「Yoga Slim 750」は、14型ディスプレイを搭載して本体の重さが約1.36キロのモバイル利用を重視したノートPCだ。製品名にSlimとあるように、本体のサイズは約320.6(幅)×208.2(奥行き)×15.1ミリと薄型ボディを採用する。

  • オーキッドカラーとスリムなボディに見た人の第一声が「おおー、きれいっすね」となったYoga Slim 750

    オーキッドカラーとスリムなボディに見た人の第一声が「おおー、きれいっすね」となったYoga Slim 750

レノボ・ジャパンの「Yoga」というと、「ディスプレイが360度開くフリップタイプで、クラムシェルスタイルのノートPCとスレートスタイルのタブレットで使い分けることができる2-in-1 PC」と思うユーザーも多いかもしれないが、それは「マルチモードPC」と名付けた“Yoga C”のシリーズ(Yoga 920も含む)のことで、“Yoga Slim”のラインアップはディスプレイが最大で180度開くクラムシェルスタイルの“ウルトラスリムPC”に属する。

  • 評価機材の重さは実測で1341グラムだった

  • ディスプレイは最大180度開く

まずは基本スペックをよく確認してみる

Yoga Slim 750は、14型ディスプレイを搭載し、CPUにAMDの「Ryzen 5 4500U」を搭載するモデルだ。なお、Yoga Slim 750には、姉妹艦ならぬ姉妹モデルとしてディスプレイサイズが15.6型でCPUに第10世代Coreプロセッサーを採用する「Yoga Slim 750i(15)」、ディスプレイサイズが14型でCPUに第10世代Coreプロセッサーを採用する「Yoga Slim 750i(14)」がある。

Ryzen 5 4500Uは2020年1月にAMDが発表したZen 2アーキテクチャ採用の“第3世代”Ryzenモバイルでミドルレンジに位置する。6コア6スレッド対応、動作クロックは基本で2.3GHz、最大ブーストクロックは最大で4.0GHzとなる。L2キャッシュ容量は合計で3MB、L3キャッシュ容量は合計で8MBだ。統合するグラフィックスコアはRadeon Graphicsを導入しており、第2世代Ryzenと比べて動作クロックが向上し、グラフィックスメモリとのデータ転送速度も改善した。

  • “第3世代”のRyzen 5 4500 Uを搭載する

その他、処理能力に影響するシステム構成を見ていくと、システムメモリはLPDDR4x-4266MHzを採用するものの容量は8GBで増設はできない。なお、構成は4GB×2組み(メモリスロットを持たずオンボードのみ)でデュアルチャネルになる。ストレージは容量512GBのSSDで評価機材にはSKHynixのHFS512GD9TNG-L3A0Bを搭載していた。接続バスはNVM Express 1.3(PCI Express 3.0 x4)だ。

製品名 Yoga Slim 750
CPU Ryzen 5 4500U (6コア6スレッド、動作クロック2.3GHz/4GHz、L3キャッシュ容量8MB)
メモリ 8GB (LPDDR4x-4266)
ストレージ 512GB M.2 (PCIe 3.0 x4 NVMe) SSD (SKHynix HFS512GD9TNG-L3A0B)
光学ドライブ なし
グラフィックス Radeon Graphics (CPU統合)
ディスプレイ 14型 (1.920×1.080ドット) 非光沢
ネットワーク IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax対応無線LAN、Bluetooth 5
サイズ/重量 W320.6×D208.2×H15.1mm / 約1.36kg
OS Windows 10 Home 64bit

スリムなYogaの性能は? ベンチマークテスト

Ryzen 5 4500Uを搭載したYoga Slim 750の処理能力を検証するため、ベンチマークテストのPCMark 10、CINEBENCH R20、CrystalDiskMark 7.0.0 x64、ファイナルファンタジー XIV:漆黒のヴィランズを実施した。なお、比較対象としてCPUにCore i7-1065G7(4コア8スレッド対応、動作クロック1.3GHz/最大3.9GHz、スマートキャッシュ8MB、統合グラフィックスコア Iris Plus Graphics)を搭載し、システムメモリがLPDDR4X-4226の16GB、ストレージがSSD 512GB(PCI Express 3.0 x4接続)のノートPCで測定したスコアを併記する。

