衝撃の初登場からもうすぐ3年。今や完全にG-SHOCKの定番ラインとなったフルメタルオリジン。その新作「GMW-B5000RD-4JF」が発売となった。メーカー希望小売価格は77,000円(税込)。金属外装の美しさを強調するカラーと仕上げ……という点こそ既定路線を踏襲するが、今回採用したボルドーIPには、今まで語られていない秘密がありそうだ。まさに熟成のワインを思わせる複雑妙味な輝きを、写真でじっくりご堪能いただきたい。

  • G-SHOCK「GMW-B5000RD」

    新境地を拓くか、GMW-B5000RD-4JF

単なるカラバリの域を超えた技術的挑戦が見える

GMW-B5000RD-4JFのベースモデルは「GMW-B5000D-1JF」。質感高いSS(ステンレススチール)外装に加え、正確な時刻を維持するマルチバンド6(世界6局)対応の電波時計、スマホ用アプリ「G-SHOCK CONNECTED」と連携してワールドタイムやアラーム、タイマー、リマインダーなどを簡単に利用できるといった要素を受け継いでいる。では、いわゆる「カラーバリエーションモデル」なのかと問われれば「その域を大きく超えている」と、私は答えたい。

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    ボルドーIPを身にまとったGMW-B5000RD-4JF

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    コントラストの高いSTN-LCD(液晶)を搭載。時刻視認性はきわめて高い

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    厚さは13mmとそれなりだが、装着時には不思議とスリムに感じるのはデザインの勝利か

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    鏡面処理されたスクリューバックは、DLC(Diamond Like Carbon)処理で耐傷性を高めている

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    オリジン独特のバンドのくぼみがやけに色っぽい……

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    バックルにもG-SHOCKの刻印

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    バックルはストッパー付き三つ折れ式ムクバックル。こちらもSS製でボルドーIPが施されている

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    専用アプリG-SHOCK CONNECTEDなら、ワールドタイムの設定も簡単。地図から都市を選んで設定するボタンを押すだけ

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    個人的には魅力的なリマインダー機能。リピート設定も可能。タイトルは半角カナで、時計の液晶にも表示される

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    ボタンひと押しで現在地の時間と場所をメモリーする「Time & Place」。場所の取得にはスマホのGPSを使用

今回採用された着色技術「ボルドーIP」は、2020年11月に登場した「MTG-B2000BD-1A4JF」のベゼルやインダイヤルリングで使用されていたものと同じ。ボルドーとはうたうものの、色味は複雑かつ艶(あで)やか。特に白色光下では、明確に○○色と断定するのが難しい輝きを放つ。

ケース、バンド、見切りなどが統一されたIPで着色されているが、パーツの形状や仕上げ、配置された角度によって赤にもピンクにも、カッパーにもオレンジにも、そしてワインの澱(おり)のような黒にも変化して見えるのだ。ときにはケースやバンドのコマなどがパーツごとに微妙に異なるカラーリングに見えたりする。こうなると、まるで別の時計の見ているようだ。

  • G-SHOCK「GMW-B5000RD」

    ボルドーIPを先行して使用したMTG-B2000BD-1A4JF

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    多くの光源下ではこのように見えるが……

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    ケース上のバンドと下のバンドでは(素材もIPも同じなのに)色の表情が異なって見える

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    干渉色による色の変化がよくわかる

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    ラグからバンドにかけての、この色気!

  • G-SHOCK「GMW-B5000RD」

    GMWシリーズはこのモデルのために企画された、と言われても納得してしまいそうだ

カシオ広報によれば、このボルドーIPには「干渉色」という特性があるとのこと。干渉色については長く難解になるので割愛するが、早い話、光の条件や被膜など構造的な理由で膜の上面と下面の光(波長)が干渉し合い、複雑に発色する現象だ。本来は透明なはずのシャボン玉や水面に浮いたオイルに生じる虹色も、薄膜による干渉色だという。

ちなみに干渉色は、複雑で艶(つや)やかな発色を求める化粧品などにも応用されている。また、干渉色自体は紫外線による退色がないことから、自動車などの工業製品でも研究が進んでいるようだ。

  • G-SHOCK「GMW-B5000RD」

そう考えると、実はGMW-B5000RD-4JFには(公式の製品情報では触れていないが)カシオが力を入れているCMF(Color・Material・Finish / 色・素材・仕上げ)開発の次世代試作的な意味合いが込められているようにも思える。MT-G B2000BDで一部のパーツに採用したボルドーIPを時計全身に拡げ、真に意図していた効果と性能をより深く検証する……とか(信じるか信じないかは、あなたしだいです)。

歴史や技術など、背景に「語れるエピソード(うんちく)をどれだけ持っているか」は、時計の魅力に関わる大きな指標であり愉悦だ。それは奇(く)しくも、ワインにも通じるものがある。

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たとえば、ワインの風味を決める要素のひとつに「テロワール」という概念がある。それは「醸造技術以外の何か」。原料であるぶどうの品種に最適な熟成をもたらす土壌や気候風土を指す。現在は世界各国でカベルネ・ソーヴィニォンを使用したワインが作られているが、やはりその気品あふれる力強さは、歴史あるボルドーで育み醸造されたものに到底かなわないとされる。なぜなら、前述のテロワールの中に、ボルドーのシャトーで働く作り手たちの誇りが含まれているからさ。じゃ、乾杯(ここでマスクを外す)。と、そんな話を聞いてからグラスを傾けると、ワインがひときわ美味しく感じるだろう。

艶めくバーガンディ(ボルドー色)は、シリーズ屈指の大人の色気を感じさせる。毎日着けていても見飽きない個性を持ちながら、悪目立ちもしない。干渉色という新たなCMFをまとったGMW-B5000RDは「最新のテクノロジーを切り拓き、進化を続けるスピリッツで常識を超える」そんなG-SHOCKのイメージを見事に体現した一本だ。

  • G-SHOCK「GMW-B5000RD」

    スクリーン上のレターの精度がフェイスを引き締める

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    ベゼル上の文字は刻印。色埋めされていないがゆえの美しさ

  • G-SHOCK「GMW-B5000RD」

    ボタンもDLC処理され、高級感と耐傷性を高めている

  • G-SHOCK「GMW-B5000RD」

    ベゼル上面のヘアラインとケースの鏡面仕上げのコントラストに見惚れる