ちょっと8月8日の発売に間に合わなかったが、速報版のテストに続いて、色々とRyzen Pro 4000Gシリーズのデータを取り終わったのでご紹介したいと思う。既に秋葉原店頭では発売開始されており、入手された読者もおられるのではないかと思う。

  • Ryzen 7 Pro 4750Gのブリスターパック。バルク品としてPCパーツショップ等に流通している

    Ryzen 7 Pro 4750Gのブリスターパック。バルク品としてPCパーツショップ等に流通している

テスト環境などは先の速報版に同一であるが、今回の完成版ではRyzen 5 3600XとRyzen 7 3700Xも追加した。ただこの2製品は内蔵GPUが無いので、とりあえず筆者の手持ちで一番ローパワー&性能の低いカード(*1)という事で、以前こちらのレビューの際に利用したZOTAC GAMING GeForce GTX 1650 SUPERを組み合わせている。

テスト環境は表1の通り。ちなみにこの表には出てこないが、別にRadeon RX 5700XTを利用してのテストもちょっとだけ行っている。その話は当該部分で。

■表1
CPU Ryzen 3 3200G
Ryzen 5 3400G
Ryzen 3 Pro 4350G
Ryzen 5 Pro 4650G
Ryzen 7 Pro 4750G
Ryzen 5 3600X
Ryzen 7 3700X
Motherboard ASRock X570 Pro4
BIOS Version 3.00
Memory CFD W4U3200CM-16G×2
DDR4-2933 CL22 DDR4-3200 CL22
Video 内蔵GPU
Radeon Driver Adrenalin 20.7.2
ZOTAC Gaming GeForce GTX 1650 Super
GeForce Driver 415.67 WHQL DCH
Storage Intel SSD 660p 512GB(M.2/PCIe 3.0 x4) (Boot)
WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data)
OS Windows 10 Pro 日本語版 Version 1909 Build 18363.900

グラフ中の表記は

R3 3200G : Ryzen 3 3200G
R5 3400G : Ryzen 5 3400G
R5 3600X : Ryzen 5 3600X
R7 3700X : Ryzen 5 3700X
R3 4350G : Ryzen 3 Pro 4350G
R5 4650G : Ryzen 5 Pro 4650G
R7 4750G : Ryzen 7 Pro 4750G

となっている。またゲームベンチマークにおける解像度表記は

720P : 1280×720pixel
900P : 1600×900pixel
1080P : 1920×1080pixel

とさせていただく。

(*1) 性能が低いだけならGeForce GTX 770のフルサイズカードとかもあるのだが、消費電力がかなりデカいので見送った。

◆PCMark 10 v2.1.2177(グラフ1~6)

PCMark 10 v2.1.2177
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10

  • グラフ1

さて、まずはPCMark 10から。Overall(グラフ1)を見ると、追加したRyzen 5 3600X/Ryzen 7 3700Xが突出した性能を示している。PCMark 10 Extendedに関して言えば想定内だが。PCMark 10 Applicationsついてもこんなに差が付くとは思わなかった。

  • グラフ2

何故、という話でまずTest Group Detail(グラフ2)を見ると、Essentialsでは大きな差が無いものの、Productivity/Digital Contents Creationでも意外に差がある。Gamingはまぁ3DMark FireStrikeの性能そのままだから、Ryzen Pro 4000Gシリーズの内蔵GPUではGeForce GTX 1650 Superに太刀打ちできないのは当然である。

  • グラフ3

さてEssentials(グラフ3)だと、意外にApp StartupでRyzen 5 3600X/Ryzen 7 3700Xが高速なのは、やはりメモリアクセスの頻度が関係しているのだろうか?(Windowsは空きメモリをDisk Cacheとして利用するが、内蔵GPUだと常にGPUのためのメモリアクセスが発生している関係で、空きメモリへのDisk Access帯域が若干落ちる)。ただそれ以外の、例えばWeb Browsingとかだと同等とは言わないまでも差は少ないし、Video ConferenceではむしろRyzen 4000Gが上回る結果になっている。

  • グラフ4

次いでProductivity(グラフ4)。こちらも意外にSpreadsheetで結構な差が付いた。細かく見ると何か大きな性能差がある項目が一つ二つではなく、全般的にRyzen Pro 4000Gシリーズがやや低めである。やはりメモリを利用しての演算が多いだけに、メモリアクセスの影響がそれなりにあるということだ。これはWritingも同じである。まぁこればっかりはGPU統合のデメリットだけに致し方ないところではある。

  • グラフ5

逆にDigital Contents Creation(グラフ5)に関しては、PhotoEditingとVideo Editingは主にOpenCLの性能、Rendering&Visualizationに関しては、Rendering(POV-Ray)は差が無く、主に3DMark FireStrikeのVisualizationで差が付いており、まぁこれは別に不思議でも何でもない。

  • グラフ6

そして一番不思議だったOffice365の詳細(グラフ6)だが、例えばExcelを例にとると明確に差があるのはLoad/Save/Resizeといった部分で、こうしたケースではGPU内蔵による影響が意外に大きいようだ。逆に計算などは大差ない感じであった。

そんなわけで結果だけを見るとRyzen Pro 4000Gシリーズは既存のRyzen 3000Xシリーズに及ばないという格好になるが、実は実際の操作感そのもので言えば、あまり大きな差にはならない感じだ。強いて言えば、Disk I/Oが全体的に少し遅く感じる、というあたりだろうか?

