4月下旬、ソニーがフルサイズ対応の単焦点Gレンズ3本「FE 24mm F2.8 G」「FE 40mm F2.5 G」「FE 50mm F2.5 G」を一気に発売しました。この3本、見た目やサイズがほとんど同じだけでなく、実売価格も79,200円で同じという美しいシンクロっぷりが話題になりました。この純正三つ子レンズを手にした落合カメラマンが思わずエキサイトしてしまった理由は…!?

  • 4月下旬に登場したソニーの単焦点Gレンズ3兄弟。装着しているカメラはフルサイズミラーレス「α7C」だ

三つ子レンズの誕生に垣間見えるソニーの“余力”

この単焦点3兄弟がリリースされると知ったとき、直感的に「こりゃヤバいな」と思った。「キヤノン&ニコンに追いつけ、追い越せ!」の猛追を明確にしてきたソニーが“余力”を見せ始めたように感じたからだ。

ボディ性能で圧倒的な差を見せつけ、さらには大口径高性能レンズのラインアップでも不足を感じさせないようになってきたソニーα。いや、レンズに関しては、正確を期するなら「不足を感じさせなくなっているEマウントのレンズ」というべきなのかもしれないけれど(最近、Aマウント関連の話題とは、すっかりご無沙汰ですものねぇ)、ともあれそこに「比較的安価」で「外観・質感にも相当に気を配り」、しかも「絞りリングまで付けちゃったりしている」趣味性が高いと受け止めることも不可能ではない3本の単焦点レンズが一挙に加わったことは、けっこう意味深い状況なのではないかと思うのである。「これってレンズメーカー潰しじゃん!」などと周囲に思われるであろうことを含め……。

  • 3兄弟でもっとも広角の「FE 24mm F2.8 G」(SEL24F28G)。実売価格は79,200円

  • 50mmよりも少し広い「FE 40mm F2.8 G」(SEL40F25G)。先端がすぼまったコンパクトなレンズフードが付属する。実売価格は79,200円

  • 50mmの定番標準レンズ「FE 50mm F2.8 G」(SEL50F25G)。こちらもコンパクトなレンズフードが付属する。実売価格は79,200円

  • FE 24mm F2.8 G

  • FE 40mm F2.5 G

  • FE 50mm F2.5 G

  • 24mmは、ちょいボケ部分の再現にも暴れが見られず扱いやすい印象である一方、40mmと50mmの描写傾向は、ちょいボケのクセを含め同じレンズなんじゃないかと思うほどに酷似。画角の違いは、こうして比べてみるとたったの10mm差とはいえ想像以上に明確で、撮影をしているときの感覚には相応に異なるアプローチが求められた。すべてボディ側の周辺減光補正OFF+開放F値で撮影

イマドキの設計で小型軽量&描写力を両立

そっくりな見た目を持つ3兄弟だ。それもそのはず、大きさは、3本とも68×45mm(最大径×長さ)で共通。フィルター径も揃って49mmである。サイズ感はもちろん、外装デザインを含め、完全に“一卵性の三つ子”なのだ。

重さは、24mmが162gであるのに対し40mmは173g、50mmは174gと少しの差があるが、レンズメーカー製の同種レンズとの比較では、いずれも軽さが際立つ仕上がり。サイズ感に関しても、多くの相手に対しより小さいことをアピールできるシルエットに収まっている。

フルサイズのフラットボディ機「α7C」とのマッチング(見た目および使用時の各種バランス)を考えるならば、このレベルの小型軽量化は必須であったはず。いや、現代の感覚においては、動画対応を最優先しての「小型軽量」であり「3兄弟同一サイズ」であると認識すべきなのかもしれない。すなわち、「レンズ交換を行っても重さや重心位置に変化が生じない=ジンバルやドローンに対する潜在的な適応力を高く維持する」ことを目論んでの仕様設定であることも十分に考えられるということだ。

