◆消費電力測定(グラフ82~89)

さて最後はおなじみ消費電力測定である。いつも通りにまずSandra 2021のDhrystone/Whetstone(グラフ82)、CineBench R23(グラフ83)、TMPGEnc Video Mastering Worksで4Streamトランスコード時の最初の240秒(グラフ84)、LINPACK(SIZE/STRIDE=60000)(グラフ85)、3DMark FireStrike Demo(グラフ86)、Metro Exodus(2K)(グラフ87)の消費電力変動と、それぞれの平均値(グラフ88)、及び待機状態との差(グラフ89)をまとめてみた。

  • グラフ82

  • グラフ83

  • グラフ84

  • グラフ85

  • グラフ86

  • グラフ87

  • グラフ88

  • グラフ89

まぁ予想通りの結果というか、Core i9-13900KSはCore i9-13900Kにも増して消費電力が増えている。まずSandraの結果をまとめたのが表2であるが、Core i9-13900KSの効率はDhrystone Intでこそ僅かに向上しているもののWhetstone Floatではむしろ悪化。そしてRyzen 9 7950Xには遠く及ばない。これはその他のベンチマークでも同じであり、Core i9-13900KSはCore i9-13900K比で軒並み15~20Wほど消費電力が増えている。唯一差が無いのはFireStrikeのDemo程度で、ただしMetro Exodusではやっぱり13Wほど増えているから別に3Dなら増えないという訳では無い。TDPというかPL1の増加に伴い、きっちり実効消費電力も増えた、というのが正確なところだろう。

■表2
Dhrystone Int Whetstone Single Float
Score Power Efficiency Score Power Efficiency
GIPS W GIPS/W GFlops W GLlops/W
13900K 847.69 264.8 3.20 693.30 295.4 2.35
13900KS 931.00 289.5 3.22 712.46 320.8 2.22
7950X 798.53 189.5 4.21 648.92 197.7 3.28

なので効率という面では概ね悪化する。例えばLINPACKでは先に示したようにSIZE/LDA=60000における性能は764.9GFlops/809.9GFlopsであり、実効消費電力はそれぞれ312.8W/333.5WだからCore i9-13900Kは2.45GFlops/W、Core i9-13900KSは2.43GFlops/Wと言った具合。他のベンチマークの結果も概ね同じで、予想できたことではあるが、動作周波数を引き上げた事で効率は悪化せざるをえない。

考察 - 「最高」だが、あくまで非日常のエンスージアスト用CPU

ということでざっくりと性能及び消費電力をご紹介した。予想通りであるが、確かに性能は上がる。ただしそれは動作周波数に比例した範囲内での性能の差でしかなく、なのでゲームのフレームレートで言えば1%程度にとどまることがある。その一方で消費電力は上がる。性能/消費電力比を語る製品でないことはわかるが、ここは悪化する。何というか、電力費高騰が話題になっている時期には、少し気まずい思いをする製品かもしれない。

個人的には、Core i9-13900KSは定格で使う事を前提にしたプロセッサではなく、OCを前提に使うべきプロセッサなのだろうと考える。もっとも、この製品のターゲットユーザーは恐らく最初からそういった層だろう。今回はそうした準備も無い(簡易水冷程度ではCore i9-13900KSの本領は発揮できない。液体窒素とは言わないまでも、本格的なチラーを用意するとかはすべきだろう)から試さなかったが、IntelのイスラエルのLabでは目の前で8.2GHz動作(ただし液体窒素冷却)を実現しており、本格水冷で7GHz駆動を目指すとか、そうした「遊び方」のためには最適な製品になるだろう。逆に言えば日常使いには不向きというか無駄が多く、Core i9-13900Kで十分、というのが筆者の感想だ。