自然風に近い扇風機にスチームを利用するトースター、子どもの目に優しいデスクライトなど、独自の視点で新しい製品を次々と世に出すバルミューダ。そんなバルミューダが今度は掃除機の新製品「BALMUDA The Cleaner」を発表しました。
BALMUDA The Cleanerの特徴は、なんといっても軽い力で360°自由に動くヘッド。そして、ホウキのような自然なデザイン。発表会で実機に触れたので、気になる使い心地などをレポートします。BALMUDA The Cleanerは、54,000円(税別)で11月17日の発売です。
まるで浮遊しているかのような独特の掃除感
BALMUDA The Cleanerは、さまざまな点で一般的なコードレススティッククリーナーと異なっています。それを最初に感じたのが、掃除中のヘッドの軽さと自由度。コードレス掃除機には「自走式ヘッドがグイグイ前に進む」という製品がありますが、BALMUDA The Cleanerはヘッドが360度自由に回転し、前後左右好きな方向に移動させられます。まるでフワフワと浮いているヘッドを移動させているような不思議な掃除感覚です。
【動画】ヘッドの自由度に注目
【動画】BALMUDA The Cleaner、片手で持ってもも軽い力でヘッドが360度クルクル動き、見ているだけでも楽しい!
この浮遊感を実現しているのが、ヘッド内に2本の回転ブラシを搭載した「デュアルブラシヘッド」の存在。一般的な掃除機は回転ブラシを1本しか搭載していませんが、BALMUDA The Cleanerは2本のブラシを配置し、それぞれが同じ速度で内側に向かって回転しています。これにより、床面との摩擦を可能な限り減らし、ヘッドが浮いているような感覚を得ることができます。
動画のようにヘッドが自由自在に動くのは、ヘッドと本体の接続部に新しく開発した専用のユニバーサルジョイントを採用しているから。このジョイントによってヘッドが360°回転し、自在に傾けることも可能です。バルミューダは、この「360°スワイプ構造」と上記の「デュアルブラシヘッド」を組み合わせることで生まれる、浮いているかのような操作感を「ホバーテクノロジー」と呼んでいます。
もう一つの面白い機能が、ヘッド四隅にあるホイール。このホイールによって、ヘッドを壁にぴったりと沿わせて掃除するときにスライドしやすくなっています。ホイールは、壁や家具にキズが付きにくくしているのもうれしいポイントです。
【動画】床の中央を掃除したあと、スムースに壁際の掃除に移行。壁際のゴミもきっちり吸引しています。バルミューダによると、毎分400リットルもの空気を処理可能(強モード時)な高い掃除性能なんだとか
持ち上げたときの「重さ」を感じさせない本体デザイン
操作性の良さの反面、犠牲になったのは本体重量。BALMUDA The Cleanerは構造上、どうしてもヘッドに2つのモーターを搭載する必要があり、このためヘッドを含めた標準重量は約3.1kgになります。2kg以下の製品が多い最近のコードレススティッククリーナーと比べると、なかなかの重さです。
BALMUDA The Cleanerを使った床掃除は、ホバーテクノロジーのおかげでほとんど重さを感じません。このため、気になるのは掃除機を収納場所から出し入れしたり、階段掃除など「持ち上げる」動作が必要なとき。
筆者が実際に階段を掃除してみると、思ったほど疲れませんでした。理由は、BALMUDA The Cleanerの本体形状と掃除機を持つスタイルにあります。一般的なコードレススティッククリーナーは、ハンドル部分が輪っか状であったり、角度を付けて片手で操作しやすいデザインを採用しています。
一方で、BALMUDA The Cleanerはモーターなどの本体部から上はストレートな棒状。まるで竹ボウキのようなシンプルなデザインなのです。実際に使ってみるとわかるのですが、この棒状スタイルが「両手持ち」に最適。一般的なコードレス掃除機は、ハンドルや本体形状から片手使用がほぼ前提ですが、BALMUDA The Cleanerは片手でも両手でも好きなスタイルで掃除ができます。
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マイナビニュース・デジタルの林編集長にBALMUDA The Cleanerを持ってもらいました。両手で握っていると、昔ながらのホウキで掃除するスタイルに。こうやって両手でしっかり握れるスティック掃除機って意外と少ないんです
BALMUDA The Cleanerはハンディクリーナーにもなります。ハンディとして利用する場合は、本体のヘッドとハンドルを外し、ハンディ用のハンドルとハンディ用のノズルを装着します。なお、2021年の春ごろには、アタッチメントセットを発売する予定です(本体の発表に間に合わなかったそうですが、バルミューダらしく工夫に富んだアタッチメント集とのこと)
「美しさ」より「自然」なデザインを追求
新製品発表会では、BALMUDA The Cleanerの開発に関するさまざまな話がバルミューダの代表取締役社長である寺尾玄氏から語られました。
寺尾氏によると、バルミューダを一躍有名にした扇風機「GreenFan」の発売が2010年、その後2015年に発売した「BALMUDA The Toaster」が大ヒットしたこともあり、2018年の年末はバルミューダ内に「そろそろ次のジャンルの製品を開発しなければ」という空気が漂っていたそうです。
社内ヒアリングで圧倒的に多かったのは「掃除機を開発してほしい」という声でした。バルミューダといえば、今まで「こういう製品が欲しいから作ろう!」というアイディアベースの開発をしている会社。実は、こういったマーケティングベース、ビジネスベースの開発はこのBALMUDA The Cleanerが初めてだといいます。
寺尾氏は、社内に「掃除機を開発してほしい」という声が以前からあったことは知っていたそうですが、開発してこなかったのは、自分が掃除機よりもクイックルワイパー(※)を使っていたから。近ごろの掃除機は、部屋に出しっぱなしにするには赤や紫など色が派手で目立ちすぎるうえ、基本的に「前後にしか動かない」という点で不自由さを感じたからと話します。
※:クイックルワイパーは、花王株式会社の商標または登録商標です
ただし、清掃能力の高さや、掃除スピードなどは圧倒的に掃除機が勝ります。そこで、寺尾氏はバルミューダのエンジニアとともに「出しっぱなしにしても自然なデザイン、かつヘッドの自由度が高い掃除機」の開発に取り組みました。その結果が、今回のBALMUDA The Cleanerです。
発表で何度も繰り返されたのは、BALMUDA The Cleanerはデザインに「美しさ」を求めていない、部屋に置いていても「自然である」ことを目指したといいます。たしかにホウキのような自然でシンプルなフォルムは、どんなインテリアの部屋にもマッチしそうに感じます。
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「美しさより自然さ」といいながらも、細かな部分で美しさにもこだわっています。たとえば、本体を充電スタンドにセットすると微妙にハンドル部分が後ろに傾斜します。これはこの角度がもっとも美しいと判断されたから
今回、筆者がBALMUDA The Cleanerの実機を使って感じたのは「掃除が楽しい」ということ。とにかく、この浮遊感をともなう掃除感は今までになかった体験です。掃除を手伝ってくれなかった家族も、この楽しさを知れば我(われ)先にと掃除機をかけてくれるかもしれません(試作機を使ったバルミューダの社員には、そういう人も多かったとか)。