京都大学(京大)と北陽電機は、2020年7月に発表したLiDARに搭載した「フォトニック結晶レーザー」のレンズを必要としない特性を活かすことで、今回、そのサイズを従来比で1/3に小型化することに成功したと発表した。
同成果は、京大 工学研究科の野田進教授、同・石崎賢司特定准教授、同・メーナカ・デ・ゾイサ講師、同・吉田昌宏助教、同・國師渡研究員(ロームから京大に常駐)、そして北陽電機の技術陣を加えた共同研究チームによるもの。
現在、日本では国を挙げて自動運転の技術開発が進められており、2022年度をめどにエリア(高速道路をはじめとする自動車専用道路など)および車両を限定したレベル4の自動運転の実現を目指している。そうした自動運転車両を筆頭に、農機や建機、工場や倉庫における自動搬送車両やロボットなど、自動運転・自動操縦が求められている車両やロボットに搭載可能な高性能かつ小型軽量、安価なセンサが求められている。
LiDAR(Light Detection and Ranging)は、自動運転車両やロボットに有用なセンサの1つとして考えられているが、搭載される半導体レーザーには、改善点が複数残されているという。1つ目は、光出力増大のために面積を拡大したブロードエリアタイプが用いられるが、高出力時にビーム品質が劣化してしまうという問題があった。
また、非点収差のために対称でない形でビームが広がり、またその広がり方も大きいことから、複雑なレンズ系を用いてビームを調整する必要がある。そのため部品数の増加し、また精密な調整作業が必要とされることから、結果として高コストで、かつ複雑なレンズ系のため、小型軽量化ができず、空間分解能が低いという課題もあった。
さらに、センシング時には、通常の半導体レーザーは発振波長幅が広く、動作波長の環境温度依存性が大きいため、広い帯域の光学フィルタしか用いることができず、信号対雑音比が低いといった課題などもあったという。
それに対してフォトニック結晶レーザーは高出力動作でも高いビーム品質が保持され、広がり角も狭く、レンズ系も必要としないといった特徴を有しており、これを光源としてLiDARに用いることで、小型軽量かつ安価な高性能LiDARの実現が期待されるようになっている。
研究チームは2020年7月にフォトニック結晶レーザーを搭載したLiDARを発表しているが、この時は、独自開発した「二重格子フォトニック結晶」構造を採用した点が特徴であったという。同構造は、2つのフォトニック結晶格子を、xおよびy方向にそれぞれおよそ4分の1波長ずつずらして重ねたもので、これにより、原理的には大面積でも単一モードで動作が可能となったとする。
今回は、こうして開発されたLiDARシステムに対し、光源部と受光部の一体化を図ることで、高さを60%に、体積は35%に小型化することに成功したという。また、フォトニック結晶レーザーそのものも温度特性の向上が図られ、-40~+100℃でも安定した動作が可能になったという。
2021年7月15日訂正:記事初出時、「京都大学(京大)と量子科学技術研究開発機構(量研)は」と記載させていただいておりましたが、正しくは「京都大学(京大)と北陽電機は」となりますので、当該部分を訂正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。