α7Cのキットレンズ「FE 28-60mm F4-5.6」が素晴らしい写りを提供してくれる今の時代において、「G」のバッジをつけた単焦点レンズがヤワな描写を見せるハズはないでしょーということで、描写に関しては最初から何も心配はしていなかったのだけど、実際その期待通りの仕上がりが得られている。いずれのレンズも、シャープネスに関しては開放絞りすらも躊躇なく使えるデキだ。

ただし、いたずらにカッリカリな描写をするレンズではない。どこまでがレンズ本来の性能で、どこからがボディの介在が生み出している印象なのかは判然としないものの(使用ボディはα7C)、エッジの立ち方は出しゃばらずに繊細。そういう意味では、ちゃんと「今ふうなレンズ」でもある。

一方、開放時のちょいボケ部分の描写には、特に40mmと50mmに煩雑さを感じることがあった。大きくボカせる状況、例えば主要な被写体にグッと寄っている場合などは、まぁまぁ素直な後ボケを見せてくれるのだが、ときに二線ボケっぽくなるちょいボケは鬼門。その点に関しては、24mmがもっとも安心して使える手応えではあった。

ちなみに、ボディ内レンズ補正のうち、歪曲収差は3本すべてのレンズでOFFにできない。つまり、補正なしではそれなりの(相当な?)歪曲が残っているのであろう「割り切りの効いた設計」になっていることが想像できる。また、周辺減光補正なしでは周辺光量落ちが明確なのも、小ささを確保するための割り切りのひとつだろう。これら前向きな設計思想により、この小ささと軽さと描写力の好バランスが得られているのだとすれば、100%結果オーライだ。現代においては、文句を言う筋合いの話ではないと判断する。

▼「FE 24mm F2.8 G」の作例(以下3点)

  • f16までガッツリ絞り込んでの撮影。シャープネスは、中央部が最も高く周辺に行くに従いわずかに緩くなっている印象だが、回折補正系の処理が何らかの影響を及ぼしているのかも? さまざまな事象をガッツリ写し込める画角が魅惑的だ(FE 24mm F2.8 G使用、ISO320、1/30秒、F16.0、-1露出補正)

  • f11での逆光撮影。光源(太陽)直近の再現にはコントラストの低下が見られるが、絞り込んでいることもあり逆光の影響は最小限に抑えられている(FE 24mm F2.8 G使用、ISO1250、1/2000秒、F11.0)

  • ほぼ最短撮影距離の開放F値撮影でも、ボケに気になるクセは見せない。ピント面の硬すぎない描写再現もイイ感じだ。いついかなるときにも素直な描写を見せてくれる24mmなのである(FE 24mm F2.8 G使用、ISO100、1/250秒、F2.8、-0.3露出補正)

α7Cが2台あったら…!? オチアイ的へそ曲がりレンズ選び

私は、この3兄弟のデビューを知ったとき、冒頭のとおり「ヤバい」と感じたのだが、実はそこには、すでに述べている理由とは異なるもう一つの“個人的ヤバさ”が存在していた。何故か唐突に「2台のα7Cそれぞれに24mmと50mmを装着してお出かけしたら楽しいだろうなぁ~」などと一人で盛り上がってしまったのだ。すでにα7Cは所有している。そこにもう1台を買い足し、24mmと50mmを手に入れてウッシッシ……ということである。うむ、この発想は本格的にヤバいゾ(自覚しています)。

そこで、今回こうして試しにやってみたわけである。いってみりゃ役得ですわ。んで、結果がどうだったのかといえば……うーん、想像したほど楽しくはなかったかなぁ(アレ?)。私の中におけるα7Cって、やっぱりまずは便利に使い倒してナンボのボディなので(トラッキングAFの賢さにとことん助けられてます)、少なくとも今現在の思考&嗜好でいうと、最終的には「タムロン28-200mm F2.8-5.6 Di III RXDとのコンビが最強!!」との判断に落ち着いてしまうのである。すいません、オモロない結論で……。

  • 2020年6月に販売が始まったタムロンのα用高倍率ズームレンズ「28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD」(Model A071)。実売価格は85,000円前後

