー)」による“実質12円”での販売を予定

ソフトバンク版のedge 50s proも機種代金は85,584円と大きく変わらないのだが、「新トクするサポート(バリュー)」という割引プログラムを利用できる。簡単に言えば「48回払いで買って、1年後に端末を返却すれば残りの支払いが免除される」という最近の大手キャリアではよくあるスタイルの割引なのだが、1~12カ月目は1円/月、13~48カ月目は2,377円/月と支払いが均等ではないのがポイント。13カ月目で返却すれば実質負担額は12円で済むというロジックだ。あくまで一旦85,584円のローンを組む事実は忘れてはいけないが、これなら試しに使ってみようと思う人も多いのではないだろうか。

また、近年の日本国内におけるモトローラのキャリア向け製品は、ソフトバンク向けの折りたたみ端末とワイモバイル向けの廉価端末に絞られていたが、edge 50s proで久しぶりにメインストリームの機種をメインブランド向けに投入できたという見方もでき、好調な販売実績をさらに後押しする可能性がある。

ソフトバンクとしても、優れた急速充電性能を持つ機種をピックアップしてアピールする「神ジューデン」の第4弾と位置付けており、プッシュが期待できそうだ。

  • edge 50 pro/edge 50s proは125Wの急速充電に対応。「神ジューデン」はあくまでソフトバンクによるブランディングなのでSIMフリー版では名乗らないが、充電性能は同様

    edge 50 pro/edge 50s proは125Wの急速充電に対応。「神ジューデン」はあくまでソフトバンクによるブランディングなのでSIMフリー版では名乗らないが、充電性能は同様

MVNOでは、昨年のedge 40やrazr 40 ultraに続き、IIJmioが独占的に扱う。IIJmioにおけるedge 50 proの通常価格は69,800円ということでそもそも直販サイトや家電量販店などでの価格より1万円安いのだが、MNPで回線契約をすればさらに割引が効いて49,800円となる(9月2日まで)。

IIJの辻氏は「IIJmioではお客様がワクワクするような品揃えを目標にしており、モトローラとの協業も8年目を迎え、このモデルで45機種目となる。さまざまなSIMフリー端末を世に出し続けていただき感謝している。自由でシンプルにお買い求めいただけるSIMフリースマホの市場をより一層ともに盛り上げていきたい」とメッセージを寄せた。

  • SIMフリー版のMVNOでの取り扱いはIIJmioが独占。MNP特価で一括49,800円からと、1年以上使いたい人やシンプルな買い方を望む人ならこちらも間違いなく魅力的だ

    SIMフリー版のMVNOでの取り扱いはIIJmioが独占。MNP特価で一括49,800円からと、1年以上使いたい人やシンプルな買い方を望む人ならこちらも間違いなく魅力的だ

新機種は125W急速充電に対応、PANTONEとのタッグも強化

プレゼンテーションの後半では、仲田社長に代わり同社テクニカルアカウントマネージャーの見潮充氏が登壇し、新機種の詳細が解説された。

  • モトローラ・モビリティ・ジャパン テクニカルアカウントマネージャー 見潮充氏

    モトローラ・モビリティ・ジャパン テクニカルアカウントマネージャー 見潮充氏

まず、やはり最大のアピールポイントは急速充電だ。125WのTurboPower充電器が付属し、1%から100%まで約19分で充電できる。発表会では新製品説明のパートが20分ほど取られていたのだが、実際にバッテリー残量1%の端末に充電ケーブルを繋いでから話し始め、発表を終えるまでに充電完了するというデモンストレーションが披露された。

  • edge 50 proの主なセールスポイントは「カメラ」「急速充電」「ディスプレイ」「デザイン」の4点

    edge 50 proの主なセールスポイントは「カメラ」「急速充電」「ディスプレイ」「デザイン」の4点

カメラも強化されたポイントで、メインの5,000万画素カメラは光学式手ブレ補正(OIS)、PDAF、レーザーAFに対応。このほかに1,300万画素の超広角カメラ(マクロ兼用)と1,000万画素の3倍望遠カメラを備える。インカメラも5,000万画素でオートフォーカスに対応する。

ハードの性能向上だけでなく「moto ai」と呼ばれるオンデバイス処理のAI機能が導入されたことで、マルチ撮影による合成処理で白飛びや手ブレの改善、デジタルズームの画質向上を実現した。動画撮影時にズームをすると音声もそちらにフォーカスするという「AIオーディオズーム」や通常のカメラアプリ上で撮影してスムーズに書類を電子化できる「ドキュメントスキャン」、「ティルトシフトモード」「長時間露光モード」といった機能も加わる。

  • カメラはハードウェアだけでなくソフトウェアの改良も大きい。「moto ai」の導入に加え、色のプロであるPANTONEがチューニングに協力した

    カメラはハードウェアだけでなくソフトウェアの改良も大きい。「moto ai」の導入に加え、色のプロであるPANTONEがチューニングに協力した

また、グローバルでの戦略としては、PANTONEやBOSEなど製品の価値を高める外部ブランドとのパートナーシップを強化する方針らしく、本機種にもその取り組みの成果が表れている。edge 40 fusionなどでは外装色にPANTONEカラーを採用するといった関係だったが、edge 50 proでは中身にもPANTONEのノウハウが注がれている。具体的にはカメラのカラーチューニングに関わっているほか、ディスプレイもPANTONEの基準を用いて肌色などの再現性を高めた。

moto aiという名称はカメラ機能に限らず独自のAI機能の総称として使っていく。他の機能の例としては、服の柄などをAIが分析して壁紙を生成する「Style Sync」などがある。

