◆PCMark 10 v2.1.2574(グラフ91~96)
PCMark 10 v2.1.2574
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
一応2D系のベンチマークも、ということでPCMark 10だが、Overall(グラフ91)で判るように性能差らしきものは無い。実は何が目的かというと、PCMark 10の場合はいくつかのベンチマークでOpenCLを利用しており、これにGPUが使われるのでOpenCL系の比較に丁度良いだろう、と判断した訳だ。ただ実際結果を見て頂くと、言うほどの差がない。比較的大きめなのが、Essentials(グラフ93)におけるVideo ConferencingとかProductivity(グラフ94)のSpreadSheets、Digital Contents Creation(グラフ95)のRendering and Visualizationということになる。例えばVideo ConferencingのOpenCLを利用する作業、生データだと表2の通りで、殆どの処理はほぼ同等だが、VideoConferencingDetectPrivateOclとVideoConferencingDetectGroupOclの2つが極端に性能が異なっており、これが結果に結びついた感じだ。あるいはSpreadsheetsだと表3の2つがOpenCLを利用する処理だが、MonteCarloだとむしろGeForce RTX 4080の方が高速であり、ただ逆にEnergyMarketではGeForce RTX 4080の方が遅く、トータルした結果がスコアの差である。そしてRendering and Visualizationは表4の通りだが、ここでGt1というのは3DMark Sling ShotをOpenGL 4.3で実施した性能なので、OpenCLは無関係である。つまるところ、殆どのOpenCLの処理は性能差が無く、一部の処理のみRadeon RX 7900の方が高速、という程度に判断しておくのが無難だろう。
■表2 | |||
処理項目名 | GeForce RTX 4080 | Radeon RX 7970 XT | Radeon RX 7970 XTX |
VideoConferencingEncodePrivateOcl | 21.20 | 21.10 | 21.20 |
---|---|---|---|
VideoConferencingDetectPrivateOcl | 121.60 | 387.27 | 332.45 |
VideoConferencingPlayPrivateOcl | 29.93 | 29.87 | 29.86 |
VideoConferencingDetectGroupCpu | 37.97 | 37.77 | 37.92 |
VideoConferencingPlayGroupCpu | 29.86 | 29.76 | 29.86 |
VideoConferencingEncodeGroupOcl | 21.07 | 21.10 | 21.15 |
VideoConferencingDetectGroupOcl | 34.87 | 233.89 | 187.96 |
VideoConferencingPlayGroupOcl | 29.86 | 29.93 | 29.84 |
単位:fps |
■表3 | |||
処理項目名 | GeForce RTX 4080 | Radeon RX 7970 XT | Radeon RX 7970 XTX |
SpreadsheetMonteCarloOcl | 1.01 | 1.17 | 1.13 |
---|---|---|---|
SpreadsheetEnergyMarketOcl | 0.8 | 0.69 | 0.63 |
単位:sec |
■表4 | |||
処理項目名 | GeForce RTX 4080 | Radeon RX 7970 XT | Radeon RX 7970 XTX |
RenderingAndVisualizationGt1 | 440.07 | 597.29 | 615.69 |
---|---|---|---|
RenderingAndVisualizationRaytracing | 7.9 | 7.79 | 7.82 |
単位:fps |
◆消費電力測定(グラフ97~103)
最後は恒例の消費電力測定だが、今回はハイエンドGPUカードということもあり、また今更FireStrikeでもないだろう、ということでテスト項目を入れ替えた。具体的には
- 3DMark SpeedWay(グラフ97)
- Cyberpunk 2077 4K Ray Tracing無し(グラフ98)
- Hitman 3 4K Ray Tracing無し(グラフ99)
- Metro Exodus:PC Enhanced Edition 4K Ray Tracing無し(グラフ100)
- Watch Dogs:Legion 4K Ray Tracing無し(グラフ101)
の5つとした。各テストの画質設定は先に説明したものと同じである。解像度をSpeedWay以外(SpeedWayは2.5Kで動作する)4Kに統一したのは、CPUの負荷をなるべく減らしてGPUの消費電力が反映されやすくするためである。またRay Tracingを無効にしたのは、これを有効にするとRay Tracing Engineがボトルネックになり、シェーダそのものはむしろ遊んでしまう可能性が高いためだ。
このグラフ97~101の、それぞれベンチマーク実行時の平均消費電力をまとめたのがグラフ102、そこから待機時の消費電力との差を求めたのがグラフ103となる。
なんというか、まぁTBPの数値通りの結果になったというべきだろう。Radeon RX 7900 XTはほぼGeForce RTX 4080と変わらないし、Radeon RX 7900 XTXはそこから最大で50Wほどの上乗せがされる格好だ。ハイエンドビデオカードだからそれなりになるのは致し方ないのだろうが、少なくともこの部分でアドバンテージがあるか? と言われれば、GeForce RTX 4080に対しては「ない」という答えになる。
考察 - 性能は肉薄し価格は安いが、Ray Tracing次第
ということで駆け足でご紹介してきた。結果から言えば
Ray Tracingを使わなければ、Radeon RX 7900 XTはGeForce RTX 4080に肉薄する成績を300ドル安い金額で入手できるし、Radeon RX 7900 XTXはGeForce RTX 4080と同等以上の成績を、200ドル安い金額で入手できる。これはお買い得感がかなり高い。
Ray Tracingを使う場合の性能は、やはりGeForce RTX 4080には及ばない。以前に比べると差は縮まった気はするし、FSRなりXeSSを使う事で実用的な性能まで引き上げる事は可能だが、Ray Tracingを使っての性能を重視するのであれば、GeForce RTX 4080の方が現実的。
という事になる。原稿執筆時点での日本円での価格は公開されていないが、円高基調に入りつつある昨今では、それなりに期待できる金額になりそうな気もする。個人的には、そこまでRay Tracingの機能がゲームに必須か? と言われるとかなり謎であり、そのあたりを割り切れる人にはRadeon RX 7900 XT/XTXは良い買い物に思える。意外にXTとXTの性能差が無いのも驚きで、その意味では狙い目はXTの方かもしれない。