韓Samsung Electronicsは11月24日、米テキサス州の州都オースチン近郊のテイラー市に170億ドルを投資し、先端ロジック半導体工場(ファブ)を建設すると発表した。

渡米中のSamsungの電子デバイスソリューション(DS)部門の副会長兼CEOのKinam Kim氏は、テキサス州知事のGreg Abbott氏とともに11月23日午後5時(現地時間)に記者会見を開催し、この計画を明らかにした。

最先端ロジック半導体を量産へ

新工場では、モバイル、5G、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、人工知能(AI)などに向けて、先端プロセスを用いたロジック製品が製造される見通しで、米韓の半導体関係者からは、先行して米アリゾナ州に5nm対応ファブの建設を進めているTSMCへの対抗上、同等もしくはそれ以上の微細プロセスへの対応を図るものとの見方がでている。

新工場は、2022年上半期から建設を始め、2024年下半期に稼働させることを目標としており、新工場の敷地面積は500万平方メートル以上で、将来的な拡張も可能とみられる。Samsungでは、この新工場を、現在の同社の最先端半導体製造拠点である韓国平沢事業所と並ぶ規模の生産拠点とすることを掲げているとする。

新工場では新たに2000人を雇用

同社が1978年に米国での事業を開始して以降、今回の投資は過去最大規模であり、これにより新たに2000人以上のハイテク関連の直接雇用が生み出されるほか、数千人の間接雇用が生み出されると同社では説明している。また、コミュニティへの投資の一環として、学生が将来に向けたスキル開発するだけでなく、インターンシップや募集の機会を提供するため、テイラー独立学区(ISD)のためのSamsung Skill Centerの設立も行うとしている。

テイラーが最終的な建設地に選ばれた理由は?

Samsungは、米国での新工場建設に際し、複数の地域を検討してきたが、地元の半導体エコシステム、インフラの安定性、地方自治体の支援、コミュニティ開発の機会など、複数の要因を検討した結果、テイラーにへの投資を決めたという。中でも、テイラーの南西約25kmほどにあるオースティン市の既存製造拠点と近いことがポイントになったとする。

現地情報によると、テイラー市は2021年9月、今後30年にわたって、Samsungに対する課税の大部分を払い戻すインセンティブを与えるなど破格の支援を約束し、誘致に熱心だったといわれている。

米国政府の補助金を期待するSamsung

なお、この者会見にSamsung代表として出席したSamsungのKinam Kim氏は、「Samsungは米国(テキサス州オースチン)で25年にわたって半導体製造を行ってきたが、テイラーに新たなファブを追加することで将来に向けた新たな一歩を踏みだすことになる。テキサス州の関係者に加えて、支援する環境を作り出してくれたバイデン政権に感謝する」と述べたほか、「米国内のチップ生産に対する連邦政府のインセンティブを迅速に制定するための超党派の支持に対して政府と議会に感謝する」と付け加えた。連邦議会において半導体ファブ建設への総額6兆円におよぶ助金を支給する法案は、現在下院で審議中であり、一部の議員が外国企業への補助金支給に反対しているため成立のめどが立っていない。そのため、この発言は、連邦議会での補助金支給法案成立を促したものとテキサス州の地元では受け取られている。