米NVIDIAは3月18日(現地時間)、台湾TSMCと米Synopsysとのコラボレーションとして、NVIDIAの計算リソグラフィプットフォーム「cuLitho」の採用例について発表した。将来的にはNVIDIA Blackwell GPUの製造にまで適用するとしている。
半導体の開発にあたっては、シリコンウェハに光を照射するためのマスクを設計する必要がある。この設計には極めて高度な計算が必要で、CPUでの計算に年間数約億時間が費やされてきたという。半導体メーカーはこの高負荷なワークロードのために大規模なデータセンターを保有する必要があり、運用コストも大きなものになっていた。
そこで、NVIDIAはCPUではなく同社GPU上でこの処理を行えるように「NVIDIA cuLitho」を開発。Synopsisの光近接効果補正ソフトウェア「Proteus」をcuLitho上で動作させることで、40,000個のCPUをわずか350台のNVIDIA H100で置き換えられるほど高速化できたという。
Proteusを活用することで、光の近接補正や補正のためのモデル構築、ICレイアウトパターンにおける近接効果の解析において、従来の方法より卓越した精度・効率・速度を実現。さらに、NVIDIAはcuLithoに生成AI機能まで統合した。これによって照射する光の回折まで考慮したマスクをすばやく作成できるようになり、これを従来の物理的に厳密な方法で検証することで、半導体製造における光近接効果補正プロセス全体が2倍も高速化できるという。
SynopsisのCEOであるSassine Ghazi氏は発表に寄せて、「先端ノードへの移行に伴い、コンピュテーショナル・リソグラフィは劇的に複雑化し、計算コストも増大しています。TSMCおよびNVIDIAとの協力は、加速されたコンピューティングの力によってターンアラウンドタイムを桁違いに短縮する先進技術を開拓し、オングストロームレベルのスケーリングを可能にする上で極めて重要です」と述べている。