また、穴が開かない程度の低いエネルギーのレーザが照射された領域を、高性能電子顕微鏡を用いて観察したところ、グラフェン表面の汚染物が除去されていることが判明。さらに倍率を高めて原子1つ1つを分解して観察を行ったところ、グラフェンに直径10nm以下の細孔や、炭素原子数個が欠損した原子レベルの欠陥が多数形成されていることを発見したとする。加えて、レーザのエネルギーや照射回数を増やすと、それに比例して細孔・欠陥の密度も増加する傾向が得られ、細孔・欠陥の形成もレーザを使って制御できることが確認されたという。
研究チームによると、今後グラフェン素材を自在に加工・整形する手法を確立することにより、最先端のグラフェンデバイスを効率的に作製し、社会実装へとつなげることができると考えられるという。また、グラフェンにナノスケールの細孔や原子レベルの欠陥を形成することで、電気伝導性のほか、スピンやバレーといった量子レベルの特性を制御できることが知られている。そのため、グラフェンに自在に細孔・欠陥を形成できれば、量子科学分野の基礎研究を大いに加速させられる可能性もあるとする。
さらに、グラフェン上の細孔・欠陥は高い化学修飾性を示すため、超高感度の生体センサにも応用が期待できるという。また、今回の研究で見出されたレーザ照射による汚染物除去の効果を応用することで、高純度なグラフェンを非破壊かつ汚染することなく洗浄する新手法の実現も期待されるとしている。