紅茶などお茶の葉を直接投入できる電気ケトル、略して「お茶ケトル」(筆者が勝手に縮めました)。最近はさまざまなメーカーから登場していますよね。2021年に登場してお茶好きの視線を集めたティファールのお茶ケトル「テイエール 1.5L」以降、選択肢はかなり広がっています。
家電パワーで手抜きしても美味しいお茶が飲みたい筆者にとって、2022年のお茶ケトル業界の盛り上がりは大変嬉しい限り。
ただ、どれもちょっと「大きい」のです。
お茶ケトルはいい文明だけど、ちょっとばかりデカイ
テイエールの商品名に「1.5L」と入っているように、お茶ケトルの容量は1~1.5Lが平均。家族全員分のお茶を淹れたり、複数人の来客に対して使ったりするならいいのですが、ひとりティータイム用としてはやや持て余してしまう容量なのです。
筆者個人の事情で言えば、同居家族で紅茶を愛飲しているのは自分ひとり。お茶ケトルは保温機能を持つものが多いので、朝に1リットルほどお茶を淹れて、1日かけて飲み切る使い方もできます。
ただ、このやり方だと麦茶やルイボスティーのようなノンカフェイン茶を選ばないとカフェイン過多に……。そのため、紅茶を淹れるときは長年使っている茶こしつきマグカップが活躍中です。
でも、できることならお茶ケトルで紅茶を淹れたい!
というのも、お茶ケトルならお湯をわかす=ティーポットを温めることになるため、手間が省けてお茶も美味しく、非常に合理的なのです。
ひとり分の紅茶を淹れるのにちょうどいい、お茶ケトルの小容量版は出ないかな……と他力本願に待ちわびていたところ、ビタントニオの「ガラスケトル KYUSU」が目に留まり、「これだ!」となった次第です。
KYUSUの強みは「煮出し」、薬草茶にトライ
KYUSUはその名の通り、伝統的な急須の形をしています。しかし、ガラス製であることによってか、どこかモダンな印象を受けます。身近に置いておきたくなるデザインです。
紅茶を淹れる目的でお茶ケトルを検討して出会ったKYUSU。しかしながら、この製品の強みは「煮出し」機能。中でも漢方茶や日本の在来種ハーブを使った伝統茶の煮出しがオススメなんだとか。
そこで、KYUSUイチオシの伝統茶ブランド{tabel}の和ハッカ茶を煮出して、KYUSUの機能を見ていくことにしました。
まず、煮出しなので水と茶葉をKYUSU本体に入れます。お茶ケトルの茶こしは多くの場合金属製のメッシュタイプなのですが、KYUSUのそれはガラス製。一見するとオシャレなグラスのような、ぽってりとしたフォルムです。
水300mlと和ハッカ茶をKYUSUに入れ、15分にタイマー設定して煮出し開始!ダイヤルを「15」に合わせると、2秒後にピッと電子音が鳴ってから加熱を開始します。
加熱時の音は、一般的な電気ケトル相当の音量でイメージ通り。予想を大きく裏切ったのはその“火力”でした。スイッチオンから約4分を過ぎたあたりから煮えたぎり、泡がぼこぼこと立ち上るほど。
製品発表時の「丁寧なくらし」的使用シーン写真のイメージとは裏腹に、火力がすごい! 丁寧=弱火でコトコトというのは筆者の思い込みではありますが、想像以上の煮出しパワーに圧倒されました。なるほど、茶こしをガッチリ固定した理由がよくわかりました。
初回利用時は最小水量で加熱したせいか、湯が一気に吹き上がり、わずかに吹きこぼれました。そのため、加熱途中でスイッチを切って仕切り直し。2回目の煮出しはトラブルなく行えました。説明書でも突沸は注意喚起されていたので、煮出し加熱中は目の届くところに置いておく必要があります。
いかにも薬といった香りと濃い色に圧倒されましたが、一口飲んでみるとコクがありながらもスッキリした味で、今までのミントティーのイメージとはまったく別物!仕事終わりのリラックスタイムが似合いそうなまろやかさで新鮮でした。
煮出さずに蒸らして抽出するとハッカらしい清涼感が味わえたので、気分によって使い分けられるのはいいですね。
