いよいよ10月15日に発売となるApple Watch Series 7。前モデルと何が違うのか? 大きくなったディスプレイの使い勝手は? バッテリーへの影響は? 気になるポイントをひと足早くレポートします。

  • Apple Watch Series 7は41mm/45mmの2サイズ。41mmでもかなり存在感があります

サイズアップ、見た目の変化は?

Apple Watch Series 7最大のポイントは、画面サイズがSeries 6までと比較して約20%大きくなったことです。ただ、ケースサイズの違いは1mm前後。並べてみない限り40mmモデルと見分けがつきません。

  • Series 4の40mmモデル(40×34mm)と、Series 7の41mmモデル(41×35mm)。並べるとわかりますが、単体では見分けにくい差

発表会では特徴のひとつに耐亀裂性能の向上が謳われ、そのために前面クリスタルが従来より厚くなったことが紹介されました。これが本体サイズに影響するのかどうか気になっていたのですが、結果的に本体の厚みはSeries 6と同じ10.7mmにとどまりました。

  • 厚みは前モデルから変化なしの10.7mm。45mmモデル、41mmモデルとも共通です

一方、ディスプレイのサイズは並べてみると明らかです。特に全面表示にすると縁が狭くなったことがよくわかります。

  • 写真や全面表示の文字盤を表示させると、ディスプレイサイズの違いがよくわかります

Series 7は屋内での常時表示ディスプレイ(スリープ中)の明るさが約70%アップしました。手を動かさずにチラ見するだけで時刻がわかりやすく、ものによってはコンプリケーションも見えます。

  • スリープ中の表示の違い。Series 7の方が、時計の針がクッキリ見えます

これは同時に、周囲の人からも文字盤が見えやすいということ。従来以上に、文字盤の設定は「見られる」ことを前提にする必要がありそうです。ここには2つのポイントがあります。

1つは、バンドや服とコーディネートして、文字盤をアクセサリー感覚で楽しめること。もう1つは、文字盤上の情報が周囲から見られやすいということです。通知やコンプリケーションデータの表示設定に注意が必要です。

  • ディスプレイの大きさが活きる新デザインの文字盤。大型のコンプリケーションを2つ配置した「モジュラーデュオ」と、エッジに数字を配置した「輪郭」が使えるのはSeries 7のみ

  • 常時表示中のコンプリケーションデータを非表示にするには、「設定」を開き、[画面表示と明るさ]→[常にオン]→[コンプリケーションデータの表示]をオフに

watchOS 8で見やすさ・使いやすさアップ

表示の見やすさアップは、ディスプレイ拡大だけでなくwatchOS 8の表示改善による部分もあります。ボタンがより押しやすい形状になったり、操作に迷わない画面デザインに少しずつ改善されるなど、拡大したとはいえ小さな文字盤を前提とした操作感がより洗練されてきた印象です。

  • タイマーは表示が見やすく、ボタンの押し間違えも起きにくいデザインに。複数タイマーの同時進行も可能です

  • 「写真」アプリは「メモリー」と「おすすめ」の写真を自動的に同期。表示スタイルも変わりました

Series 7では文字の表示サイズが従来の6段階から9段階へと増え、より大きな文字で表示することが可能になりました。

  • 文字サイズの設定。サイズ調整の幅が広がり、より大きな文字が使用可能に

注目のフルキーボードは、画面が拡大したとはいえキーのサイズはゴマ粒感覚。さすがに実用は厳しそう…と思いきや、「QuickPath」入力は思った以上に正しく単語が認識されます。英文入力に慣れた方ならそれなりに使えるのではないでしょうか。日本語フリックキーボードの搭載が待たれます。

  • スペルを連続スワイプする「QuickPath」入力が便利。キーの正確な位置は見えなくても、「このあたり」と見当をつけるとほぼ正しく推測してくれます

サイズと明るさアップ、バッテリーへの影響は?

ディスプレイサイズと常時表示の明るさがアップしたことにより、気になるのはバッテリー性能への影響です。スペック上はこれまでのモデルと同じ「18時間以上」とされていますが、実際のところはどうなのでしょうか。

朝起きてウォーキング、昼はデスクワーク、その他日常的な家事や買い物で1日過ごして計測してみました。

  • 朝6時から使い始め、17時半には50%を切り、0時には26%に。18時間はもちましたが、あまり余裕はありません

Series 6が18時間使用して30%以上残っていたのに比べると、やはりSeries 7はやや消費が早そうです。こうなると高速充電は必須です。今回試したところ、26%から約40分で95%まで充電できました。

  • Series 7から純正の充電器はUSB-C接続。高速充電には20W対応の電源アダプターが必要です

アルミニウムモデルのカラー問題

Series 7アルミニウムケースのカラーは、ミッドナイト、スターライト、グリーン、ブルーおよび(PRODUCT)REDの5色です。

  • Series 7アルミニウムケースのカラーラインアップ。スターライトはわずかにゴールドに寄せた暖かみのある銀色、ミッドナイトは青みを帯びたクールな黒です

グリーンは新色で、ブルーと(PRODUCT)REDもSeries 6とは異なる色味の仕上がり。従来定番だった「スペースグレイ」「シルバー」がなくなり、ミッドナイトとスターライトに変更されたことで、全色が刷新された格好です。

筆者の手元にあるスターライトは、品が良くオフィスカジュアルにもキレイ目に合わせられそうです。従来のアルミニウムのシルバーはスポーティーな印象が強く敬遠していましたが、これならシーンを選びません。

高級感のあるステンレススチールは価格が高く、重さが気になる。個性的な色味はコーディネートが難しい…などとお悩みの方にもおすすめです。

  • ウォーム寄りのつや消しシルバー「スターライト」。肌なじみがよく、上品で合わせやすいカラーです

  • バンドとの相性も、文字盤次第で柔軟に合わせられそう

大画面化したその先は?

Series 7は、ディスプレイの拡大によって画面の見やすさが向上したことは確かです。しかし、期待された新たなバイタルセンサーは搭載されず、チップ性能もSeries 6と同等。そして市場に多様なスマートウォッチが出回る現在、Apple Watchの一番の弱みであるバッテリー性能も現状維持でした。

高速充電機能で充電サイクルが改善したとはいえ、毎日いくつものデジタルデバイスを管理する上で、その手間はできるだけ減らしたいもの。それを改良しないまま、あえて電力消費を増やす大画面化の道を選んだのには、どんな理由があったのでしょうか。

可能性のひとつとして、ユーザー層の拡大が考えられます。watchOS 7でファミリー共有設定が可能になり、8ではヘルスケアも共有できるようになりました。Apple Watchの重要な機能であるバイタル計測、転倒検知およびそれらの見守りは、新たなユーザー層=高齢者にこそ求められます。ここを重視するなら、優先課題が文字サイズになることにもうなずけます。

ただ、自身の運動や健康管理目的で使用する現在のメインユーザー層のことを考えると、Apple Watchの目指すところがどこなのか、やや迷走しているようにも思えます。Series 7の大画面化は何かの布石と受け止め、次のアップデートに革新的な変化を期待したいと思います。