今回、この超伝導量子コンピュータをどこからでも利用することができる「量子計算クラウドサービス」が提供される。量子計算などの研究開発の推進・発展を目的とした非商用利用であれば、いずれの研究・技術者でも利用申請が可能だとしている。

ただし当面は、理研との共同研究契約を通じて利用手続きを行うことになっているという。ユーザは理研外のクラウドサーバーに接続することで、超伝導量子コンピュータへのジョブ送信や計算結果の受信を行うことが可能となり、共同研究の目的に合致した用途であれば、超伝導量子コンピュータを利用することができるとする。

研究チームでは現在、さらに多くの量子ビットでの量子計算動作を可能にするため、希釈冷凍機内の配線の高密度化など、さらなるシステム開発を進めているという。また、超伝導量子コンピュータをNISQ(ノイズによって生じる計算のエラーを訂正することのできない、小規模から中規模サイズの量子コンピュータの総称)応用プラットフォームのテストベッドとして提供しつつ、ユーザのニーズなどを踏まえ、公開装置についてもさらなる高度化に向けた必要な研究開発を進めていくとした。

  • 超伝導量子コンピュータへのユーザアクセス概念図。ウェブインタフェース上で、登録ユーザの認証やジョブ送受信を行う

    超伝導量子コンピュータへのユーザアクセス概念図。ウェブインタフェース上で、登録ユーザの認証やジョブ送受信を行う(出所:NTT Webサイト)

さらに、今回の量子計算クラウドサービス公開を通じて、量子ソフトウェア開発者や量子計算研究者および企業開発者との協力を深めることで、量子コンピュータ研究開発を一層加速するとしている。

量子コンピュータは、従来の半導体集積回路を用いたコンピュータのようにどこでも自由に使えるようになるには、これからまだ長い開発期間を必要とする。研究チームは今後、拡張性の高い集積回路を主要技術として、100量子ビット、1000量子ビットといったマイルストーンを達成していく予定としており、また将来的に大規模量子コンピュータを実現し、社会実装するために、100万量子ビット級の集積化の技術開発、エラー訂正・誤り耐性量子計算の実現を探求していくとしている。

  • 将来の量子ビット集積回路のイメージ。4量子ビットで構成される基本ユニットを平面上に周期的に並べることで、集積化された量子ビットの数を増やすことが可能となる。画像は、64量子ビットをさらに4×4に並べて1024量子ビットとする将来予想図

    将来の量子ビット集積回路のイメージ。4量子ビットで構成される基本ユニットを平面上に周期的に並べることで、集積化された量子ビットの数を増やすことが可能となる。画像は、64量子ビットをさらに4×4に並べて1024量子ビットとする将来予想図(出所:NTT Webサイト)