なお、煮出し機能で使えるのは水と茶葉の組み合わせのみ。ミルクティーの煮出しには使えず、紅茶好きとしては残念でした。
会社デスクでのティータイム、飲み切るのがコツ
KYUSUの定格容量は約500mlと、お茶ケトルの平均容量の約半分。そのため、本体もベースのパネルも大変コンパクト。雑にたとえると、金属製のやかんとティーポットくらい違いがあります。
このサイズなら会社でも使えそうなので、お茶を数種類買ってきて、デスクに置いて試していくことにしました。
まずは紅茶から。スタバのお茶メニューの充実や台湾ティースタンドの定着もあって、昔より外出先で紅茶を飲みやすくなっている昨今。ただ、そうは言っても、ちゃんと淹れたお茶を買うのは難しいので、お気に入りのお茶をポットで淹れて、デスクで飲めるのは最高に快適でした。
気を付けるべきことは、「加熱時の見守り」と「飲み切る分だけ淹れる」こと。KYUSUの火力は煮出し中心で設定されているためか、湯沸かしモード開始後、かなりグラグラ煮立っていても自動OFFにならないことがありました。その場合、筆者は自己判断で電源をOFFに回して加熱を止めていました。実際に吹きこぼれたことはなかったですが、かなりの沸き具合だったので、蒸発してお湯が減らないか心配になったところが大きいです。
ふたつ目の「飲み切る分だけ淹れる」は、KYUSUには保温機能がないこと、そして茶こしを本体底面にガッチリねじ留めするため、お茶を残しておくと抽出が進んで渋くなってしまうのが理由です。KYUSUの最小量(300ml)が一度に入る大きめのマグカップや、500ml淹れる場合は保温できる水筒などを用意しておくと、スムーズかつ最後まで美味しく飲めました。
続いて烏龍茶。烏龍茶はじめ中国茶の魅力は、1煎目のみならず、2煎目、3煎目と長く楽しめること。ただ、KYUSUとの組み合わせに関しては、その利点がネックになる場面がありました。
KYUSUは茶こしが本体底面とくっついているため、そのままでは2煎目のお湯が沸かせません。本体が冷めるまで待ってから茶こしを取り外すのですが、茶葉がみっちり詰まった茶こしを外し、お湯が沸くまで適当なところに置いておくことになるため、手近に蛇口のない会社のデスクでは少し手間取りました。
お茶ケトルの弱点「洗いにくさ」にも一工夫
さて、KYUSUに限らずお茶ケトルが抱える問題として「洗いにくさ」があります。一般的な電気ケトルと構造は同じなので丸洗いはできません。しかし茶葉を直接入れて使うため、一般的な電気ケトルよりも汚れやすく、都度水洗いが必要になる矛盾があります。
そのため、お茶ケトルのお手入れは毎回ドキドキだったのですが、KYUSUにはその緊張感を緩和してくれるアイテムとして、シリコン製の洗浄用カバーが付属しています。本体の底にカポッとはめこんで、底面の通電部を守るものです。
お茶ケトルは洗う頻度が一般の電気ケトルよりずっと多いので、この一工夫は大変助かりますし、お手入れ性に目をつけている点はとても安心感があります。ただ、KYUSUも他のお茶ケトルと同様、流し台で水洗いしていいのは「本体の内側」のみ。これをつけたからといって外側に水をかけるのはNGなのでご注意を。
ソロ用お茶ケトルとして優秀!
KYUSUを使ってみて思ったのは、やはり「小さくて軽いのは圧倒的利点」ということ。最大容量が500mlのKYUSUは本体がコンパクトで、取り回しがしやすく、気軽にお茶を淹れられました。操作部がダイヤルひとつのシンプルさなのも、気軽さを後押ししていたように思います。
その一方で、紅茶好きの筆者ではKYUSUが売りにしている「煮出し」機能をあまり生かせなかったのも事実。構造上難しいのは承知の上ですが、牛乳を使った煮出しが行えれば、紅茶好きとしては活用の幅が広がったように思いました。
卓上に置いておけるお茶ケトルとして貴重な存在であるKYUSU。漢方茶のみならず、煮出して飲むお茶を常飲しているなら、ぜひ導入を検討してほしい使いやすさでした。