ルネサス エレクトロニクスは4月19日、3月19日に発生した火災の影響により生産がストップしていた同社の生産子会社であるルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリング那珂工場の300mmウェハライン(N3棟1階)が4月17日より生産再開したことを発表した。

同社がかねてより目標に掲げていた火災から一か月以内の製造再開を達成した形となり、代表取締役社長兼CEOの柴田英利氏は「国内だけではなく、海外のサプライヤーなど多くの方々に、通常では考えられないご支援を頂き、奇跡的に生産を再開することができた」と支援者に対する感謝を述べた。

4月19日時点の生産能力は火災前と比べ10%弱としているが、4月25日までに30%、今月中に50%、5月中に100%の生産能力と、段階的な回復を目指すとしている。

また、生産された製品の出荷に関しては、製造装置の手配の関係で3月30日に発表した見込みよりも少し後ろ倒しになる見通しだが、代替生産による製品出荷量が増加する見込みのため、全体の出荷量としては後れを取らない想定だとした。

  • 生産再開見通し

    ルネサス エレクトロニクスが4月19日に発表した生産再開見通し。赤線が3月30日に行った説明会での出荷量予測で、青線が4月19日に修正して発表した生産量の予測、緑線が代替生産による出荷量見込み (出所:ルネサス発表資料)

3月30日に行った説明では、生産停止期間を2か月と想定した場合、生産ロス分の90%を外部ファウンドリを含めた那珂工場以外での生産で賄う予定だとしていたが、この割合が98%まで増加する見通しが立ったため、全体の代替生産による出荷量を上方修正したという。

加えて、生産タイムラインを規定する主要要因となる、製造装置の調達状況についても、火災の影響を受けた23台のうち17台が4月中に調達できるめどがたったと説明しており、調達手配が順調に進んでいることを強調する。

  • 調達状況

    4月19日時点での製造装置の調達状況。グレーでマークされた装置4台については既存装置の能力増強などにより当面は無くとも復旧が可能だと判断しており、一番下のCMP装置関しては、納期の調整中だという (出所:ルネサス発表資料)

また、今回の出火元となったCuめっき装置がなぜ発火したのかといった根本原因の特定には至っていないとするが、火元となったCuめっき装置と現在も同社で使用しているCuめっき装置4台は、異なる電源配線構造を採用しているため、同じ原因で稼働しているCuめっき装置が発火する可能性はないとするほか、想定外の発火対応として、CO2消火器の設置、自動ダンパーの設置を行ったことに加え、5月には煙検知器と熱センサの設置を、6月には煙・熱センサと連動して自動でCO2消火器を放出する仕組みを整える予定だとしている。

  • 火災対策予定

    Cuめっき装置に対する火災対策 (出所:ルネサス発表資料)

なお、工場内の修復は進んでいるものの、火元の近くの部分では、ウェハの自動搬送に使用するレールがまだ復旧していないとしており、自動化設備に関して一日も早く復旧させていく予定だとしている。

  • 現在の火災発生エリアの様子

    火災発生エリアを撮影した現在の様子。全体的に修復されているが、右の写真では、天井に設置されているウェハ搬送用のレールが途中で途切れてしまっているのがわかる (出所:ルネサス発表資料)