2020年上半期は、何から何まで大きく変化した時期だった。特にデジタルガジェット関連では「リモートワーク」「オンライン○○」のキーワードとともに、多くの人が、会社の外でも仕事ができるデバイスとネットワークと周辺機器の必要性や使い勝手に関心を寄せるようになった。

そして、普段PCをそれほど使ってこなかった人、そして、PCにさほど興味を持っていなかった人の中には、「うわっ…… 私のPC、性能低すぎ?」と愕然としているケースも少なくない。そんな人々が今、いろいろな事情から「まとまったお金」を手にしたこのタイミングで、新しいPCを購入しようとしていると聞く。

そこで、この短期集中連載では、“もうすぐ手に入るまとまったお金”で購入できる税込み10万円前後のノートPCの中から、コストパフォーマンスが高く、それでいて、見目麗しく仕事で十分使える処理能力を持つノートPCを紹介していく。なお、「PCは会社支給か親のお譲りオンリーで、自分で選んで購入したことはない」という人のために、取り上げたPCのラインアップ的な“立ち位置”を解説する他、「まとまったお金に自腹を足して、もう少し高いPCも選択範囲に入れてみたい」という人のために、取り上げる製品の上位モデルについても紹介する。

「Yoga」だけどクラムシェルな薄型ノート

ベテランのノートPCユーザーたちから「IBMの時代からThinkPadと決まっています」と高い評価を得ているレノボのノートPCラインアップには、ThinkPadのエッセンスを取り入れながら、ThinkPadより購入しやすい価格帯のラインアップも存在する。中でも、Yogaシリーズ(ThinkPad Yogaシリーズではないことに注意)は地味ながらもコストパフォーマンスに優れたモデルが多い。というわけで、まずはレノボのノートPCラインアップの構成を見てみよう。

  • いま手に入る“まとまったお金”で買えるPC選 - ThinkPadだけじゃない、レノボの穴場ノート「Lenovo Yoga S740(14)」

    レノボのノートPCラインアップ。公式Web最後におけるYogaの序列はLenovoの下、IdeaPadの上としているが、パフォーマンスや価格帯を考えると、ThinkPadの下、ThinkBookの上という位置づけといえる

レノボのノートPCのハイエンドラインアップでビジネスのプロツールを標榜するThinkPad、ThinkPadを購入しやすい価格帯にチューニングしたThinkBook、価格競争力を重視したLenovoとIdeaPad、そして、処理能力を重視したゲーミングノートPC(Legionなど)といった他のラインアップと比べて、Yogaシリーズは、価格競争力だけでない、処理能力と機能、そして、コストパフォーマンスを重視したモデルをそろえる。価格帯でいうと、ThinkPadとThinkBookの間に収まる立ち位置だ。

そのYogaシリーズも、「マルチモードPC」「ウルトラスリムPC」に製品群が分かれる。マルチモードPCは、ディスプレイが360度開いてノートPCとしてもタブレットとしても使える2-in-1 PCのラインアップだ。ディスプレイを開く角度によって「テントモード」「スタンドモード」と、利用場面に合わせたスタイルにその姿を変えることができる。Yogaという名称を初めて採用したモデルが、このような“変形”機構を長らく訴求していたので、「Yogaといえば変形PC」というイメージが強い。しかし、ウルトラスリムPCに属するモデルは、クラムシェルスタイル限定の通常タイプノートPCだ。

レノボ・ジャパンのWebページに掲載されているラインアップでは、マルチモードPCに属するモデルの数が多い。しかし、その中で最新の第10世代Intel Coreプロセッサーを搭載するのは「Yoga C940」「Yoga C740(15)」「Yoga C740(14)」の3モデルだ。一方、ウルトラスリムPCに属するモデルで公式Webページにある4モデルは全て第10世代Coreプロセッサーを採用する。

この中で、税込み10万円以内で購入できるのが「C740(15)」「C740(14)」「S740(14)」の最廉価モデルだ。それぞれ主要なスペックは次の通りになる。

モデル名 Yoga C740(15) Yoga C740(14) Yoga S740(14)
価格(レノボ直販eクーポン適用後税込価格:6月1日時点) 8万3635円 8万665円 7万8650円
OS 64ビット版 Windows 10 Home
ディスプレイサイズ 15.6型 14型 14型
解像度 1920×1080ドット
CPU Core i5-10210U Core i5-1035G4
システムメモリ 8GB(DDR4-2666) 8GB(LPDDR4X-4226)
ストレージ SSD 256GB(PCI Express接続)
インタフェース USB 3.0(Type-A)×2、USB 3.0(Type-C、DC-in、映像出力)×1 USB 3.0(Type-A)×1、USB 3.0(Type-C、DC-in、映像出力)×2 Thunderbolt 3(USB PD対応、DisplayPort兼用)×1、USB 3.0(Type-A)×2
無線接続 Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0 Wi-Fi 5、Bluetooth 5.0
Webカメラ 720p 720p 720p
Officeアプリ なし なし なし
サイズ 357.8(幅)×235.35(奥行き)×16.02(厚さ)ミリ 321.8(幅)×214.6(奥行き)×14.9(厚さ)ミリ 322.4(幅)×212(奥行き)×14.9(厚さ)ミリ
重さ 約1.9キロ 約1.4キロ 約1.4キロ
バッテリー駆動時間(JEITA 2.0) 約17.8時間 約18.6時間 約23時間

