次に、MS-177とAsuka-881314の岩石組織の特徴を明らかにするため、光学顕微鏡を用いた観察が行われたところ、どちらにも主にケイ酸塩鉱物で構成される球粒(コンドルール)が多く含まれていることが確認されたという。このようなコンドルールが多い隕石はタイプ3に分類され、始源的特徴を保持した種類の隕石であること、つまり、形成後にほとんど加熱を受けていないことが示されているとのことで、今回の研究で調べた2つの隕石はELグループのタイプ3であることから「EL3」と分類される。

2つの隕石は同じEL3に分類された一方で、異なる点も明らかとなったとする。MS-177は、Asuka-881314やほかのEL3と同様に還元的環境下で生じた鉱物から構成されているが、構成鉱物の存在量や組成は異なっていたという。MS-177の鉱物組成は、形成後、加熱を受けたことが示されていた。これは、Asuka-881314や、ほかのEL3隕石がそのような加熱を受けていないこととは対照的であるとする。

さらに、極地研で開発されたX線回折を用いた手法による分析などから、MS-177が受けた加熱の最高到達温度はMS-177が融けるほどではなく、また加熱時間が短時間であったことも判明したとする。それにより、コンドルールが保持される結果になったという。この短時間の加熱の原因としては、同隕石がもともと含まれていた小惑星同士の衝突が有力なものと考えられるとする。

タイプ3に属する隕石はエンスタタイト・コンドライト以外のほかの種類のコンドライトにもあり、これらは形成後に加熱作用はほとんど被っていないことがわかっている。

一方、エンスタタイト・コンドライトでは、MS-177のように加熱されたものもあることが従来から知られていたが、その原因がこれまでは明らかにされていなかった。それに対して今回の研究により、小惑星(母天体)同士の衝突に伴う短時間の加熱が有力であることが明らかにされた。このことは、エンスタタイト・コンドライト天体には衝突現象が特に頻繁に起こっていたことを示すものだという。これは天体の初期の形成過程を明らかにするために重要な知見と研究チームでは説明している。

  • アルマハタシッタ隕石MS-177の光学顕微鏡像

    アルマハタシッタ隕石MS-177の光学顕微鏡像。多くのコンドルールが含まれている。全体が暗色なのは、激しい衝突現象を反映するもの。画像の横幅は2.5mm (出所:極地研Webサイト)