2022年の幕開けに、パーソナルコンピュータのハードウェア技術の動向を占う「PCテクノロジートレンド」をお届けする。今年のPCテクノロジートレンドの最後となるチップセット編である。Intelは新年早々、Alder Lakeの拡充に伴いIntel 600シリーズにSKUを追加した。引き続き、今度はRaptor Lake用のIntel 700シリーズを準備するだろう。一方のAMDだが、AMD 600シリーズの姿が少し見えてきた。

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  • PCテクノロジートレンド 2022 - チップセット編

    Photo01: 昨日のFlash Storage編で出て来たお母さん+子猫4匹と初対面の図。奥に見える巨大キャリーは捕獲用に買って仕掛けたもの。まずはこのキャリーに慣れていただき、翌日全員入ったところで我が家にお引越し。このアングルだとそう見えにくいが、実はお母さんガリガリであった。

Intel Chipset(Photo01)

Intelに関して言えば、あまり新しい話は無い。なにしろ2021年11月のAlder Lake発表に合わせてZ690チップセットが発表されてしまっており、これがいわばIntel 600シリーズの「全部入り」であることを考えれば、あとはこのサブセットでしかない。

ということで昨日発表になった追加SKUは、H670/B660/H610の3製品である。スペックの違いをまとめたのが表1である。基本的に現時点でDDR5対応はZ690のみで、他のチップセットはDDR4対応となっている。

■表1
Z690 H670 B660 H610
Memory Channel 2 2 2 1
DDR4対応 3200 3200 3200 3200
DDR5対応 4800 無効 無効 無効
DMI 4.0 Lane 8 8 4 4
PCH PCIe 4.0 Lane 最大12 最大12 最大6 なし
PCH PCIe 3.0 Lane 最大16 最大12 最大8 8
SATA 3.0 Port 最大8 最大8 4 4
USB 3.2 Gen2x2 4 2 2 なし
USB 3.2 Gen2x1 10 4 4 2
USB 3.2 Gen1x1 10 8 6 4
USB 2.0 14 14 12 10
RTS 19.0 有効 有効 有効 有効
Intel VMD 有効 有効 有効 有効
PCIe Storage Support 有効 有効 有効 有効
PCIe RAID 0/1/5 有効 有効 無効 無効
P&E-Core BCLK OC 有効 無効 無効 無効
Memory OC 有効 有効 有効 無効

その他の特徴で言えば、H670は、P&E-CoreのOC機能が無く、またPCHから出るPCIe 4.0レーンの数とかUSB 3.2 Gen2x2(20Gbps)のポート数なども少し少なくなっているが、概ねZ690に準ずる構成で、多少価格が下がると思われる。B660はビジネス向けという感じで、DMIも4.0×4構成になり、全体的にポート数が減っている。H610は本当にエントリ向けといった感じで、Memory Channelそのものも1chのみのサポートとなり、勿論OC機能は未サポート、USB 3.2 Gen2x2ポートもなしといったシンプルなものである。Alder LakeベースのPentium Gold G7400TとかCeleron G6900Tなどに適したソリューションといったところだ。

さて、これに続く世代は? という話であるが、Raptor Lakeに合わせてIntel 700シリーズチップセットが用意されることになると見られる。ただRaptor LakeもLGA1700「らしい」というか、基本的には互換性があるとされている。変な言い方なのは、実はLGA1700は、Pad自体は1800あり、ただしうち1700を使っているという話が出て来たからだ。さすがに「え?」と思って確認したところ、CPUとSocket、どちらも現時点では1700 Padであった(Photo02,03)。つまりPadそのものが1800ある、というのは誤情報であった。ただ例えば内側にもう一列Padを増やすと丁度1800 Padになる(Photo04)。もし本当にRaptor Lakeが1800 Padというなら、Photo04の様なPad配置になりそうに思える。

  • Photo02: 4つに分割してそれぞれ数えた結果、合計はぴったり1700pad。縦横で言うと、横44×縦52で合計2288pad分あるが、中央にPad無し部がある(のと4隅に欠けているところがある)ので、1700となる。

  • Photo03: 同じ方法でSocket側も数えてみた。一見、下側にややはみ出している様に見えるが、これはPadと接触するPinが斜め下方向に伸びてるためで、Pad数そのものは1700のまま。

  • Photo04: ピンク色の部分が(Photoshopで)追加したPad。

ちなみにこの追加Pad、恐らくは電源とGNDの追加というあたりで、なので「既存のLGA 1700への装着も可能(ただし電源供給が限られる)」という形になるのか、それとも「見かけは同じだが互換性がない」になるのかはっきりしない。あるいはLGA 1800はLGA 1700への後方互換性を持つが、LGA 1700はLGA 1800への互換性を持たない、という形にする可能性もある。

このRaptor Lake世代、チップセットは先にCPUの所で説明したようにAlder Lakeと互換性がある筈で、なのでSocketの問題を除けば基本互換性はありそうで、どの程度新機能が入るのかは不明だ。一番ありそうなのは、この世代でCPUから出るPCIe x4レーンがPCIe Gen4相当になることだが、逆に言えばあってもその程度(あとはRSTがVersion 20に上がるとか)ではないかと思う。

なおIntel 600シリーズは14nmプロセスでの製造となっており、恐らくIntel 700シリーズも引き続き14nmプロセスの製造になりそうだ。というか、Intel 10nmやIntel 7がチップセットを製造するのに必要なアナログ回路とかを全て製造できるのかどうか定かではない。むしろ14nmの次は全量TSMCに委託とかになっても不思議ではない感じである。ただこうなってしまった理由は、Intelの旧10nmが不調すぎて、Foundry Serviceを行う際には絶対に必要となるSoC向けのIPとか回路の開発をするゆとりがなかったから、という話でもある。なので仮にIntel 4とかIntel 3、Intel 20Aなどが順調に立ち上がってFoundry Serviceを始める(というか、再開するというか)場合には、絶対に必要になってくるわけで、これらのプロセスが立ち上がったら後追いでチップセットに必要なコンポーネントを製造できるプロセス(というか、IPというか)を開発するとは思うのだが。

2023年のMeteor Lakeに関しては、そもそもチップセットそのものがIntel 600/700シリーズとどの程度互換性があるか不明である。プラットフォームそのものが互換性が無いという噂もあるのだが、真偽のほどは現時点では判らない。