Raptor Lakeの速報版テストからだいぶ時間がたってしまい申し訳ないが、完全版として”Deep Dive”をお届けする。今回はRaptor Lakeだけでなく、Zen 4の分析も一緒に行う。前回データを取らなかったCore i5-13600Kに加え、Ryzen 5 7600X/Ryzen 9 7950Xとの比較、それに加えてRMMAを利用してのZen 3/Zen 4/Alder Lake/Raptor Lakeのパイプライン性能比較まで加えた完成版となる。今回はグラフ数もかなり多いので、目次ページなど利用して読んでいただければと思う。

  • 「Raptor Lake」と「Zen 4」を深く検証してみる

    「Raptor Lake」と「Zen 4」を深く検証してみる

評価機材は表1に示す通り。Alder Lake/Raptor Lakeの方は速報版と同じで、そこにCore i5-12600K/Core i5-13600Kを追加しただけである。一方Ryzenの方は、私物のASUS TUF Gaming X670E-PLUSを利用した。ちなみにCore i5-13600Kであるが、問題なくWindowsからも認識されている(Photo01,02)。

  • Photo01

  • Photo02

■表1
CPU ・Core i5-12600K
・Core i9-12900K
・Core i5-13600K
・Core i9-13900K
・Ryzen 5 7600X
・Ryzen 9 7950X
M/B ASUS ROG Maximus Z790 Hero ASUS TUF Gaming X670E-PLUS
BIOS Version 0219 Version 0809
Memory Corsair Dominator Platinum RGB 16GB×2
DDR5-4800 CL42/DDR5-5600 CL40
Kingston Fury Beast DDR5 16GB×2
DDR5-5200 CL42
Video NVIDIA GeForce RTX 3080 Ti Founder Edition
GeForce Driver 517.48 DCH WHQL
Storage Seagate FireCuda 520 512GB(M.2/PCIe 4.0 x4) (Boot)
WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data)
OS Windows 11 Pro 日本語版 22H2 Build 22621.674

なおグラフ中の表記は

i5-12600K:Core i5-12600K
i9-12900K:Core i9-12900K
i5-13600K:Core i5-13600K
i9-13900K:Core i9-13900K
R5 7600X :Ryzen 5 7600X
R9 7950X :Ryzen 9 7950X

としている。

解像度表記も何時もの通り

2K :1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K :3200×1800pixel
4K :3840×2160pixel

とさせていただく。

また新規のベンチマーク以外については設定方法などは速報版と同じなので割愛させていただく。

◆CineBench R23(グラフ1)

CineBench R23
Maxon
https://www.maxon.net/ja/cinebench

  • Raptor Lake & Zen 4 Deep Dive - 現役2大アーキテクチャの深層を徹底分析する

    グラフ1

Single ThreadではやはりRaptor Lakeに分がある。ただRyzen 9 7950Xの底力も大したもので、Multi ThreadではほぼCore i9-13900Kと同等レベルなのは素直に大したものである。またSingle ThreadにしてもRyzen 9 7950Xも1943と決して低くはない。

詳しい話は後述するが、Alder Lake/Raptor LakeとZen 4は、IPCという観点ではほぼ同等であり、後はもうどれだけの電力を突っ込んでどこまで動作周波数を引き上げるかであり、Intelの方がやや余分に電力を突っ込んでいる結果がこれ、という感じに見える。

◆PCMark 10 v2.1.2574(グラフ2~7)

PCMark 10 v2.1.2574
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10

  • グラフ2

  • グラフ3

  • グラフ4

  • グラフ5

  • グラフ6

  • グラフ7

もうちょっと一般的なところでPCMark 10。速報版では「Raptor Lakeすげえ」が結論な訳だったが、Zen 4も加えてみると案外そうでもないというか、「Raptor LakeもZen 4もすげえ」という辺りになる。なにしろCore i5-13600KのスコアがCore i9-12900Kに匹敵するほどなのだ。Ryzen 5 7600Kは一歩控えめであるが、それでもCore i5-12600Kは軽く凌駕している。実際Applicationまで全スコアを見ても、Raptor Lakeが突出しているというのはApplicationだけで、詳細(グラフ7)を見ると、ExcelとPowerpointのスコアが妙に良いというあたり。で、ちょっと生データをご紹介すると