ベンチマークテスト Yoga Slim 750 比較対象ノートPC
PCMark 10 4426 4388
PCMark 10 Essential 8650 8862
PCMark 10 Productivity 5843 6852
PCMark 10 Digital Content Creation 4658 3776
CINEBENCH R20 CPU 1968 1376
CINEBENCH R20 CPU(single) 434 440
CrystalDiskMark 7.0.0 x64 Seq1M Q8T1 Read 3476.39 3535.81
CrystalDiskMark 7.0.0 x64 Seq1M Q8T1 Write 1870.13 3018.95
3DMark Night Raid 11375 5390
FFXIV:漆黒のヴィランズ(最高品質) 2487「普通」 2340「普通」

PCMark10において、CPU処理能力のウェイトが高いEssentialとProductivityのスコアはCore i7-1065G7搭載ノートPCに後れを取るが、グラフィックス処理のウェイトが高いDigital Content CreationのスコアはRyzen 5 4500Uを搭載するYoga Slim 750が大きく上回る。同様に、ゲームベンチマークテストの3DMark、ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズのスコアもYoga Slim 750が高いスコアを出している。ただし、ストレージの転送速度を評価するCrystalDiskMark 7.0.0 x64では、シーケンスリードではほぼ同等のスコアながら、ライティングでは低いスコアとなった。

なお、レノボ・ジャパンの公式データにおいてYoga Slim 750のバッテリー駆動時間はJEITA2.0の測定条件で約20.4時間となっている。内蔵するバッテリーは固定式の4セルリチウムイオンポリマーで、PCMark 10のSystem informationで検出したバッテリー容量は60700mAhだった。バッテリー駆動時間を評価するBBenchで測定(ディスプレイ輝度は10段階の下から6レベル、電源プランはパフォーマンス寄りのバランスにそれぞれ設定)したところ、スコアは15時間53分53秒となった。超私的な観測範囲に限った話だが、個人的にこれまで実施してきたBBench歴において、Yoga Slim 750のスコアは最長記録の1つといえる。

では熱と音は? 温度計と騒音計で測ってみる

冒頭で述べたように、Yoga Slim 750は厚さが15.1ミリの薄型ボディを採用している。処理能力の高いAMDのRyzenを搭載しているだけに発熱が気になるところだ。発熱への対策として、ボディ内部にはヒートシンクとクーラーを組み合わせた薄型ながら大振りなクーラーユニットを備えている。となると、そのクーラーファンの発する音量も気になる。電源プランをパフォーマンス優先に設定して3DMark NightRaidを実行し、CPU TESTの1分経過時において、Fキー、Jキー、パークレスト左側、パームレスト左側、底面のそれぞれを非接触タイプ温度計で測定した表面温度と、騒音計で測定した音圧の値は次のようになった。

表面温度(Fキー) 42.6度
表面温度(Jキー) 39.1度
表面温度(パームレスト左側) 33.3度
表面温度(パームレスト右側) 32.0度
表面温度(底面) 51.3度
発生音 44.7dBA(暗騒音37.8dBA)

ホームポジションになるFキーとJキーのトップが40度前後となったものの、パームレストは30度前半とキーボードと合わせて体感的には“それほど”熱くない。その代わり、底面は最高で50度を超えている。膝の上で長い時間使用すると、たとえ布地を通してでも危険なレベルだ。また、ファンが発する音量も大きい。静かな図書館やカフェなどでは、電源プランをバランスなどに設定してファンの回転数を抑えるのが無難だろう。

  • Yoga Slim 750の底面。スリットからクーラーユニットがのぞいているエリアが最も高温となった