今年(2023年)もMicrosoftの定例イベント「Ignite 2023」が開催された。筆者も基調講演はリアルタイム視聴したが、AI、AI、AIとあらゆるソリューションにAI機能を組み込んでおり、いささか食傷気味である。
コンシューマー向けセッションは皆無に近かったが、それでもWindows周辺にはひとつ変化があった。Windows 10用Copilotだ。公式ブログによれば、Windows Insider Program参加者向けのWindows 10 22H2 ビルド19045.3754以降、Windows 10にCopilot in Windowsを搭載するという。
Microsoftとしては、機能として確立したAIを多くのソリューションに搭載するのは当然のこと。そこにWindows 10も含めたのだろう。Copilot in Windowsの有用性は意見が分かれるところだが、Copilot(旧:Bing Chat Enterprise)のプレビュー版を使った限りでは、文章中で論説に欠ける部分を指摘し、記憶の片隅にあった情報ソースを適切に提示する意味で執筆に役立っていた。OpenAIのGPT-4モデルを採用するCopilotは今後も賢くなるだろう。
ただ、Copilot in Windowsはおそらく無償だが、CopilotはMicrosoft 365 E3/E5/Business Standard/Business Premiumのサブスクリプションが必要。将来的(一般提供開始時)には月5ドルの費用が発生する(公式ブログ)。日本円で約748円(為替レート149.61円)をどのように判断するかはさておき、疑問を呈したプロンプトやコピー&ペーストした原稿がテナント内で完結するのは大きい。
話をCopilot in Windowsに戻すと、Windowsのタスクバーやサイドバーから直接操作できるだけに、Copilot in Windowsの利用は今後も拡大すると思われる。とはいえ、米国時間2025年10月14日にサポートを終えるWindows 10に機能実装することには首をかしげてしまう。
この記事を執筆している時点で2025年10月14日まで2年弱。筆者もいまだにWindows 11のシステム要件を満たさないWindows 10 PCを利用しているので、今後の運用に悩んでいるところだ。あと2年で寿命を終えるOSに新しくAI機能を実装するというは、単に利用者数の増加を望む短慮な判断ではないだろうか。
Windows 10をメインOSとして使っているユーザーは、Copilot(旧:Bing Chat)にアクセスして操作する手間を省略できるので有用だが、Microsoftが長年運用してきた「メインストリームと延長サポート」という概念は崩れる。いや、Windows NTの時代も同じこと(Windows NT 4.0におけるDirectXのサポート)があったので今さらか。
サポートページによると、Windows 10のサポート終了日は今後も変更されない(はずだ)。いまでもWindows 10のシェアは高く、PCゲームを販売するSteamによれば約60%を占めている。筆者としても、Windows 10の安定性や、迷走気味のWindows 11を日々利用していると、当然の結果と思う。
Windows 11が登場して早くも2年。企業によるWindows 7からWindows 10の移行も時間を要したが、MicrosoftもWindows 10の主流が続くと見ているのかもしれない。