  • moto aiはカメラだけでなく、独自のAI機能の総称。「Style Sync」もそのひとつで、服の模様がそのまま壁紙になるのではなくAIによる再解釈が加わることで予想できない結果が出てなかなか面白い

    moto aiはカメラだけでなく、独自のAI機能の総称。「Style Sync」もそのひとつで、服の模様がそのまま壁紙になるのではなくAIによる再解釈が加わることで予想できない結果が出てなかなか面白い

  • デジタルデトックス向きの「Moto Unplugged」、子どもにスマホを貸して遊ばせても安心な「Famili Space」などの機能が搭載される

    デジタルデトックス向きの「Moto Unplugged」、子どもにスマホを貸して遊ばせても安心な「Famili Space」などの機能が搭載される

AI関連以外でも、興味深い独自機能は多い。「Moto Unplugged」はいわゆるデジタルデトックスができるモードで、わずらわしい通知をシャットアウトするだけでなくホーム画面まで専用のものに切り替わり、あらかじめ選択したアプリ以外は通知どころか開くこともできなくなる。

「Smart Connect」はPCとの連携機能で、スマートフォンに入っているアプリをPC上でウィンドウとして表示・操作できる……と、ここまではよくある機能のように思えたが、デモンストレーションを見てみたらPCへの画面共有がミラーリングではなく、出力中にスマホ側で別のことができる作りになっているのは便利そうだと感心した。

edge 50 proの細かいスペックなどについてはニュース記事もあわせてご参照いただきたい。

  • スマホの画面をPCに出せる、というのは割とよく聞く話だが、「Smart Connect」の実演を見て、PCからの操作中にスマホが拘束されない(別のことができる)など、同種の機能と比べても使い勝手が良さそうだと感じた

    スマホの画面をPCに出せる、というのは割とよく聞く話だが、「Smart Connect」の実演を見て、PCからの操作中にスマホが拘束されない(別のことができる)など、同種の機能と比べても使い勝手が良さそうだと感じた

  • edge 50 proのスペックサマリー

    edge 50 proのスペックサマリー

日本向けはFeliCa対応がマスト?moto eファミリーはもう出さない?

日本市場向け製品のロードマップを見ると、折りたたみ型のフラッグシップモデルであるrazrシリーズ、先進的な機能・性能やデザインにこだわったプレミアムモデルのedgeシリーズ、普及モデルのmoto gファミリーが投入されている。もう少し細かく見ればmoto gファミリーの中でも上下に幅があり、moto g64 5Gよりもう少し低い価格帯には、FeliCa非対応など機能を絞ったmoto g24がある。

  • 日本市場向け製品のロードマップ

    日本市場向け製品のロードマップ

  • razr/edge/moto gの3カテゴリーで、moto eは基本的には投入しない方向

    razr/edge/moto gの3カテゴリーで、moto eは基本的には投入しない方向

グローバルの製品ラインナップではmoto gファミリーの下にエントリーモデルのmoto eファミリーがあり、日本でも以前いくつかの機種が発売されていた。今回の説明ではrazr/edge/moto gの3カテゴリーとされていたのでこの点について聞いてみると、「moto eは新興国向けという理解。チャンスがあれば検討するが、基本的には3カテゴリーで展開していく」(仲田社長)とのこと。

実際にeシリーズが国内投入されていた2020年頃のラインナップを思い出すと、ローエンド~ミドルに集中して年間7機種も投入されるような複雑で選びにくい状況でもあった。現在は各機種の違いやターゲットが明確で、選びやすく整理されたラインナップになったという印象を受ける。

  • 6月28日に発売されたミドルレンジの新機種「moto g64 5G」

    6月28日に発売されたミドルレンジの新機種「moto g64 5G」

  • ワイモバイル版の「moto g64y 5G」には、SIMフリー版にはないバニラクリームというカラーがある。この色だけ上位機種に似たヴィーガンレザーを採用している

    ワイモバイル版の「moto g64y 5G」には、SIMフリー版にはないバニラクリームというカラーがある。この色だけ上位機種に似たヴィーガンレザーを採用している

  • edge 50s proでも、バニラクリームはソフトバンク限定色となる

    edge 50s proでも、バニラクリームはソフトバンク限定色となる

また、2022年のmoto g52j 5Gを皮切りに、FeliCa対応や防水性能などローカライズに力を入れるようになったのも大きな変化だ。最近ではmoto gファミリーだけでなく、edge 40/edge 40 fusion/razr 40などもFeliCaに対応した。この点については「日本ではFeliCaと防水は必須と考えている」(仲田社長)と基本方針を示したうえで、日本独自仕様の開発期間がかかることで海外発売から国内導入までのタイムラグが生じるデメリットについては「対応を繰り返していくことで時間差を短くしていける可能性はある。そこを踏まえてもFeliCaはやはり提供していきたい」と強調した。

今後の製品といえば、6月25日に米国で発表された折りたたみスマートフォンの次期モデル「razr 50」シリーズが気になるところ(※関連記事)。質疑応答で日本市場での成長について問われた際、仲田社長からは「(+135%の2023年度に続き)今年度のQ1(4~6月)も好調。edge 50 pro/edge 50s proでもまた大きな伸びを期待している。razrシリーズも今後投入を予定している」とコメントされており、今年度もrazrシリーズの継続投入は期待できそうだ。

  • razr 50 ultra(海外版)

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  • razr 50(海外版)

    razr 50(海外版)