◆内蔵GPU評価その1:PCMark10 v2.1.2519(グラフ42~47)

  • グラフ42

さて、ここからは内蔵GPUでの比較である。まずはPCMark 10について。Overall(グラフ42)を先のグラフ1と比較すると、殆どさが無いことが判る。しいて言えば、PCMark 10 Extendedのスコアだけが急激に落ちているが、他は(Applicationも含めて)殆ど誤差の範囲である。

  • グラフ43

  • グラフ44

  • グラフ45

  • グラフ46

  • グラフ47

この謎はTest Group Score(グラフ43)を見ると分かりやすい。Gaming、つまりFireStrikeの結果が大幅に異なる(24000~26000→3300前後)のが主な理由であって、そりゃ内蔵GPUとGeForce RTX 3080でスコアが異なるのは当然である。逆に言えば大きな差が出るのはここだけである。

細かいところで言えば、次のProductivity(グラフ45)のSpreadsheetsとか、Digital Contents Creation(グラフ46)におけるRendering&VisualizationやPhoto Editingでもスコアが違うが、これは主にOpenCL 2.0を利用する部分である。つまりGeForce RTX 3080とそれぞれの内蔵GPUをOpenCL 2.0で使った場合の性能に差がある(当たり前だ)からで、これは別に大きな問題ではないと思う。さらに細かい話をすればそのグラフ46のVideo Editing、Ryzen Pro 7 4750GではScoreが4602なのに対し、Ryzen 5000Gシリーズは5000超えになっている。

PCMark 10の基本的なコンセプトは、リファレンス構成(Digital Contents CreationだとCore i5-7600K CPU+GeForce GTX 1050+16GB DDR4-2677+Samsung SSD 850 EVO 500GB)で5000になる様に調整されており、つまりRyzen 5000Gシリーズはこのリファレンス構成を超える性能を持っている、ということになる。内蔵GPUでもここまで性能が上がった、という一つの目安ではあるかと思う。

Application(グラフ47)はまぁ概ねGeForce RTX 3080の時(グラフ6)と変わらない性能になっている。しいて言えば全体的に若干スコアが下がっているが、内蔵GPUを利用しているとメモリ帯域を(若干ながら)GPUに喰われる事を考えれば、そうおかしな数字ではないと判断する。

◆内蔵GPU評価その2:3DMark v2.19.7225(グラフ48~50)

  • グラフ48

こちらも内蔵GPUでのテスト。さすがに2Kを超える解像度は試すだけ無駄と判断し、FireStrike Extreme/UltraやTimeSpy Extremeは省いた。またRay Tracingにも未対応なのでPortRoyalも実施していない。さらに、先日追加されたばかりのWildLife Extremeだが、これも内蔵GPUでは動作しなかったので省いている。Overallで見ると、性能差はともかくとして絶対性能はやはり殆ど変わらずといったところ。FireStrikeこそ26667とちょっと高めであるが、全体的に言えばRyzen Pro 7 4750Gと大差なしというレベルに留まっている。

  • グラフ49

  • グラフ50

Graphics(グラフ49)も概ね同じである。強いて言えば8CUのRyzen Pro 7 4750Gと7CUのRyzen 5 5600Gが大体同等。8CUのRyzen 7 5700Gがやや上という程度だが、CU数が少ない上にメモリ帯域も変わらなければ、まぁ性能が上がるはずもないというあたりだろうか。逆に言えばこの制約のなかでよく頑張ったというべきなのだろうが。

CPU/Physics(グラフ50)は先のグラフ11とスコアがだいぶ異なるが、これはGPU性能そのものが違う事に起因する。絶対性能はともかく、傾向そのものはグラフ11と同じであり、とりあえずRyzen 5 5600G ≦ Ryzen Pro 7 4750G < Ryzen 7 5700Gという傾向は明確である。

◆内蔵GPU評価その3:F1 2021(グラフ51~56)

設定方法は先ほど説明したとおりである。なおテスト構成は

  • 解像度:1K/1.5K/2K
  • Anti-Alias:None
  • Detail Preset:Ultra Low

とした。勿論Ray Tracingは無効化されている。

  • グラフ51

  • グラフ52

  • グラフ53

  • グラフ54

  • グラフ55

  • グラフ56

さて平均フレームレート(グラフ51)を見ると、3製品とも2Kで60fps超えは流石である。最大フレームレート(グラフ52)はそれほど上がっていないが、最小フレームレート(グラフ53)を見ると、2Kでも50fps超え(Ryzen 7 5700Gなど57fps)で、これは十分内蔵GPUでプレイできる範疇と判断してもよいと思う(まぁその分画質はちょっとアレだが)。相変わらずF1シリーズは、性能の低いGPUにも優しいゲームであった。

それはともかくフレームレート変動を見てみると、2K(グラフ56)でもRyzen 7 5700Gは頭一つ抜けている印象で、これにRyzen 5 5600Gが続くが、こちらはRyzen Pro 7 4750Gとそう大きくは変わらない感じ。丁度3DMarkのFireStrike Graphics Score(グラフ49)に近い印象である。

