高性能ミラーレスや一眼レフに迫る速写性能を持つことで人気を集めるソニーの小型軽量デジカメ「Cyber-shot RX100M6」ですが、機能を強化した兄弟モデル「RX100M7」が早くも登場しました。一瞬のシャッターチャンスを逃さずキャッチするための強力な撮影機能が追加されたことを高く評価する落合カメラマンですが、RX100M7登場の背景には来年の大きな新製品の伏線が張られている……ともニラんでいました。

  • ソニーが8月30日に販売を開始した高画質コンパクトデジカメの最新モデル「Cyber-shot RX100M7」。1年ちょっと前に登場した「RX100M6」とレンズや撮像素子は同じながら、速写性能や動画まわりの機能をさらに高めたのが特徴。実売価格は税込み14万円前後で、在庫は比較的豊富だ

突き抜ける要素に欠けると感じたRX100M7

RX100M7は、小っちゃなボディに24-200mm相当のズームレンズを搭載する、RX100M6直系の兄弟機である。そう、兄弟だ。まぁ、別に姉妹でも同僚でもかまわんのだけど、ともあれRX100M7をRX100M6の「後継機」として捉える向きはもはや存在しないだろう。なぜなら、RX100シリーズに「後継機」という概念は存在し得ないからである。

理由は簡単。RX100は初代から7代目まですべてのモデルがラインアップされ続けているからだ(M5はM5Aへのマイチェンを経てのラインアップ継続)。RX100シリーズは、縦ではなく横の繋がりで捉えるべき希有なコンデジ軍団なのである。

そんななか、「M6」と「M7」の関係は、「RX100」というくくりの中で見ると、歴代もっともモヤッとしているように感じた。今回「M7」では、「スピード性能」面でソニー製フルサイズミラーレス機のフラッグシップモデル「α9」との共通性を高らかに謳っているのだけど、だからなのかナンなのか、ズバッと突き抜ける要素が逆にぼやけてしまっているように思うのだ。

例えば、AF・AE追随連写に関し分かりやすい数字を見ると、「M7」はα9と同様の「20コマ/秒」というスペックを身にまとっている。これ、コンデジとしては飛び抜けている高速性だ。しかし、その点に関し「M6」はすでに「AF・AE追随24コマ/秒」を実現済み(M5とM5Aも24コマ/秒)。24コマ/秒が20コマ/秒よりもエライなんていう気は毛頭ないけれど、数字だけを見ると「アレ?」ってことになりかねない。

「M7」では、α9と同じく連写中のブラックアウトフリーが実現されているところが違うといわれれば、なるほど確かにその通り。「M6」などの24コマ/秒は、連写中表示がアフタービューのパラパラ表示になるので、撮影時の被写体の追いやすさはブラックアウトフリー表示が可能な「M7」の方が断然、上だ。60回/秒のAF・AE演算処理(これもα9と同じ「数字」)も相まって、厳密にはAFの動体追従性能も向上しているかもしれないし。今回使った限りにおいては、そのあたりにM6との明確な差は感じなかったけれど、“実力向上”はしっかりなされているハズなのだ。でもねぇ……。

  • 動体追従性能を試してみた。撮り始めはピンぼけ。寄りが足らないのは200mm相当の限界ということでご容赦を

  • まだピントは甘い。コンデジだし、仕方ないのかな……

  • と思っていたら、ここでいきなりピントをつかみ直した! 20コマ/秒の連写を行いながらのこの仕事ぶり。見事である

  • このような状況で背景にピントを持っていかれてしまうと、永遠にピントを取り戻せないカメラが多いなか、RX100M7は一眼レフにも近いAFの動作を見せてくれる

  • キビシイ見方をすると、あともう一歩のピントの追い込みが欲しくなるけれど、十二分に及第点の仕上がりだ。さすがはα9譲りのAF&連写である

「M7」のスペック設定って、まずは「α9のスペックに寄せる(似せる)」ことが最優先だったような気がしてならないんだな。実利面ではなく、イメージを重視しての「60回/秒のAF・AE演算処理」であり「20コマ/秒のAF・AE追随連写速度」ってことだ。

別に悪い話じゃない。マーケティング優先の切り口ならば十分アリな措置だ。だって、この「α9譲りのスペック」を突きつけりゃ、センサーサイズとカッコカタチが似ているだけの競合機は簡単に吹き飛んで遙か彼方のミジンコサイズだし、私のようなヘソ曲がりではなく普通のユーザーには「M7」の魅力を端的に分かりやすくアピールすることもできるからね。でも、“RX100愛”にあふれる私(自分でいうと胡散臭いですな)から見ると、やっぱりちょっとモヤッとしているように感じちゃう。RX100って、もっと真っ直ぐなヤツだったハズ。何か事情があるんじゃないかなぁ。