なお、それぞれ、2万円弱のコストアップで「Microsoft Office Home & Business 2019」が付属し、3万円弱のコストアップでCPUがCore i7クラスに、システムメモリが16GBと強化される(S740では無線LANがWi-Fi 6対応になる)。

3モデルともCPUのグレード、システムメモリとストレージの容量と接続規格、内蔵Webカメラ、インタフェースなどなど、ほぼ共通する(細かく言うとCPUはC740が共にComet Lake、S740がIce Lakeになる)が、ここでは、本体サイズと重さがモバイル利用、据え置き利用共に実用的な範囲に収まり、CPUに統合するグラフィックスコアの処理能力がより高い“Ice Lake”CPUを採用し、かつ、公称値23時間という長時間バッテリー駆動が可能で、それでいて、価格控えめな「Yoga S740」をお勧めしたい。

  • 10万円前後で購入できるレノボのノートPCで、最もコストパフォーマンスに優れているのがYoga S740だ。ただ、その高いコスパが人気ゆえ、6月1日時点で品薄気味という

  • 本体搭載インタフェースは次の通り。1:電源コネクタ、2:USB 3.0(Type-A)、3:Thunderbolt3(USB Power Delivery対応、DisplayPort出力機能付き)、4:マイク/ヘッドホンコンボジャック、5:USB 3.0(Type-A)

CPUをCore i7-1065G7に、システムメモリ容量を16GBに、SSDの容量を512GBに強化した上位構成モデルも6月1日時点で有効なeクーポンを適用した税込価格は10万4720円で購入できる。ちなみに、この上位構成のCPUとシステムメモリの組み合わせは、ウルトラスリムPC製品群の最上位モデル「Yoga S940」と共通だ。ただし、ディスプレイ解像度は3840×2160ドット、本体搭載インタフェースはThunderbolt3×2、USB 3.0(Type-C)×1、無線LANがWi-Fi 6、SSDの容量が1TBとなる。この構成でYoga S940の価格は6月1日時点で有効なeクーポンを適用した税込価格で23万30円になる。ディスプレイの解像度が4KクラスでSSD容量が1TBのノートPCが必要なら、Yoga S940となるが、それぞれ、FHDの512GBで十分ならYoga S740の上位構成は大変「お買い得」なモデルとなるはずだ。

参考までにYoga S940で測定したベンチマークテストのスコアを以下に掲げておく。Yoga S740(14)の上位構成もほぼ同等のスコアになると思われる。

PCMark 10 4388
PCMark 10 Essential 8862
PCMark 10 Productivity 6852
PCMark 10 Digital Content Creation 3776
CINEBENCH R20 CPU 1376
CINEBENCH R20 CPU(single) 440
CrystalDiskMark 7.0.0 x64 Seq1M Q8T1 Read 3535.81
CrystalDiskMark 7.0.0 x64 Seq1M Q8T1 Write 3018.95
3DMark Night Raid 5390
FFXIV:漆黒のヴィランズ(最高品質) 2340「普通」
FFXIV:漆黒のヴィランズ(高品質ノートPC) 3029「やや快適」
  • いま品薄のYoga S740(14)に代わってレノボがプッシュしたいのが「Yoga S940(14)」だ。ボディのフォルムはYoga S740(14)と似ているが、ボディサイズは319.3(幅)×197.4(奥行き)×12.2(厚さ)ミリ、重さ約1.25キロとよりコンパクトかつ薄く軽くなった

  • 天板デザインはYogaシリーズ共通のサンドブラスト仕上げのアイアングレーを施し落ち着いた雰囲気としている

  • Yoga S740(14)との大きな違いの1つがディスプレイ解像度だ。Yoga S940は4Kに達する

  • キーボードレイアウトはYoga S740(14)と共通する。アイソレーションキーボードだが「BackSpace」「¥」キー、「Enter 」「」」(括弧閉じ)。「バックスラッシュ」「右Shift」キー、「上カーソル」「下カーソル」「無変換」「スペース」「変換」キーがそれぞれ1つの穴に分割して押し込まれている

  • キーピッチは約19ミリを確保し、ストロークは約1.2ミリを確保する。実際にタイプした感触は軽めで、ストロークはやや浅く感じる。バックライトを備えており暗所でのタイプも問題ない

  • Yoga S940とYoga S740 (14)上位構成のCPUとCPUに統合したグラフィックスコアは共通する。他にシステムメモリ容量とストレージ接続バス規格も共通なので、処理能力的にはほぼ同等レベルといえる