Excel i5-12600K i9-12900K i5-13600K i9-13900K R5 7600X R9 7950X
Edit 0.7 0.75 0.71 0.62 0.71 0.68
Building Design Recalculate 0.33 0.26 0.22 0.17 0.32 0.15
Stock History Recalculate 0.52 0.35 0.36 0.23 0.65 0.28
Start 0.35 0.38 0.4 0.37 0.36 0.37
Load 1.01 0.91 0.9 0.79 0.99 0.87
Save 0.72 0.61 0.6 0.49 0.73 0.55
Close 0.14 0.13 0.14 0.13 0.14 0.15
CopyFormulas 0.1 0.1 0.1 0.09 0.1 0.1
CopyData 0.14 0.15 0.14 0.13 0.12 0.12
CopyCompute1 0.18 0.17 0.17 0.17 0.17 0.17
CopyCompute2 0.12 0.12 0.11 0.12 0.1 0.1
Resize 0.34 0.35 0.32 0.3 0.39 0.38
PowerPoint i5-12600K i9-12900K i5-13600K i9-13900K R5 7600X R9 7950X
ExportPdf 0.97 0.95 0.95 0.85 0.93 0.92
Start 0.27 0.28 0.27 0.25 0.28 0.3
Load 0.32 0.29 0.29 0.27 0.29 0.28
Browse 0.23 0.23 0.23 0.23 0.22 0.22
AddText 0.23 0.22 0.22 0.21 0.22 0.2
Resize 0.16 0.15 0.15 0.14 0.17 0.16
Save 0.09 0.09 0.09 0.09 0.09 0.09
AddImage 0.08 0.03 0.08 0.03 0.08 0.07
AddVideo 0.77 0.69 0.74 0.63 0.69 0.68
AddSlide 1.2 1.18 1.19 1.11 1.16 1.1

といった具合。ちなみに数字は所要時間(sec)であり、小さいほど高速という事になる。で、Core i9-13900Kが飛びぬけて高速というのはExcelのResizeとPowerPointのExportPdfという2つのテストだけで、後は他と大差ない事が判る。要するに動作周波数がそのまま効くようなテストのみ性能差が表れるが、全体的に言えば大差ないという結果になる。

◆Procyon v2.1.527(グラフ8~11)

Procyon v2.1.527
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/procyon

  • グラフ8

  • グラフ9

  • グラフ10

  • グラフ11

Procyonの結果(グラフ8)はやはりCore i9-13900Kが頭一つ抜け、これをCore i5-13600KとRyzen 9 7950Xが追うという構図に。これに関して言えば、Core i5-13600KとRyzen 9 7950Xがほぼ同等ということになる。もっともこれ、だいぶ後(グラフ230・231)になるのだが、消費電力で言えばやっぱりCore i5-13600KとRyzen 9 7950Xが概ね同等であって、要するにCore i9-13900Kは飛びぬけた消費電力で飛びぬけた性能を得ている、という非常に評価のしにくい結果になっている。例えばOffice Productivity(グラフ10)のWordの生データを示すと

i5-12600K i9-12900K i5-13600K i9-13900K R5 7600X R9 7950X
Export To Pdf 14.31 13.92 14.12 12.42 15.29 14.82
Convert From Pdf 8.1 7.72 7.85 6.15 5.89 5.62
Compare Documents 1.94 1.87 1.86 1.64 1.96 1.94
Accept Comparison 0.22 0.21 0.2 0.18 0.24 0.23
Load 0.45 0.45 0.44 0.38 0.52 0.5
Save 0.2 0.19 0.19 0.17 0.21 0.2
AddImage 0.59 0.58 0.58 0.52 0.57 0.55
CutPaste 0.19 0.19 0.17 0.17 0.19 0.19
CopyPaste 0.39 0.38 0.39 0.38 0.4 0.37
Add Watermark 0.63 0.52 0.62 0.47 0.63 0.6
Table Of Contents 0.58 0.56 0.53 0.51 0.62 0.59
Image Scale 0.09 0.09 0.08 0.08 0.08 0.08
Image Effect 0.26 0.24 0.25 0.21 0.24 0.23
Embed File 0.65 0.64 0.64 0.58 0.68 0.64
Copy FromExcel 0.08 0.08 0.08 0.08 0.1 0.09
Find 0.1 0.09 0.09 0.09 0.1 0.1

という感じ。こちらも数字は所要時間(sec)である。ExportToPdfとかAddWatermarkなど、明らかにSingle Thread性能が効くところで大きな性能差になっている一方で、その他のケースではあまり性能差が無い。もっとも殆どのケースで性能差が無いからこそ、このごく一部のテストで大きな性能差が出る、ともいえる。

同様にVideo Editing(グラフ10)でも(対数グラフのせいでそうとは見えないかもしれないが)Core i9-13900Kの性能は高い。特に長時間の動画のエンコードであるExport 1では圧倒的ではある。ただこれ、PremierがSingle Threadでエンコードを行っているのが最大の問題、と言えなくもない。