ソニーは、Dolby Atmos/DTS:Xや、独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」などのサラウンドサウンドに対応したAVアンプ「STR-AN1000」を3月18日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭価格は12万円前後を見込む。

  • STR-AN1000

7.1chのAVアンプで、ソニーとしては2018年発売の7.1ch「STR-DH790」(実売約61,000円)以来、約5年ぶりの新製品。1月に海外発表していたカスタムインストール用「ESシリーズ」を含むAVアンプ製品群のうち、店頭販売向けの「STR-AN1000」のみ国内展開が正式に決まったかたちだ。

STR-AN1000は2020年末に生産完了となった「STR-DN1080」の後継機種と位置づけている。なお、下位機種にあたる前出のSTR-DH790のほか、5.1ch「STR-DH590」(実売約45,540円)、2ch「STR-DH190」(同約27,930円)は販売を継続する。

  • STR-AN1000を含むホームシアターシステムのイメージ

STR-AN1000では、同社初となる8K/60Hzや4K/120Hzに対応し、ソニー製サウンドバーなどで採用している独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」(360SSM、サンロクマル スペーシャルサウンドマッピング)にもAVアンプとして初対応するなど、新しい映像規格やオーディオフォーマットをサポート。また、リアスピーカー/サブウーファーのワイヤレス化も実現しており、既存の同社製ワイヤレスリアスピーカー/サブウーファーを選ぶことで設置性の課題を解決できる点も大きな特徴だ。

360SSMでは、複数の実スピーカーからの音波を合成し、理想的な位置に配置した“ファントムスピーカー”から広大な音場空間を創り出す。360SSMを実現するため、従来機で搭載していた独自の自動音場補正「D.C.A.C.EX」(Digital Cinema Auto Calibration EX)は「D.C.A.C.IX」に進化。付属のステレオマイクを使って室内環境を測定し、部屋のレイアウトにあわせて音場を最適化するキャリブレーション(音場最適化)機能を備えており、各スピーカー配置(距離、音圧、周波数特性、角度)を3次元で測定・補正する。

  • 付属のステレオマイク

  • 自動音場補正の画面イメージ

  • ソニーのコンポーネントオーディオ向けスピーカーと組み合わせたデモの様子。フロアスタンド型「SS-CS3」(1本19,800円)4本を周囲に配置し、センタースピーカー「SS-CS8」(14,300円)とサブウーファー「SA-CS9」(27,500円)も組み合わせた環境だ

  • ブックシェルフ型「SS-CS5」(ペア27,500円)は天井に配置

  • リアのSS-CS3。上記スピーカーにSTR-AN1000を組み合わせると約27万円近くで、スピーカーが安価なぶん意外とリーズナブルだと感じた

ソニーの従来のAVアンプで搭載している補正機能も引き続き装備。すべてのスピーカーの位相特性をフロントにそろえてスピーカー間の音のつながりを改善する「A.P.M.」や、音源位置を理想的な位置や角度に再配置する「スピーカーリロケーション」、5.1.2chスピーカー配置で7.1.2ch相当のサラウンド体験を実現する「ファントム・サラウンドバック」、フロントハイトスピーカーを使い、低位置のセンタースピーカーの音を上に引き上げる効果が得られる「センタースピーカーリフトアップ」などが利用できる。

  • 従来の補正機能も引き続き利用可能

サウンド関連では、360 Reality Audioのワイヤレス再生(キャスト再生)に対応するほか、最大192kHz/24bitまでのPCM、DSD 11.2MHzのハイレゾ再生も可能。チャンネル数はDSDの場合、11.2MHzが2chのステレオ対応、5.6MHzまでは5.1chのマルチチャンネル対応となる。WAVは7.1chまで。

ほかにも、圧縮音源をアップコンバートして高域補間などを行い音質を改善する「DSEE Ultimate」を搭載する。また細かな進化点として、サブウーファー出力端子が2系統になり、低音出力性能も強化できる(ただし信号処理上は0.1ch分で、左右の振り分けはできない)。

HDMIは6入力/2出力で、8Kと4K/120Hzには入出力のうち2系統が対応。HDMI 2.1に準拠し、ALLM、VRR、eARCもサポート。HDRフォーマットはHDR 10、HLG、Dolby Vision、IMAX Enhancedをサポートする。

  • 背面

STR-AN1000と一部のBRAVIAを、HDMIケーブルとステレオミニケーブルで接続すると、テレビの内蔵スピーカーをセンタースピーカーとして使う「アコースティックセンターシンク」機能が利用可能になる。また、テレビ側の「クイック設定」のユーザーインタフェースにSTR-AN1000の「サウンドフィールド」や360SSMに関する項目が加わり、BRAVIAのリモコンから各種操作が行える。

  • テレビの内蔵スピーカーをセンタースピーカーとして使う「アコースティックセンターシンク」機能の体感イメージ

  • BRAVIAの「クイック設定」のユーザーインタフェースに、STR-AN1000の設定が追加された

7chアンプを内蔵し、最大出力は各165W(6Ω)。音質向上のためにデジタル系回路基板を刷新しており、音声信号処理のすべてを1チップで行うSoCを搭載。従来は3基の32bit DSPで行っていた信号処理(D.C.A.C.、イコライザー、各種サウンドフィールドなどの処理)が1チップで行えるようになり、各機能すべての音質がグレードアップしているという。放熱用のヒートシンクの形状も見直し、フィンの長さを不均等にすることで共振しにくい構造とした。

  • 新しいデジタル系回路基板

  • フィンの長さを不均等にし、共振しにくくした放熱用ヒートシンク

スピーカーとは有線接続だけでなく、別売のワイヤレスリアスピーカー「SA-RS5」(実売74,800円前後)や「SA-RS3S」(同51,200円前後)、サブウーファー「SA-SW5」(300W出力、同93,500円前後)や、「SA-SW3」(200W出力、同52,800円前後)を追加することも可能。サラウンドサウンドの強化や、システム全体の低音の増強にも対応する。ちなみに、リアスピーカーは1組、サブウーファーは同種2台まで接続でき、有線またはワイヤレスを接続設定時に選ぶかたちとなる。

Ethernet/Wi-Fi(IEEE 802.11a/b/g/n/ac、2.4/5GHz)のネットワーク機能に対応。GoogleアシスタントやChromecast built-in、Spotify Connect、AirPlay 2」に加え、“北米市場で必須機能”とされるSONOS製のアプリからの操作に新対応。統合音楽再生ソフト「Roon」をサポートするため、Roon Testedにも準拠する。そのほか、設定時のシステムUIを新しいデザインに変更し、ソニー製品でおなじみの「Music Center」アプリからの操作も行えるようにした。

  • 設定時のシステムUIを新しいデザインに刷新

HDMI以外のインタフェースとして、映像入力はコンポジット2系統、映像出力はコンポジット1系統を装備。HDMI入力の映像はアップスケーリングも可能だが、コンポジット入力のアップスケーリングには非対応となる。音声入力は光/同軸デジタルを各1系統、ライン4系統。音声出力はサブウーファー×2系統、ヘッドホン端子×1系統、S-センター×1系統。フロントパネルにはUSBメモリ再生向けのUSB端子1系統を備えている。

消費電力は240W(待機時0.5W)。本体サイズは430×331×156mm(幅×奥行き×高さ)、重さは10.3kg。

  • 付属のリモコン