ソニーの「VLOGCAM ZV-1」とパナソニックの「LUMIX G100」は、ともにVlog(日常を記録する動画ブログ)用の動画を撮影するための機能を強化したビデオブロガー向けのカメラとして登場しました。しかし、いずれも本体サイズの割に比較的大型のセンサーを搭載しており、Vlog用途だけではもったいないほどの性能を備えています。これらのVlog用カメラ、普通のスチルカメラとして写真の撮影に使っても満足できるのか…?と疑問に感じた落合カメラマンに、使用感をリポートしてもらいました。まずはソニーのZV-1です。

RX100シリーズと比べてちょっぴりイケてるところも!?

そもそも「ぶいろぐ」っていう音の響きがイヤ(笑)。だいたい「ぶいろがー」ってナンなんすか……。なんて時代遅れなことをヘソと性根の曲がったジジイは思っていたりするワケです。カメラとVHSデッキが別体だったころから自撮りを含めた日常をビデオで撮影していたワタシにしてみりゃ、結局のところ気軽に撮影&発信できる今の時代が眩しすぎるだけなのだけど、今さら必死の形相で時流にしがみつく気にもなれないしねぇ。

ってなワケで、醒めたふりして地味に過ごしている令和の日々。「世界中のVloggerの意見を反映させたカメラ」であるらしいソニー「ZV-1」を手にしても、私はいつも通りに「自分で撮れる写真」を撮るだけだ。「完全にVlogに特化したカメラ」とされる製品をフツーのカメラとしてのみ使う背・徳・感っ! 世間に対する後ろめたさこそがワタシの生きる糧……というのは半分冗談だけれど、でもこのZV-1、RX100シリーズのオーナーにとっては、写真を撮る道具としても案外アリなんじゃないかと思わされたのは意外だった。ちなみに、今回はパナソニックの同コンセプトモデル「G100」と同時に使って両者の使い心地を確認している。

  • ソニーが2020年6月に発売した「VLOGCAM ZV-1」。実売価格は、ボディ単体モデルが9万円前後、Bluetooth接続のグリップが付属するシューティンググリップキットが10万円前後。1万円のキャッシュバックキャンペーンを8月1日まで実施している

ソニーのラインアップには、「デジタルスチルカメラ サイバーショット」とは別に「デジタルカメラ VLOGCAM」カテゴリーが存在。その「VLOGCAM」は、「デジタル一眼カメラ」とはもちろん、「デジタルビデオカメラ ハンディカム」や「アクションカム」「プロフェッショナルカムコーダー」などとも別枠の、しっかり独立しているモノとして扱われている。つまり、ヤル気とホンキはホンモノ。インフルエンサーとやらが主導する当初の妙な盛り上がりが今もしっかり継続しているのだとすれば、その展開、まことにお見事であります。

一方、RX100初代、RX100M3、RX100M6を愛用してきており、なおかつバリアングルモニター容認派(というより、コンデジやミラーレス機ではむしろバリアングルモニター推奨派)の私としては、ZV-1にはまず「バリアングルモニターを装備したRX100みたいなもの」という視点においてグッとくるものがあった。「RX100シリーズにバリアングルを!」ってなことを熱烈に求めたことはないけれど、いざそんな感じのカメラと対面してみるとコレが意外に悪くない。いや、全然アリなのだ。

最初から本体に小ぶりなグリップ(的な部材)が装備されているのもイイ。所有するRX100には、すべて別売りのアタッチメントグリップ「AG-R2」を貼り付けてきた身にとって、カメラを持ったときに指をかけられる部材が最初からボディに備わっているのは結構なプラスポイントになり得る。ZV-1のそれは、味も素っ気もないカタチだけれど効果に不足はない。

そして、意外なところでは、撮影モード切り替えがボタン操作なのも悪くなかった(RXシリーズはダイヤル操作)。コンデジの操作系って、それがいわゆる高級コンデジであってもムリしてダイヤルにこだわらなくてもいいんじゃね? というのが個人的な考えなのだけど、そんな嗜好にピッタリくる「ダイヤルを廃したRX100シリーズ」みたいな風情のZV-1には、ちょっぴり斜めの方角から刺さるモノがあったということですな。

そんなこんなで、ZV-1をRX100シリーズの「ある種の進化形」として捉えた場合は、意外や写真を撮る道具としてもイイ感じでありました。モニターを裏返している状態からひっくり返すと電源ONになるなんていう粋な動作もできるし。でも、あくまでも個人的には、ストラップの両吊りができない時点で却下(あれ?)。コンパクト系カメラにそれを求めるのは酷かも知れないけれど、RX100シリーズは両吊りができる。小さなカメラは、首から提げ、なおかつ真っ直ぐ前を向くカタチで持ち歩きたいんだよね。オシャレで“使える”コンパクトカメラであるならなおさら。それが、おぢさんの願いなのです(笑)。

で、結論。ストラップの両吊りができて、バリアングルモニターで、しかも35mm判換算の画角域がRX100M6やM7と同様24-200mm相当になっている「RX100M8」が出たら、迷わず買っちゃうだろうなー。しかし、その一方で、レンズやAF動作に関してRX100M5Aクラスのスペック+αでヨシとするのであれば、ZV-1を買っちゃうのもアリだと感じることにもなっている。ホワイトボディに付属の白いモフモフ(ウインドジャマー)の可愛さは反則レベルなので、どうせ買うならホワイトだな。ただ、白いカメラって、場合によっちゃ映り込みが大変なことになりそうだけど、それってVloggerにはカンケーないハナシなのかね?

  • クリエイティブスタイルの切り替えも普通にできる。っていうか、モノクロの動画って面白いね~。でも、写真と同様、モノクロにハマるとロクなことはない。モノクロってさ、かなりキケンな沼だと思うんだよね(ISO640、1/30秒、F1.8、9mm)

  • やっぱバリアングルっしょ! 光軸とモニターの位置がずれるとフレーミングしにくいって? いやいや、モニターの中の世界に没入してしまえば問題ないっす! でも、RXシリーズよりも少しだけズシリとくる手応えとかボディの余計なガッチリ感はバリアングルモニター装備の弊害かな。善し悪しは確かにある(ISO125、1/60秒、F4、+0.7補正、21mm)

  • そして、接写に近い撮影だとバリアングルモニターの扱いづらさ(被写体を思い通りに捉えにくいところ)がドドーンと面に立つことも。だから、こういう被写体を追いかけているときはバリアングルを嫌う気持ちもわからんではない。でも便利。……なんてことをグルグル思ったりもするワケです(ISO125、1/320秒、F4、9mm)

  • コンデジながら遠景をも難なくこなす(描写に不満を感じさせない)のは1インチセンサー搭載機ならではの利点。ただ、堂々と「ピントが合いましたっ!」といっているのに実際にはわずかにピントを外していることがあるのは、RX100M5Aの世代と同じ感じなので、ピント合わせにはチェック、ダブルチェックが必要だ(ISO125、1/500秒、F4、-1露出補正、26mm)

  • ウインドジャマーのモフモフがカワイイんで写真を撮るときも付けっぱなしで楽しんでしまった(意味なし)。でも、モフモフが付いていると電源スイッチが隠れてしまって、MODEボタンの間違い押下が頻発。いや、ワタシがイケナイんですが(ISO125、1/400秒、F4、-0.7露出補正、26mm)

  • バリアングル液晶や撮影モードボタンの搭載などRX100シリーズにはなかった部分を評価しつつ、最新のスチルカメラとしてはスペックがいささか中途半端であることを指摘する落合カメラマン。それでも、ホワイトモデルの存在がだいぶ気になっているようで…