◆CineBench R20(グラフ7)

CineBench R20
Maxon
https://www.maxon.net/cb_r20_dl_ms

  • グラフ7

ここからは純粋にCPU性能を、ということでまずはCineBench。改めて見ると、Ryzen 5 Pro 4650G≒Ryzen 5 3600X、Ryzen 7 Pro 4750G≒Ryzen 7 3700Xで、モデルナンバーの付け方は概ね正解だったということになる。One Threadの性能でも割と良い勝負であり、このあたりは動作周波数がそのままと性能とほぼイコールになっている感じに見える。

◆TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.15.17(グラフ8)

TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.15.17
ペガシス
http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html

やっているのは以前と同様、4枚の4K動画(VP9)をHEVCに変換する処理時間から速度を算出している。ただ今回は同時4Streamのみで処理を行った。ところでTMPGEncの場合、CPUを使う(x265)以外に、VCN(Video Codec Next)を利用する事も可能である。ただしこれが可能なのは当然GPU内蔵の製品のみで、Ryzen 5 3600X/Ryzen 7 3700Xでは行っていない。TMPGEncでは、CPUを利用する場合はx265、VCNを使う場合はAMD SDKをそれぞれCodecとして選択する形だ。

  • グラフ8

ということで結果。CPUでの比較で言えば、Ryzen 5 Pro 4650Gが8.0fpsなのにたいしRyzen 5 3600Xでは8.4fps、Ryzen 7 Pro 4750Gが10.9fpsなのに対しRyzen 7 3700Xは11.1fpsということで微妙に追いつかない程度ではあるが、かなり近い性能であることが判る。そしてAMD SDKを使うともう圧倒的であり、Ryzen 3 Pro 4350Gですら56.3fps、Ryzen 7 Pro 4750Gでは73.4fpsとリアルタイムでの変換に間に合う程性能が高くなっているのが判る。もともとRyzen 3000GシリーズからRyzen Pro 4000Gシリーズに移るにあたってエンコード性能が最大30%高くなるという話はあったが、ここまで上がれば一般的には十分だろう。

◆DxO PhotoLab 3 V3.3.0.4391(グラフ9)

DxO PhotoLab 3 V3.3.0.4391
DxO Labs
https://www.dxo.com/ja/dxo-photolab/

次に写真のRAW現像。こちらと同じ様に、結果は毎分辺りの処理枚数である。ちなみに今回E-M5のRAWは割愛し、α7-IIのみとした。

  • グラフ9

結果は? というと先のTMPGEncのx265の場合の再現といった感じである。一番効率が良いのは同時8Threadくらいで、12ThreadにするとむしろTaskの割り振りがうまく行かなくなるようで性能が落ちているのはまぁご愛敬として、その8Threadの場合で言えば、一応Ryzen 7 Pro 4750Gだと毎分10枚、Ryzen 5 Pro 4650Gでも毎分ほぼ8枚のRAW現像が可能で、これは十分高速な方だと思う。すくなくともこうした用途で、GPU非統合のRyzenと同程度の性能が期待できることは間違いない。

◆Basemark GPU 1.2(グラフ10)

Basemark GPU 1.2
Basemark
https://www.basemark.com/products/basemark-gpu/

ここからはGPU性能についてもう少し、ということでここからはRyzen 5 3600X/Ryzen 7 3700Xは無しである。3DMarkは速報レビューでご紹介したので割愛し、やはりGPU系の比較という事でまずはBasemarkを。バージョンはv1.2に上がっているが、測定手順はこちらと同様である、今回はQualityはMiddleのままとし、DirectX12/OpenGL/Vulkanの各APIでテストを行ってみた。

  • グラフ10

結果(グラフ10)を見て頂くと判るが、

Ryzen 3 3200G < Ryzen 3 Pro 4350G < Ryzen 5 3400G < Ryzen 5 Pro 4650G < Ryzen 7 Pro 4750G

という傾向がどのAPIでも、最小・平均・最大のどのフレームレートでも維持されているあたりは判りやすい。加えて言えば、これだけ性能差があれば、ゲームなどでも相応に性能が上がりそうな気はするのだが、Basemarkの場合はデフォルトだとレンダリング解像度は4Kながら画面解像度は720Pなので、解像度が上がった場合の性能はまた別という気もする。このあたりは次からのGame Benchmarkで見てみたい。