でも、困ったことに、α7Cをもう1台買い足したくなっている気持ちは盛り上がる一方だ。なぜなら、新たな「2台活用法」に気づいてしまったから。それは、「α7C+FE 24mm F2.8G & α7C+タムロン28-200mm」の2台態勢、もしくは「α7C+FE 24mm & α7C+FE 28-60mm」の2台態勢だ。1台は24mm専用ボディにする。そして、もう1台でズームレンズを操る。くぅ~っ! コイツはシビれるコンビになりそうだぜ。

▼「FE 40mm F2.5 G」の作例(以下3点)

  • f11まで絞り力強い描写を得る。どちらかといえば35mmに近い使い心地ながら、画角的な縛りはちょっとキツめ。そんな、少しアタマが痛くなったりしそうな画角に魅力を感じたのなら“買い”だ(FE 40mm F2.5 G使用、ISO100、1/80秒、F11.0)

  • 開放F値での撮影。目に付く部分にこの程度のボケを与えられるのなら、ボケ再現にクセは感じずに済むだろう。なお、絞りリングはクリックレス設定も可能になっているほか、F22の先にある「A」ポジションに至る間隔は他の絞り値よりも広くとられ、さらには手応えも少し重くなるなど、この3兄弟、作りはとことん丁寧だ(FE 40mm F2.5 G使用、ISO200、1/2000秒、F2.5)

  • 開放F値での逆光撮影。部分的にフレアーが生じているが、その影響は狭い範囲にとどまる。逆光耐性は非常に高い(FE 40mm F2.5 G使用、ISO100、1/2000秒、F2.5)

▼「FE 50mm F2.5 G」の作例(以下3点)

  • 開放F値での逆光撮影。AF時35cmとされているほぼ最短に近いレベルでの撮影だ。太陽をうまく隠しすぎたきらいはあるものの、極端な腰砕けは感じさせぬ優秀な仕上がり。そして、大ボケ再現はご覧の通り。分相応な使いこなしが功を奏するレンズであるといえる(FE 50mm F2.5 G使用、ISO100、1/4000秒、F2.5、+0.3露出補正)

  • 設定絞り値f8が誘う繊細、かつリアルな描写が心地よい仕上がり。今回の使用ボディはα7Cで、絞り操作は終始レンズの絞りリングで行ったのだが、これがなかなかに新鮮な撮影感触ではあった。このレンズにおける絞りリングの存在は大正解(FE 50mm F2.5 G使用、ISO200、1/50秒、F8.0)

  • このジャンルのレンズは、レンズメーカー製にも優秀な製品が多く選択に迷うところではあるのだが、軽量である点とAFスピード、そしてレンズボタン(フォーカスホールドボタン)の存在と同ボタンに任意の機能を割り当てられる点は、純正レンズとしての大きなアドバンテージになり得るだろう(FE 50mm F2.5 G使用、ISO200、1/50秒、F2.5、+1露出補正)

ちなみに、単焦点3兄弟の中から1本だけ買い足すなら、これは24mmではなくFE 40mm F2.5Gってことになりそう。35mmと50mmの良いところ取りをしているとも捉えられる独特な使い心地は、50mmほど窮屈ではなく、さりとて35mmほど自由ではないという、ほどよい束縛感に満ちており、使いこなしに妙な快感が伴うことになっていたからだ。実用一辺倒だったαに吹き始めた新しい風を一番爽やかに感じられたのが、実は40mmだったというワケ。これ、動画サイドの皆さんが重宝するだけじゃ、もったいないんじゃなーい??

  • ソニー純正三つ子レンズの仕上がりに満足の表情を浮かべる落合カメラマン。1本だけ買うなら…と挙げたFE 40mm F2.5Gは、独特の画角がもたらす使いこなしの絶妙な難しさが写真を追い込むことの楽しさが味わえると評価する。とはいえ、落合カメラマンの目下のお悩みは、α7Cをもう1台追加で買うかどうかのようで……