◆内蔵GPU評価その4:FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク Version 1.3(グラフ57~59)

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク Version 1.3
SQUARE ENIX
http://benchmark.finalfantasyxv.com/jp/

いつものこれ。今回は

  • 解像度:1K/2K
  • 描画品質:軽量品質

とした。

  • グラフ57

  • グラフ58

  • グラフ59

さてまずグラフ57が平均/最大/最小フレームレートである。さすがに解像度が2つだけだと折れ線にするのも変なので、まとめて一つにさせて頂いた。もう御覧の様に、Ryzen 5000Gシリーズでも2Kだと軽量品質でもプレイできる範疇ではなく、1Kですら厳しい(辛うじて平均で40fpsは超えているというレベル)状況で、まぁ予想通りではあるが内蔵GPUでプレイするのは無謀、という結論である。

1Kフレームレート変動(グラフ58)を見ると、3製品で大きな違いがあるとは言いにくいし、40fps台を推移していて、ちょっとプレイには厳しいという結論に変わりはない。そして2K(グラフ59)は、悲惨以外の何物でもない。あるいはDDR4-4000くらいのOCメモリを使えばもう少し性能は上がるかもしれないが、大きく上がったりはしないだろうと思われる。

◆内蔵GPU評価その5:Shadow of the Tomb Raider(グラフ60~65)

Shadow of the Tomb Raider
SQUARE ENIX
https://tombraider.square-enix-games.com/en-us

ベンチマーク方法はこちらに準じる。設定は

  • 解像度:1K/1.5K/2K
  • 描画品質:Lowest

とした。勿論Ray Tracingは無効である。

  • グラフ60

  • グラフ61

  • グラフ62

  • グラフ63

  • グラフ64

  • グラフ65

さて平均フレームレート(グラフ60)を見ると、性能の絶対値という意味では低迷しているが、性能差は意外に大きい感じだ。最大/最小フレームレート(グラフ61・62)も同じで、明確に

Ryzen Pro 7 4750G < Ryzen 5 5600G < Ryzen 7 5700G

という関係が成立している。

もっともフレート変動を見ると、1K(グラフ63)ではRyzen 5 5600GがRyzen 7 5700Gに近いあたりで推移しているのに、2K(グラフ65)ではRyzen Pro 7 4750Gに近くなっているあたりは、やはり7CUではそれなりに厳しいということだろうか。

◆FSRの評価:Anno 1800(グラフ66~68)

Anno 1800
UBISOFT
https://ubisoft.co.jp/anno1800/

内蔵GPUのベンチマークはShadow of the Tomb Raiderまでで一応ひと段落だが、ついでにFSR(FidelityFX Super Resolution)の効き具合を確認してみたいと思う。ということで、FSRの紹介記事の中で、Anno 1800についてのみ実施してみた。ベンチマーク方法はこちらのAnno 1800の項目に準ずる。設定は

  • 解像度:1K/1.5K/2K
  • グラフィック品質:低
  • FSAA:なし

で、この状態でFSRについて、なし/超高画質/高画質/バランス/パフォーマンスの5つでどう平均フレームレートが変化するかをまとめたものだ。

  • グラフ66

  • グラフ67

  • グラフ68

さて、FSRの紹介記事時点における平均フレームレートの変化はこんな感じであった。Ryzen Pro 7 4750を使うと、どの解像度でも超高画質の場合にはオーバーヘッドが大きくなりすぎ、むしろフレームレートが落ちる結果になっていた(と筆者は判断した)。ところが今回は? というと、そのRyzen Pro 7 4750でもオーバーヘッドを感じさせない、順調にフレームレートが上がる傾向を見せている。

実はFSRの記事を書いた際のAnno 1800のバージョンは11.1.1010590であったが、今回試したバージョンは11.1.1010647となっていた。前のバージョンは、FSRが公式に発表される「前に」リリースされた、いわば大急ぎでFSRに対応させたバージョンだったようで、なので実はUltraQualityにおけるフレームレートの落ち込みはゲーム側の問題だった可能性がある。多分FSRの発表後に、そのあたりの問題への対策が行われたのかもしれない。

それはともかくとして、傾向を見るとやはりRyzen 7 5700Gがややマージンが大きい様で、Ryzen Pro 7 4750Gと比較して常に+10fpsほど上回っている。微妙なのがRyzen 5 3600Gで、1K(グラフ66)では明確にRyzen Pro 7 4750Gを上回っているのに、2K(グラフ68)ではほぼ同等といったあたりに落ち込んでいる。まぁ7CU構成で8CUのRyzen Pro 7 4750Gと同等というだけでも誉めてしかるべきなのだろうが。

そんなわけで、Ryzen 5000Gシリーズの内蔵GPUでも、FSRの恩恵をきちんと受けられる事は確認できた。まぁ絶対的な性能が足りないのは致し方ないところで、なので性能の上がり方に限度はあるのだが。